とある木曜日の会社帰り

ちょっと一杯と近所のなじみのショットバーに立ち寄ったら

入り口の前で西洋人中年男性が二人が、よくは聞こえないが
メニューを見ながら真剣な面持ちであれこれ言っている。

観光地でもなく、国際的なビジネス街でもなく

またまた駐在員諸氏が居住地に選ぶ町でもない

一見地味なこの町ではほとんど見かけないタイプの西洋人二人連れ
(語学学校の先生という雰囲気ではないしそれには少し年をとりすぎている...)。

なんてことを一瞬のうちに考えつつ、彼らの背中を押す意味で

『Hi!』と軽く笑顔を向けた。

そしたら、鋭い目を持つ口髭顔の一人が気難しそうな顔で

『Hi』と一言。

この乗りはアメリカ人じゃないな

言葉が通じる国の人たちだといいんだけど...

などとおせっかいなことを考えつつ、私は中に入った。

店内には常連のM川さんとフリーのカップルがいるだけ。
私はM川さんの隣に着席。

少し遅れて彼らも中に入って来た。そして一席おいて私の隣に着席。

しかめっ面風の二人に、店内にちょっとした緊張が走る。

バーテンダーのKちゃんはとりあえず日本語で

『何にしましょう?』と聞いてみた。

だが、日本語はできないらしい。
指差しと単語だけで、口髭の彼はビールを

もう一人のピエールといった雰囲気の彼は(こうとしか説明できない)

オレンジウォッカをオーダー。

口髭さんはビールが出されたと思ったら

洋酒の棚を物色し始めスコッチをストレートでオーダー。
ああ、ビールがチェイサーなのね。

ドイツ語が聞こえてきたので話題的にも、どうにかなるなと安心し

どこから来たのかと尋ねてみた。

見かけによらず、フレンドリーな
口髭さんは南西ドイツのカールスルーエ(だと思う)
ピエールはその近くのフランスのアルザス地方の町。
どちらもライン川近く。

ドイツはフランクより南部なら土地勘があるし

アルザス地方はスイス滞在中に近かったのでよく訪れた。

スイスとの国境近くの町、ミュルーズのカウフールには

車で日常品や食料の買出しに

コルマールやシュトラスブールには列車で観光に

(アルザスワイン最高!)
これなら話題を広げることができるな...

名前はかなり後で聞いたのだが

口髭さんはギュンター、もう一人はオーランド

(ピエールでなくて残念)。

ギュンターはドイツ語と英語を話し

オーランドはフランス語とドイツ語を話す。

オーランドのホームタウンであるアルザス地方は

交通の要所であるため、歴史の中でフランスとドイツの

領土獲得競争が繰り広げられ仏の領土になったり

独の領土になったりを繰り返したところだ。
どちらかというとドイツ文化の影響の方が強く

ドイツ語(アルザス語)を話す人が多い。

『最後の授業』という物語を思い出す。

ドイツ語がかなりあやしい私は

主にギュンターと会話し彼がオーランドに通訳

私がKちゃんに通訳するというスタイルで

異文化コミュニケーションが広がっていく。
そこに、かつてUSで商売をしていたM川さんが加わり

お酒が進むにつれ賑やかな夜になっていった。

次の疑問、どうして彼らがここにいるのか?

彼らはドイツの某有名自動車会社のエンジニアで

沿線上にある日本の自動車会社への出張で来ているとのこと。
そういえば彼らの会社はこの日本の自動車会社の株主だったっけ。

滞在先のホテルがバーに近かったのだ。
納得。

楽しく会話は進むが、時として、オーランドが置いてきぼりになる。

こうゆう日に限って、車大好きで詳しいT君や

フランス語が堪能なY君が来ない。

一杯のつもりが帰るに帰れない状況に。。。
まっ、楽しいからいいかと心を決めた。

                      続く...