根の国紀行
「太宰治の津軽と私の津軽」より
何年ぶりだろう
私にとって
津軽という土地は
なぜか
自分の内部にある重みをもって
存在し続ける土地だった
妙な話だが
私はこの七、八年の間
いつも津軽のことを
大事に思ってきた
九州の築後の生まれで
少年時代を植民地で過ごした
私にとって
津軽は全く縁もゆかりもない
他人の国にすぎない
私はこれまでにたった一度しか
その土地を訪れたことがなかったし
それも短い夏の数日を
ぼんやり送っただけなのだ
それにもかかわらず私にとって
津軽は他人の土地ではなかった
思うにそれはたった一度だけ
前に訪れた津軽の印象が
余りにも強く
私の内部に彫り込まれて
五木寛之さんの紀行文から
拾わせてもらった
長文で
精神的に
もっと奥の深い
内容なのだが
私が
津軽に行って感じた
不思議な感情を
五木さんが
代弁してくれている
そんな気にさせられた
このエッセイで
津軽の旅が
私にとって
より印象深いものになったことは
間違いない
偶然の出会い
とてもうれしい