薬剤師には処方を変更する権利は今のところ持ち合わせていない。よって処方の間違えは医師に確認、了承をとって変更しなくてはいけない。
そのことを薬剤師用語で「問い合わせ」というのだが。
その処方に対してクリティカルなものは言い易い。なぜなら医師に感謝されるからである。有害事象を未然に防ぐ事になり、医師としては「ナイスキャッチ!」といったところだろう。
問題は微妙な問い合わせである。医師は基本的には忙しい。外来だ、医師不足のところに外勤だと常に働いているそんな中に処方し終わったものというのは過去に終わった仕事である。それをまた掘り返して来るわけだから、ウザイ!と思われるのは確実である。内容も重箱の隅をつつくような内容ならなおさらだ。
問い合わせをして、医師に小言を言われたり、鼻で笑われたりする事は何万回もある。

薬剤師はウザがられてなんぼの職業なのだ

しかし、この世の中には疎まれ訳の職業というのは数多くある。そんなことは悲観するに値しないのである。
薬剤師とは医師も患者もチェックする職業である。間質のごとく、医療の隙間にこそ力を発揮する職業ではないかと思う。
調整役といえば聞こえはいいが、永遠の中間管理職とも言える。後者で考えると気が滅入るのでサッカーのポジションでいう”ボランチ(舵取り屋)”と考えるようにしよう。
Drのカンファレンスに参加していて、薬剤師として薬のアドバイスをしたいと思っているし、病棟薬剤師としてその役目も担っていると自負している。

そもそも”薬の知識”といっても大きく3つに分けられる
①病態に対してどの薬剤をチョイスするべきなのかという知識
この判断は薬の適応に係わってくる知識である。患者の病態を診断するところから始まるため、医師が診断しながらすでに頭の中で考えており、医師のルーチンワークであるため医師の判断の速さには適わない。
薬剤師としては医師が決定した後にそのチョイスでよかったかを確認することが主な仕事となる。
自分の分野は聞かれることはないし、判断を間違えることはまず無い。主に専門分野の周りの対症療法や
緩和、他科の診療の浅部である。

②服用、施用する時の知識。
これは副作用、用法、相互作用、薬物相互作用などが挙げられる。薬剤師としてはこの薬物が処方された後のフォローという作業は調剤時の処方箋チェックというところで慣れている作業である。が、ここでも専門分野の薬剤のフォローの速さはやはり速いし、特にミスもない。
やはり主に専門分野の周りの対症療法や緩和、他科の診療の浅部である。

③薬剤の管理にかかわる知識
ここでの知識つまり、薬の貯法だったり、流通の流れだったり吸湿性、遮光の必要性、そのような知識である。ここは薬剤師しか係わらないところではある。言うまでもないが、薬局は薬剤を払いだすところと同時に薬の保管庫なのである。

近年、薬剤師は病棟業務、薬剤管理指導等で治療というものに積極的に係わろうとしている。しかし、かつては薬剤師が係わらなくても医療は回っていた。薬局が無い診療科でも医療が出来るように薬剤師が居なくても医療は回るのである。つまり薬剤師は付加的な存在であると言えよう。したがって”治療”に係わる。処方設計に係わるというのは想像より厳しい。まずは信頼獲得から必要になってくるからだ。
信頼は急に得られるものではない。長年いい仕事をして初めて得られるものだ。信頼を得るには信頼を得ているものをバックに使うしかない。したがって薬剤師にはデータの出所。参考文献の信憑性が非常に重要である。
薬剤師は薬だけ知ってりゃいいという事ではない。医療は人に異物を与える行為なのである。事はそんなに単純ではない。仕事をやる上で知らないことは何でも知るべきである。みんなが一緒になって患者の最も最善な方法を考える。そんな考えている人の中で薬はちょっと詳しいですよというのが薬剤師でありたいと私は考えている。
ケイキサレートDS(ドライシロップ)が発売となった。
この薬剤は食事中のカリウムを吸着してカリウムを摂取しないようにする薬剤である。
カリウム制限がいる腎不全の患者さんや透析をされている方が適応となる。
類薬としてはアーガメイトゼリー、カリメート散(DS)が挙げられる。
この2者との違いはK吸着時に放出されるイオンの違いがある。アーガメイトゼリー、カリメートはCaイオンが放出されるのに対してケイキサレートはNaイオンが放出される。

この機序の違いが何を生むのか?

ふつうカリウム吸着剤は便秘の副作用があるのだが、このケイキサレートはNaを放出するために、Naイオンが塩類下剤のような働きをし、浸透圧により便に水分を含ませ、軟便化を引き起こす。

なんと、ケイキサレートの副作用は下痢なのだ。

このことは腎不全の患者さんや透析患者さんには吉報である。彼らの多くは便秘に悩まされる。
それは水分制限などの様々な理由による。
かつ、腎臓が悪い人では便の軟便化を促す緩下剤である酸化マグネシウムが使い辛い。
理由はマグネシウムを排泄できずに高マグネシウム血症を引き起こしてしまうからだ。

その中で軟便化を引き起こすケイキサレートはよい薬剤であると言える。
さらに、このたびDS(ドライシロップ)化に成功し、さらに少量の水で飲みやすくなったとのこと。

しかし、長期に服用しなくてはならない薬剤である。アーガメイトゼリー、カリメート、ケイキサレートの特徴をすべて患者さんに話した上で、患者さん自身がチョイスできることが大切であると考える。