「Kicks Man—スニーカー好きのスーパースター」

契約内容の詳細がわからないので、なんとも言えないが…
イチローが実質上の現役引退ということになった。
寂しい、残念という気持ちはもちろんあるが、彼が現役の時代に野球を見れて本当に良かったと思う。
大谷翔平のような新しいスターも生まれているが、イチローのような選手は二度と現れないだろう。
個人的にも取材、プライベートを通じて何度もプレーを生で見ることもできた。
野球ファンの一人として、墓場まで持っていける自慢の1つだ。

この仕事をはじめて随分時間が経つが、イチローのインタビューは一度もやったことがない。
というか、やらなかった、できなかった、避けてきた、というのが正しい。
いろいろなパイプから「イチローに会わせるよ」という有難いオファーをたくさんもらった。
でもその都度、お断りしてきた。
まあ、ビビって受けれなかったんだろうなぁ。
正直、何を聞いていいかわからない。
陳腐なことは失礼だと思うし、イチローが興味を持ってくれる質問をおこなう自信もなかった。
まぁ、プロのメディアのはしくれとしては、失格だろう。

だけど一度だけ、かなり長く野球と関係ない話で盛り上がったことがある。
それはイチローも好きなスニーカーの話。
僕も学生時代、スニーカー専門の古着屋でバイトしたほどの、「スニーカーおたく」。
アリゾナでのキャンプ中、練習後、イチローがクラブハウスの外を私服でブラブラしていた。
「最近、なんかジョーダン(=ナイキ製エアジョーダン)手に入れたんですか?」
とその場の軽いノリで聞いてみた。(今考えるとよく話しかけたと思うけど、それくらいキャンプ中ののんびりムードが漂っていた。
すると「最近、見る時間ないんですよ。何かいいものありますか?」と逆取材。
「記者さんはいつもニューバランスの992の色違い履いていますよね」と続けて質問。された。
スニーカー好きはみんなそうだが、他人の足元を必ずチェックする。イチローは記者の顔をチェックしていると聞いたことがあるが、足元も見ているのだろう。
「ランニング履くと、バッシュ履けなくなっちゃうんですよ」と答えると、そこからスニーカー談義が始まった。
過去のジョーダンシリーズの話など、本当に詳しく盛り上がったのを覚えている。
「また良いシューズあったら教えてください」ということで話は終わった。周囲の記者に驚かれるくらいの長時間(それでも5分ほどか)だったらしい。

この話の中で忘れられないことがある。
「ジーターだけじゃなく、イチローさんもジョーダンシリーズを野球で履いてくださいよ。もしくはエアイチローとか笑」
と聞くと、爆笑しながら、
「それいいですね。でも大人の事情もあって…笑 だからプライベートで履きますよ笑」
僕の中でのイチローのイメージはスニーカー大好きのスーパースター。
そんなイチローのプレーが、当たり前のようにそこにあった最高の技術が、見られなくなるのか…。