新年度になり
大道芸ワールドカップin静岡2019オン部門の募集も落ち着いたところで、ちゃんと記事を書いてみようと思います。
昨年度にあれこれ書いて少なからず渦中…とまでは行きませんが渦の縁くらいには居たので、責任を持ってちゃんと触れておく必要があるかなぁと。
昨年は外へ向けての文章だったのでしっかり添削をしたまとまった文章(?)でしたが、今回は個人のブログ記事として書きますので、文体や書き方が崩れている事には目をつぶって頂ければ幸いです。
※昨年度の記事はこちら
大道芸ワールドカップ2018 ノーギャラ問題に関する私見
大道芸ワールドカップin静岡応募について
■2019年について
まず、ご報告として
僕は大道芸ワールドカップin静岡2019オン部門、
並びにワールド部門へ応募致しました。
理由としては第一に大道芸W杯が確実に変わっていると感じること、
そしてやっぱり、憧れの舞台であり、大好きなお祭りだからです。
本当なら可否が分かった後に格好つけてご報告をしたいのですが、
こっそり出して実は落ちたのに「今年は見送りましたー」
というのは格好悪すぎるので、ちゃんと宣言して可否に関わらずきちんと結果をお伝えしようかと。
昨年応募を見送った時は苦渋の決断でしたが、今年度は明らかに新しい何かが進んでいるワクワクと、一年お休みしたことで「出場することが目的ではない」と心から思えたことで、結果がどうであれ受け入れられる様な心境になったのは意外な発見でした。
4年ほど前から連続してオン部門に出させてもらったことで、出場し続ける!来年も絶対に合格する!と
出場して何をやりたいかよりも、続けて出場するために何をするかという思考に囚われていたように思います。
もし今年落ちたら、単に僕より良いパフォーマーで枠が埋まったか、毎年出してる”普通じゃない応募動画”の出来がイマイチだったのだと受け入れられるかなぁと思います。
■昨年度からの変化
まず、昨年度(※ノーギャラ問題が起きたのは2月末だったので正確には2017年度ですが)からの現象面での変化として、
2018年度の応募が終わったあと、5月くらい?に長年プロデューサーを努めた甲賀さんが辞任されました。
それに続き、実行委員会の何人かが次いで辞任、解任されたと聞いております。
長年培ってきたノウハウや、2018年度の募集が締め切られていた以降の出来事でもあることから、運営システム自体や募集要項自体には大きな変化を起こせないこともあり
「大体例年通りだったよ~」(オン部門出演パフォーマーA談)
とのことです。
逆に言うと、プロデューサーや結構な数の実行委員会メンバーが抜けたにも関わらず「大体例年通りだった」のは凄いことなのですが、更に
「なんか凄く雰囲気良かった!」(オン部門出演パフォーマーB談)
のは、大変な状況にも関わらず残って踏ん張った方々や、困難を承知で新しく実行委員会に入った方々、本当に大道芸を想う静岡市民のみなさんが頑張って下さったからだと、僕は思います。
もちろん、変化の時期に悩みながらも出演して全力のショーを行ったパフォーマーさんたちも同じです。
僕は自分へのけじめとて身勝手に応募もせずに、大変な時期に何もしていなかったので今年度応募することは多少気が引けましたが、昨年1日だけ観客として参加させてもらい、受かったら出演者として、落ちたら観客として携わらせてもらいたいと思える変化を肌で感じました。
先程から変化や進化、変わったなどと書いておりますが、そのほとんどは僕の主観と感覚的なものです。
続いては、3月に発表された応募要項などを通して、ある程度客観的に、そして明文化されているものを元に明確な変化について触れてみたいと思います。
■応募要項
2019年アーティスト募集HP
2019年度オン部門募集要項
まず、最初に募集要項を見て感じたことは
「ヒエラルキーの撤廃」
これに限ります!
昨年までは
・ワールド部門
・オン部門
・フリンジ部門(旧オフ部門)
のわかりやすい階層制でした。
それぞれの解釈をガッツリ個人の視点で説明すると
・ワールド部門
世界から集められた一流のアーティストが賞を競う。募集形態をしつつ実際は基本的にスカウト。一人あたり百万以上の予算が組まれており、家族の滞在や観光などの厚生福利も運営持ち。
※日本人は出場不可。数年に一度のジャパンカップ優勝者はその年のワールドカップへ出場する枠がもらえる
・オン部門
日本各地や世界で活躍する第一線のパフォーマーや、各界チャンピオンやその年に話題のパフォーマーなど。応募審査制だが、過去出演者や各地フェスティバルの常連は実績が明確なため出場しやすい傾向がある。この理由から募集枠に対して実際に新人が入れる枠は限られている。
・フリンジ部門(旧オフ部門)
オン部門の定員の関係で入りきれなかったパフォーマーが落選後に再度応募する受け皿的な部門(オンの結果発表後に募集締め切り日が設定されていた)。オンに募集枠のなかったスタチューもこちら。本来の役割であるオンへの登竜門という機能もあるので経歴の少ない新人や、実力があっても新顔の場合はこちらに入りがちです。
数年前の改定から、出演料や交通費補助はいっさい無くなりました。
ちょっと意訳がすぎるところもありますが、噂も含めた個人的見解はこんな感じです。
ですが、実際に感じる範囲でもスタッフさんからの扱いや各種補助金、手当、宿泊場所や出演料など明らかな階層間の待遇差が存在していました。
そんな訳で、夜のお酒の席以外では本音が出づらいですが
旧フリンジ部門はオン部門に憧れと嫉妬を、
オン部門はワールド部門へ憧れと諦めとを抱えていたのが実状です。
それらヒエラルキーはパフォーマー間でも微妙な距離感を生んでいたので、今年度のシステム面としてのヒエラルキーの廃止は心から歓迎したい変化です。
やっとだ!
正直何年前からの課題だよ!遅すぎだよ!みんな仲良くしたいのに、お互いに妙に気を遣うフェスなんて静岡くらいだったよ!
予算の関係や、枠数の関係、伝統や、海外フェスの真似(オン部門、オフ部門、フリンジ部門という呼び名)
など理解はできますが納得できなかったこれらが廃止されたことだけでも、一つパフォーマー側の意見を取り入れて貰えるようになったのかな、と僕は思います。
■今年度
ヒエラルキーは廃止されましたが、今年度も部門自体は存在します。
・ワールド部門
・オン部門
・ニューカマー部門
・フリンジ部門
名称自体は同じものを流用してますが、意味合いは著しく違うと感じます。
分け方に名前をつけるならヒエラルキー制ではなく、シンプルに「カテゴリ分け」として各部門の本来の目的や、コンセプトを明確に表した募集要項になっています。
・ワールド部門 15組程度
コンペティション部門と明記。募集形態が応募形式で不明瞭だった出演金額なども明記。日本人も出演可能(オン部門と同時エントリー可能)
・オン部門 40組程度
募集審査に通ったアーティストが出演する部門。
今年度からスタチューなどもカテゴリ2に内包。
2017年39組 2018年37組 2019年40組と枠は微増。
・ニューカマー部門
過去にオン部門に出たことのない40歳までの新人部門。3回までしか出られない。本来のオン部門への登竜門的な位置付けが明確に
・フリンジ部門
演技時間、ジャンル、会場など制限を求めず希望者からの企画や提案を受けて自由に作っていく部門。まさにフリンジ=外縁部の装飾
※フリンジには単に周囲、周辺、極端論者などの意味合いもあるそうです
ワールド部門は言わずともがな、今までは「日本人を入れると、ワールド全体のクオリティーを下げてしまうと思うんですよ」とかいうまさかの理由で、自国開催にも関わらず国籍で排斥されていた日本人が、ワールドクラスの実力があると認められれば挑戦できるようになりました。
オン部門はすっぱり分かりやすく、募集審査に通ったパフォーマーが出れるという部門になりました。
枠自体は微増してますが、今年度からスタチューが内包されるので実際には枠数は同等と思われます。
昨年度まではオンか旧フリンジか迷うレベルの人がいても、フリンジへの再応募という形で救済措置がありましたが、今年からはそれが無いので審査側も、応募側もより真剣になるかと思います。
また、賛否両論あったスタチューの大幅増加や玉石混交な作品の乱立も、オン部門が実装された事で少ない枠を目指して競い合うようになるので相対的にレベルが上がったり、スタチューという文化全体の向上に繋がるきっかけになるかと思います。
ニューカマー部門は、今回の募集要項で一番物議を醸した変更点だと思います。
40歳を越えた新人パフォーマーの受け入れどころがない!という声も一部ありましたが、チームに40歳以下が一人でも居れば条件クリアという、分かりやすい妥協案も同時に提示されていますし、若造には真似できない人生経験をブーストにオン部門目指そうぜ!という感じなので僕は良いのではと思います。
むしろ、3年たったら応募できなくなる方の条件が厳しいのと、
年齢の影に隠れて見過ごされがちな「オン部門、ワールド部門への出場経験のある方は応募できません。」の方がよほどキツイ条件なので、
かつての「オン部門に落ちた人の受け皿」としての側面はすっぱり消え去り、
「これから新しく大道芸W杯を、大道芸界を作っていく仲間をピックアップする部門」
に新生したことは、何より前向きな大きな変化だと思っております。
繰り返しますが、旧フリンジ部門がニューカマー部門に切り替わった訳ではなく、新生された部門ということ。
オン部門からあぶれた人が出演料タダでもオンを目指して頑張っていた部門ではなく、新人を見守り、新人が活躍する部門ということです。
あと、交通費補助程度ではありますが出演料が出たことはとても大きいです。昨年度問題になった「タダより安い芸人」の称号を新人枠とはいえ得るものではありませんし、営業系パフォーマーも多少なりとも応募しやすくなるかと思います。
新フリンジ部門も言わずともがな、昨年度までのクロワッサンサーカスや、劇場特化のX-TRAP、ワールド部門の各種異形態な公演を内包した部門と思われます。
実は昨年度の「ノーギャラ問題説明会」には僕も参加させてもらってましたが、説明にあたった当時の実行委員会の説明の中で唯一明確に「今後これをやりたい」と受け取れた方向性が、クロワッサンサーカスのような既存の枠にとらわれない企画物の充実だったと記憶しております。
駿府城公園の木々の中に突如現れるサーカステントは、今までの大道芸W杯では味わえなかった、異世界に突然連れて行かれるような不思議な感覚になったことを覚えております。あれが増えて、静岡の街を染める様はぜひ見てみたい!まさにフリンジ=外縁部の装飾にふさわしい彩りある部門になったように感じます。
国内のサーカス系団体だけではなく、他のジャンル、海外からもたくさん募集があれば良いなぁとワクワクしています。
■今後の展開についての私見
全4部門のうち後半2つの熱量が明らかに多くなっているので、すでに半分説明をしている様なものですが、
ニューカマー部門と、新フリンジ部門
この2つが静岡の今後の方向性を考えるにあたって、とても明確な方針を打ち出してると僕は考えます。
まず、時々大道芸ファンの方たちから漏れ聞こえてくる
「大道芸フェスってどこに行っても大体顔ぶれ一緒だよねー。」
という感想ありきで語ります。
パフォーマーと自称する人は多いと思われますが、プロとしてフェスなどに定期的に出る人や選ばれる人は意外と限られています。
各フェスには必ずフェスティバルのデザインが決まっているため、プロデューサーや街の思惑に合致する人や、スポンサーからのデザインイメージ、ジャンル被りなど、誰でも彼でも出場させたら良い訳ではありません。
そのため枠数、予算に対して、新人や新顔をリスクを持ってフェスで育てることも出来ないので、すでに他のフェスで活躍している即戦力、もしくは個々に力を持った話題性のある演者に偏るのは当然かも知れません。
それに対して2019年度からの静岡は、かつての旧フリンジ部門に使用していた枠をそのまま流用することで、ノウハウを変えることなく、新人を育て、発表する機会を作り出すことができます。
各地のフェスティバルに他フェスのプロデューサーや、イベント代理店がわざわざ見に行くということはほとんどありませんが、静岡はすでに国内代理店はもとよりアジア近隣諸国や、欧米のプロモーターなどを誘致しての見本市的な役割を持っております。
静岡に行ったけども、オンも旧フリンジも他のフェスでも見る様な顔ぶればかり…という昨年までの曖昧な状態から、
新人発掘するなら静岡へ!という他のフェスではできない立ち位置が創られる事と思います。
また、新フリンジ部門の内容は、劇場や街のあちこちに広めの公園などの空間を持っている静岡でしかできない企画が多く集まることと思われます。
他フェスでは広い空間があっても、メイン出し物として1つくらいしか誘致できない様な企画物を、いくつも誘致できる。これは間違いなく静岡の強みです。ビルの壁面とか普通の街では使わせてくれないですから。
かつてはクレーン車のレンタルや警護に何百万とか、海外演者の大道具輸送費に何百万とか、ワールド部門にお金をかけて凄いことや、大きな事を行って他フェスとの差別化を図っていたかも知れませんが、フリンジ部門が浸透し、機能したら本当に多様性のある面白いフェスを適正なコストをかけて行えるんじゃないかと思います。
主に募集要項から感じた、僕の個人的感想は以上となります。
■今後について
正直、昨年度中にプロデューサーの甲賀さんが辞任することも、大道芸W杯in静岡2018が例年通り行われたことも、
今年これだけ応募要項や静岡の方針が変わったことも予想しておりませんでした。
変革にはキッカケが必要だとは思いますが、そのキッカケは昨年、説明会を求めたパフォーマーの結束でも、甲賀さんの辞任でもなく、
「すでに決まっていることは変わらない。動いても、声をあげても仕方ないんだ」と思っていた人たちが
「変われる、変えられる!」に気付いたことかなぁと思います。
変革には数年単位かかるだろうし、その間に多くの大道芸ファンの心も芸人の心も離れるだろうし、形を変えたように見えても問題が深く見えにくくなるだけかなぁ~と、僕も思ってました。
でも1年で変わりました。変われるんだと気付かされました。
僕は昨年、応募を見送る際のブログを
「願わくば、将来息子に対して出場することに胸を張れる大会であり続けることを」
と綴り〆めました。
どこまで変わったのかは分かりませんが、昨年二児の父となり、大切な二人の子どもたちに胸を張って出場できる大会だと、現時点では思います。
もし、僕のブログや昨年の騒動が原因で大道芸ワールドカップin静岡から心が離れてしまった方がおりましたら、是非一度新しくなった募集要項や、実行委員会の発する情報を追って頂ければ幸いです。
僕自身の出場が叶わなかったとしても、僕よりも楽しくて凄い事をする人たち(とニューカマーさんたち)が枠を埋めているので、しばらく変化の動向を見てご判断下さい。
これをもって昨年度、渦中…渦の縁で問題に携わった自分のけじめと、宣言とさせて頂きます。