野球ファンならその名を必ず聞いた事あるだろう「マネーボール」。MLBオークランド・アスレチックスのGMビリー・ビーンの球団運営戦略について書かれた本。全盛期のアスレチックスは、カンセコ&マグワイアの「クラッシュブラザーズ」を擁して強豪中の強豪チームであった。しかし、総年俸の高騰により球団の財政状況が悪化。結果的にチームは崩壊してしまい、低迷期に入る。そしてGMとして招聘されたのが元メジャーリーガーのビーン。そのビーンがいかにチームのコストパフォーマンスを上げ、安定した成績を残すチームを作り上げたかという部分は、野球だけではなく、会社経営にも通じる部分がある。読んだことの無い人は、一度手に取ってみることをオススメする。
この作品の中に登場する重要な項目が「セイバーメトリクス」。日本でも少しは知られた存在だと思う。簡単に言うと、選手の能力を全て数値化し、客観的視点でのみ各選手の能力を評価することである。野球オタクの缶詰工場警備員だったビル・ジェームズが夜勤の暇つぶしにメジャーリーガーの個人成績を分析して、その際に考えだされた手法。当時は1970年代なので、日本では巨人V9時代後半~ミスター引退の時代である。ジェームズは、現代マネージメントでよく叫ばれる「見える化」をいち早くスポーツの世界で実践していた。(スポーツ界と言っても、単なるオタクの仕業にすぎないが・・・)
このセイバーメトリクス法において、最も重要視されている項目は、打者の「出塁率」と「長打率」、投手の「与四球」「被本塁打」「奪三振」。打者の場合、出塁率と長打率を足したものを「OPS」と呼ぶ。投手の場合、現代野球では「WHIP」と呼ばれるものが重要視されている。WHIPとは、被安打数と与四球の合計を投球回数で割ったもの。つまり、1イニングに何人の走者を出すのかということを表す。NPBにおいては、公式記録として残る数字ではないが、MLBでは正式な公式記録として残るのが、この2つの数値である。
打者にとって、最も重要なのは出塁することということ。投手にとって重要なのは、打者のそれと真逆のいかに出塁を許さないかということ。バントや失策、盗塁といった項目は、試合への影響力がかなり制限されると定義されている。バントが少なくても、進塁打を打てば、バントしたことと同じであるが、数字上は凡打とカウントされる。失策も公式記録委員の主観が影響することと、選手の守備範囲の広さが影響する。守備範囲が広ければ、失策する確立も上がる為、選手の守備の上手い下手には関係ない項目だとされている。分かりやすい例で言えば、元ロッテの小坂である。
これらの基準を重視して、選手を評価し、チーム作りを行う。打者の場合、ホームランが少なくても、打率が低くても、選球眼良くコンスタントに出塁する選手は高い評価を受けることができる。この部分はなかなか表面上には分かりにくく、評価されにくいこともあり、セイバーメトリクスで高い評価される選手はコストパフォーマンスも総じて高い傾向にある。OSPが.800を超えると好選手とされ、.900を超えてくる選手は球界を代表する強打者と位置づけされる。
今シーズンの成績で言うと、このセイバーメトリクス上、好選手と評価されるのは以下の選手達(シーズン100打席以上)である。
巨人・・・小笠原、ラミレス、谷、坂本、阿部、亀井、李
中日・・・立浪、和田、森野、ブランコ、平田
ヤクルト・・・青木、ガイエル、デントナ
阪神・・・桜井、矢野、鳥谷、金本、浅井、ブラゼル
広島・・・フィリップス、天谷
横浜・・・内川、ジョンソン、村田、内藤
ハム・・・稲葉、糸井、スレッジ、金子
楽天・・・鉄平、憲史、リンデン、山崎武
ソフト・・・長谷川、松中、オーティズ、多村、松田
西武・・・中島、中村、GG佐藤、ボカチカ
ロッテ・・・井口、サブロー、塀内
オリックス・・・ローズ、カブレラ、坂口、ラロッカ、下山
やはり、上記メンバーの中でレギュラーポジションに多くの上位選手を揃える巨人は日本一という素晴らしい結果に終わりました。もちろん、投手力とのバランスもありますし、1、2番を打つ選手の「出塁率」との兼ね合いもあるので、この上記の結果がそのままチームの結果になるわけではありませんが、傾向は掴めると思います。貧打に泣いた広島は、2人だけ。更にフィリップスを戦力外にしています。ロッテも年間通じて出ていたのはサブローぐらいです。ソフトも長谷川だけで、それ以外の選手は途中加入が怪我で離脱した選手です。注意してみると、シーズンを通じてコンスタントにチームの1、2番を打っていたのは、巨人・坂本とハム・糸井だけですね。中軸に高OPSの選手を置くのは当然として、その中軸プラス「1、2番にも高OPS選手」を置くことができるかがチームの成績を作用するのかもしれません。
では、コストパフォーマンスの高かった選手(年俸1億円以下)を紹介しましょう。
巨人・坂本 OPS .823 年俸3400万円
巨人・亀井 OPS .864 年俸3000万円
中日・ブランコ OPS .880 年俸2760万円
中日・平田 OPS .831 年俸1600万円
ヤクルト・デントナ OPS .813 年俸4700万円
ヤクルト・ガイエル OPS .900 年俸4400万円
阪神・浅井 OPS .840 年俸2500万円
阪神・桜井 OPS .886 年俸2000万円
広島・天谷 OPS .800 年俸1800万円
横浜・内川 OPS .860 年俸8500万円
横浜・内藤 OPS .814 年俸800万円
ハム・糸井 OPS .901 年俸1800万円
楽天・鉄平 OPS .895 年俸5200万円
楽天・憲史 OPS .828 年俸2200万円
楽天・リンデン OPS .862 年俸4000万円
ソフト・長谷川 OPS .814 年俸1850万円
ソフト・オーティズ OPS .835 年俸5000万円
ソフト・松田 OPS .853 年俸4500万円
西武・GG佐藤 OPS .865 年俸6700万円
西武・中村 OPS 1.010 年俸7000万円
ロッテ・サブロー OPS .911 年俸1億円
ロッテ・塀内 OPS .837 年俸1220万円
オリックス・坂口 OPS .800 年俸3800万円
オリックス・下山 OPS .814 年俸4300万円
坂本、亀井、ブランコ、平田、ガイエル、浅井、桜井、内藤、糸井、リンデン、長谷川、おかわり君、塀内あたりは、かなりコストパフォーマンスが高かった選手ですね。この辺の選手は、来シーズンの躍進を期待したいと思います。特に、シーズン通じてスタメン起用の少なかった平田、浅井、桜井、内藤、塀内の5人は大躍進が期待できるのでは。。。
巨人は、高額年俸選手ばかりなのでコストパフォーマンスとしては非効率的かもしれません。親会社も好調な楽天なんかは、しっかりとコストを回収して、かなり成果をあげているようにみえますね。チーム初のクライマックス出場もしましたし。逆にロッテはかなり効率が悪い結果になってます。年俸1億超の西岡、今江、福浦が軒並み低迷。同じ1億もらっているサブローがリーグ屈指のOPS.911を残していることを考えると、寂しい限りです。ここらで日本一バブルからの脱却を図らないといけない時期ですね。そう言う意味では、脱ボビー体制がどうでるのか見物です。
長くなりましたので、次回に投手編をお送りします。
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