【 投手たちの“総量”面および“効率”面での貢献 】
投手たちのチームに対する貢献は何よりもまず第一に
“どれだけのアウトを積み重ねていくか”にあると言えます。
NPBに所属する1つのチームとしての視点で観ていきますと
1シーズンで144ゲームを消化していく必要があり
それはつまり、
時々8イニング~8 2/3イニング投げるだけで終了する敗戦ゲームがあり
また逆に同点で延長戦に入り9 1/3~12イニング投げる必要のあるゲームもありますが
大まかにいうならばチームは1シーズンの間にディフェンス面において
144ゲーム×9イニングで1,296イニング、おおよそ1,300イニングを消化する必要があり
もっと言うならばそれに3アウトをかけて3,888、
おおよそ3,900個のアウトを奪い積み重ねていく必要があるということになります。
こうなってくると、チームのディフェンス構成上において
まず第一に考えなくてはならない最優先事項は
もちろん投手陣だけでなく野手守備陣も含め、そのおおよそ3,900個のアウトを
誰がどのような手段でどれだけ記録していくか(負担していくか)であり
それを投手陣の構成、という視点に限定して観ていくならば
その投球によるものかそうでないかを問わずに
各投手たちがマウンドにいる間にどれだけのアウトを積み重ねていくか、
つまりは全体の約3,900個のアウト(1,300イニング)のうち
一体どの投手がどれだけの割合を負担してくれるかが
非常に重要な視点となってきます。
そして、それぞれの投手の残した“総量として”の、
チーム全体のイニング=アウト数に対する負担割合が
その投手たちの最大の“貢献”として最優先に評価されると共に
それに続いて、その中でどれだけ効率よく自責点を抑えるかができたかを示す
ERA(防御率)が投手たちの貢献度を示す指標として存在し
またその中でどれだけ効率よく投球数を抑えることができたか、
つまり疲労を減らし長年にわたり同じようなアウトへの貢献を期待することができるかをを示す
P/IP(1イニング=3アウトあたり平均投球数)という指標が存在するなど
“総量”に対する“効率”面での指標も
総量に対する評価の次に重要な評価指標として産まれ、そして常にチェックされていくこととなります。
もちろんゲーム終盤の緊迫した Leverage Index の高い局面で登板し
総量としては限られたイニング数=アウト数の中ではあっても非常に重要なしごとをこなす
クローザーを中心とした救援投手の貢献度は
また別個に高く評価されるべき面も非常に大きいのですが
それでもそれは前提として、そこまで曲がりなりにも
数多くのアウトを重ね、イニングをどんどんと消化してきた
先発投手陣を中心とした別の投手たちの大きな“総量としての”貢献があってこそであり
この総量に対する大きな貢献度が非常に高いからこそ
投手分業制が進み、そしてゲーム終盤のアウトの奪い方が
非常に重要視されている現代のbaseballにおいても
やはり先発ローテーションに残り、先発投手として数多くのアウトを取ることは
特にチームの投手構成上、非常に重要であり続けるといえます。
(※もちろん例えば先発投手陣の負担イニング割合が相対的に減り、逆に
ある特定のリリーフ投手個人の負担するアウト数の割合が同程度まで増えていくならば
その救援投手個人については登板ゲーム数なども評価指標に加えつつ
先発投手以上に高く評価する必要があると言えます)
【 ライオンズ投手陣のイニング=アウト負担割合 】
さて、それでは以下、2009年~2012年ここまでのライオンズ投手陣について
その全体に対する、各投手のイニング=アウトの負担割合を円グラフで観ていただきたいと思います。
※尚、2010年以降のデータについては私自身で記録し
蓄積してきたものをベースに加工したものですが
2009年のデータについては、これまでも何度か参照させていただきました
えるてんさんがプロ野球 ヌルデータ置き場にて集計なさったものを利用させていただきました。
この場を借りて心より御礼申し上げます。
![$Peanuts & Crackerjack-Innings Pitched 20120717](https://stat.ameba.jp/user_images/20120725/09/ballgame-lover/78/98/p/o0800023712097490673.png?caw=800)
Ⅰ. まずは涌井さんに改めて、最大限の評価と敬意を
まずはじゅうぶんに予想通り、といっていい点ではありますが
2011年までの3年間(そして恐らくその前の数年間も)、
そのパフォーマンスの如何に関わらず涌井さんの貢献度は
常にチームトップを記録して譲らない、抜群の安定感と素晴らしさを併せ持つ"workhorse"として
まさに"One and only Ace"の名にふさわしいものであったということ。
様々なパフォーマンス上の課題を抱え、もちろんまだまだ色々に改善点も多く
あれやこれやと批判されることも多い涌井さんですが
上述のようにこれだけの数多くのイニングを、長年にわたって
欠かすことなく安定し継続して消化し続けることができたことだけでも
最大限の高い評価と敬意とを受けるにふさわしい非常に立派なものといってよく
是非是非、現在の課題をみごとに克服し
今後、またその持てる素晴らしい能力をうまく、遺憾なく発揮しながら
やはり先発投手として更に素晴らしいパフォーマンスを魅せ続け
“総量”そして“効率”面でも長きにわたり安定して
チームに対し更に大きな貢献を残し続けていってほしいと思います。
Ⅱ. 帆足投手の貢献度と、今シーズンの分担について
そのチームトップの貢献度を誇る涌井さんに次いで
ここ3シーズンの間、安定して2位または3位のアウト数を奪い続け
チーム2位の貢献度を残し続けた帆足投手ですが
その帆足投手が昨シーズン終了後にホークスに移籍しましたから
今シーズンの投手陣構成において最も重要な懸案事項は
「帆足投手が担ってきた総量としての消化イニング数=奪アウト数を
2012年シーズンは誰が(もしくは誰と誰とが)負担していくのか?」
ここにあったことはここで改めて言うまでもなく明白で
おそらくシーズン当初のプランとしては牧田さんを先発投手に戻し
牧田さんに何とかその帆足投手の負担分=貢献分を担ってもらう、
そんな青写真があったことだろうと予測でき
また牧田さんはここまで、その期待にじゅうぶんに応え更には上回るまでの
素晴らしい貢献を残してくれているのですが
それに加え、パフォーマンス上の不振で涌井さんがクローザーに回ったことで
ここまで長きにわたり安定して15%近辺の素晴らしい貢献度を誇っていた涌井さんが
今シーズンはここまでの実績で観ても5%を負担するに留まっていることからも明らかなように
その涌井さんの負担分=貢献分を他の投手たちでどうやって分担していくかが
今シーズンここまでの、そしてもちろん今後これからの
大きなチーム投手陣構成上の課題となっています。
現状ここまでは牧田さん・岸さん・一久さん・西口さんの4投手が
それぞれ若干ずつその負担割合を増やしていくと共に
加えて野上さんが先発ローテーションの一角を担おうかという活躍を魅せ始めていき
全体の7%と、その貢献度合いを大きく増やしていき
その穴をなんとかかんとかカヴァーしていっていると言えますが
このオールスター・ブレイク前に大ヴェテランの一久さんや西口さん、
そして更にはまだ2年目、先発投手としてはルーキーと言っていい牧田さんが
疲労によりそのパフォーマンスをある程度低下させてきたように
この5人の投手たちだけで今シーズン今後もチームの負担割合の
大部分を担ってもらうことは非常に危険で、非現実的であるといってよく
やはり第二、第三の野上さんが台頭してくることが
今シーズンこれからのライオンズ投手陣に、ひいては
ディフェンスにおいて必要不可欠であるといえ
もちろんライオンズというチームの成績の浮沈のカギを握る
最重要課題のひとつとなってくるでしょう。
候補はある程度複数、水面上に頭をもたげ始めておりますから
あとは競争の中で誰が生き残り、そして素晴らしい活躍を魅せ続けてくれるか。
その厳しい競争の中での安定した、素晴らしい投球の数々を
ぜひぜひ楽しみに、追い続けていければと思います。
【 ライオンズ投手陣の投球数および対戦打者数 】
さて、続いてここで上と同じ円グラフを用いて
同じように2009年から2012年ここまでの各シーズンにおける
各投手の投球数および対戦打者数がそれぞれの全体に対して占める割合を
観ていただければと思います。
![Peanuts & Crackerjack-Pitches Thrown 20120717](https://stat.ameba.jp/user_images/20120725/09/ballgame-lover/75/d4/p/o0800024012097490675.png?caw=800)
![Peanuts & Crackerjack-Batters Faced 20120717](https://stat.ameba.jp/user_images/20120725/09/ballgame-lover/e9/66/p/o0800024012097490674.png?caw=800)
※尚、このグラフについても2010年以降のデータについては私自身で記録し
蓄積してきたものをベースに加工したものですが
2009年のデータについては、これまでも何度か参照させていただきました
えるてんさんがプロ野球 ヌルデータ置き場にて集計なさったものを利用させていただいております。
再度、この場を借りて心より御礼申し上げます。
2009年シーズンにおいて涌井さんが実に3,555球を費やし
総対戦打者数863、消化イニング数211 2/3で
P/IP(1イニングあたり平均投球数)16.8、また
P/PA(対戦打者一人あたり平均投球数)4.1の成績を残したことは
ライオンズファンの中では、いやそうでなくともある程度有名な記録ですが
上の2つの円グラフと、そして更に上に示した消化イニング数のグラフを
比較しながら観ていただければわかっていただける通り
全体的・包括的な大きな視点から観察するならば
消化イニング数・投球数・対戦打者数において多少のブレはあるものの
各選手ごとの占める割合はどれもほとんど同じ数値を記録していると言え
つまりはライオンズのチーム内でのP/IP、またP/PAといった効率を示す指標は
投球数、対戦打者数、消化イニング数といったベースの数値が大きくなっていくと
そこまで各投手ごとに特長やばらつきが見られるかといえば実はそうではなく
それでもライオンズ全体としてチーム総投球数が2009年の22,664球から
2010年の21,765球、2011年の20,798球へと変化しながら
それに呼応してP/IPも2009年の約17.3球から2010年の約17.0球、
そして2011年の約16.2球へと同じように変化し
その中で涌井さんも2009年の3,555球から2010年の3,307球、
そして2011年の2,860球へと球数を減らしながら
涌井さんのP/IPも2009年および2010年の約16.8球から2011年の約16.0球へと
もちろん統一球導入の影響も多分にあるでしょうが
こちらも同じように減らしていっていますから
“効率面”でみるならば何も涌井さん“だけ”が非常に効率が悪いから
2009年に3,500球以上の球数を費やすことになったわけではなく
現に、2009年の他の主要投手のP/IPの成績を観ていきますと
帆足投手が約16.1球に留まるものの岸さんが約17.2球を記録し
一久さんが約17.8球、西口さんに至っては約18.3球を記録するなど
実は涌井さんは常にチーム平均より優秀な“効率的”投球を
魅せ続けてくれていたことがわかります。
つまりはライオンズ投手陣をそれぞれ“効率面”で観た場合に、
それは各投手の能力や技術を反映した成績として評価されるべき点というよりは
もっと投手全体として、チームとして
効率化を進めていくべきであるということがわかります。
【 最後に、このエントリーを涌井さんに捧げます 】
・・・さて、様々に分析を重ねてきましたが
このエントリーはもちろん今シーズン今後のライオンズ投手陣について、
主要な2人の投手の残してきた大きな貢献度を誰と誰とが、そして
どれだけ負担するかといった問題意識・興味関心から、という一面と共に
残念ながら様々に批判され、時には身に覚えのない
まさにくだらない的外れの“非難”や“誹謗中傷”さえ受ける
私たちの素晴らしい "Franchise Player" である涌井さんを再度正当に評価し、
そして自信を失うことなく維持したまま復活への道を力強く歩み続け
近い将来、これまでよりも更に抜群のパフォーマンスを安定して魅せ続けながら
末長く素晴らしい成績を残しつつ活躍し続けてほしいという願いから書き起こした、という一面もありますから
是非是非、勝手ながらこのエントリーを私の愛してやまない、そして現在苦しんでいる
涌井さんに捧げるものとさせていただければ幸いです。
今後の更なる涌井さんの素晴らしい活躍を楽しみに、心待ちに
今シーズンの涌井さんの投球の数々を興味深く追い続けていければと思います。
【終わり】