攻撃面において、打者を評価する指標は数多く存在します。
そこで、まずここではその全体像をひときわ高い視点から俯瞰して観ていくと共に
それらの指標の示し分析する“範囲”はどこからどかまでかを、
そしてそれらの指標の関連性をわかりやすく観ていきたいと思います。
それでは、2012年ライオンズ攻撃陣がここまで残してきた
全2,920打席の内訳を示した図を例にとり観ていきましょう。
打席は大きく分けて8つに分類することができます。
上からBB(四球)、HBP(死球)、SO(三振)、HR(本塁打)、1B+2B+3B(単打、二塁打および三塁打)、
そしてbatted ball outs(いわゆる凡打)、ScF(犠飛)、ScB(犠打)で
その横の数字は今シーズンここまでのライオンズ攻撃陣が記録した数となります。
更に打者にとってそれが“成功”と呼べるものか、それとも“失敗”と呼べるものかという視点から
大まかにできるだけ多くの部分をそれぞれ青色、そして赤色で塗り分けると共に
どうしてもそのどちらにも分類しにくいものを緑色で塗り分けていきました。
※ batted ball(打球)の中にはHR・1B+2B+3B・batted ball outs・ScFの4つの部分が含まれ
そのうちBABIP(batting average balls in play)が着目し、切り取っているのは
batted ball(打球)のうちHR(本塁打)を除いたもの、つまり
結果として打球がフィールド内に到達した打席たちとなり
つまりその“成功率”がBABIPということになります。
こうやって見ると、まずは打率(AVG)と出塁率(OBP)のそれぞれの守備範囲と
その2つの間の関係性がよくわかります。
打率は打席の全8種類の部分のうち、SO・HR・1B+2B+3B・batted ball outsの
“わずかに”4種類(ここでは約87%)をカヴァーし、観ているだけに過ぎず
対して出塁率はScBを除いた計7種類の打席結果(ここでは約97%)を
カヴァーし、観ていくことができる指標であることから
打者たちが打席に立ち、攻撃していった結果が如何にして得点に結びついていくか、
そして各打者たちのそれぞれの打席の結果がどれだけ得点に貢献していくか、
この打席の結果と得点との関連性を観ていきながら
それぞれの切り口でそれぞれの“打席成功率”をはじき出そうとするならば
当然のことながら打席全体の10%以上を切り捨て無視する打率よりは
打席全体の97%とかなり100%に近い部分をカヴァーできる出塁率の方が
より理に適っているということになりますね。
さて、ここでは出塁率(OBP)のカヴァーする範囲について
それを(HBPを除く)BB・SO・HR・BABIPの4つの部分に大きく分け
ライオンズのそれぞれの打者たちごとにグラフで観ていきたいと思います。
それでは、早速ですがまずは2012年シーズンここまでのライオンズ打者たちの成績を
グラフで表したものを観ていただきたいと思います。
棒グラフで示したのはそれぞれの打者の2012年シーズンここまでの累積打席数です。
打者は左から、累積打席数の多い順に並べています。
そして実線の折れ線グラフはそれぞれの打者のここまで経験してきた打席数のうち
本塁打、四球そして三振がそれぞれ占める割合(パーセンテージ)を示し
更には黒の破線の折れ線グラフはBABIPを、つまり
BIP(打球のうちフェンスを超えずフィールド内に到達したもの)のうち
成功と判断できる結果(単打・二塁打・三塁打)となった割合(パーセンテージ)を示したものとなります。
上部の凡例の下にはライオンズ全体の打席数および
それぞれの指標のライオンズ全体の平均パーセンテージを示してあります。
そしてあれやこれやと分析を施していく前に
続いて、ライオンズ攻撃陣の2011年及び2010年の成績を
同じ種類のグラフでもって観ていただきたいと思います。
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まずは全体としてみますと、どんなに数多く四球を奪い優秀な四球率を残す打者であっても
その三振率を上回る四球率を記録することは非常に至難の業であることがわかります。
(※2012年シーズンここまでのパ・リーグ全体で観ても
四球数が三振数を上回っているのはファイターズ田中選手のみ、
それもやはりほとんど同数に留まる成績)
続いて個別の選手ごとにその残した成績を観ていきますと
① ここまでの3シーズン、常にチームトップの打席数を記録しながら
10%を超える四球率を安定して残し続け、さらには三振率も常に四球率と同程度にまとめ続け
その上で.350近いBABIPを継続して記録し続け
まさに“巧”なバット・コントロールで安打を量産し続けている巧さんは
打席成功率(出塁率)に特化し素晴らしい成績を残し続ける
ライオンズの至宝といっていい選手であると評価できますね。
② また今シーズン加入したエスティさんも
ここまで盗塁を20個以上奪っているその俊足ばかりに目がいきがちですが
実はここまでチーム3位の打席数を誇りつつ
巧さんと同じく10%を超える四球率を誇り、
また三振数とほぼ同じ四球数を奪うことに成功している
まさに非常に忍耐強く闘い続ける打者であるといってよく
BABIPは平均水準でそこまで突出して素晴らしい成績ではなく
そこまで巧打者であるとは言い難いものの
出塁率、そして得点への貢献度という視点から見れば
じゅうぶんに今シーズンのライオンズの攻撃をどっしりと支えるだけの
非常に優秀な成績を残していると高く評価できますね。
③ そしてナカジさんはこちらも巧さんと同じく
ここ3年間、非常に素晴らしいBABIPを残す“巧打”っぷりを魅せ続けていきながら
加えて本塁打率もチームトップクラスの成績を誇り
今シーズンは更に四球数を増やし三振数を減らし
巧さんとある程度同水準の成績へと近づけていくことに成功、
まさに打席成功率しかり、加えて長打面でも大きく魅せることのできる
素晴らしいオール・ラウンダーとして活躍していることがよくわかります。
④ 打者の特長、という面で観れば2010年は別として
三振・四球共に少ない中で同程度の三振数および四球数を記録しているのが大崎さんで
ここから、彼はおそらく初球から積極的に弾き返していきながら
高確率で安打にしていく“巧打”タイプに特化していっていると言え
今後彼の成績がどう変動していくか、非常に興味をひかれるところです。
⑤ また、銀仁朗さんに関しては捕手というポジション上
その打撃成績がどうであれチーム上位の打席数を記録していくのですから
最優先の改善策として、BABIPの改善-つまり巧打を可能とする技術-に置くのではなく
まずは如何にして三振数を減らしていきながら四球数を増やしていくかに
取り組んでいってほしいと思います。
⑥ 最後に、剛也さんはこのグラフを観るまでもなく
非常に高い三振数を喫していきながらも、そのリスクを覚悟し受け止めながら
非常に優秀な四球数、そして突出して素晴らしい本塁打数を誇る
まさに長打をその最大の魅力とする素晴らしい打者であることがよくわかります。
上で挙げた6選手以外にも、詳しく観ていけばそれぞれの打者ごとに
様々な特長と改善点とが浮き彫りになってくるのですが
今日は一旦ここでこの分析を終了したいと思います。
次回は同じ指標とグラフとを用いて
ライオンズ投手たちの残した成績を観ていければと思っています。