栗山選手の打席におけるアプローチに迫る | Peanuts & Crackerjack

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以前、今シーズン交流戦終了時点において
ナカジさんの打席における打撃アプローチを2010年シーズンと比較し

2011年、例年に比べ苦しい結果となっているナカジさんの打撃について
いったいその原因はどこにあるのか?アプローチに変化は見られるのか?を分析しました。

(参照:【苦しむ中島裕之選手、その原因を探る】

さて、今日は今シーズンも概ね素晴らしい結果を維持していると言っていいクリさんについて
その打撃におけるアプローチを同じくカウント別にわけながら詳細に見ていきたいと思います。

ピーナッツとクラッカージャック-kuriyama01

2008年から年度別に打率・出塁率・長打率の推移をグラフにて示しました。
(※破線で示しているのは、ここまでのクリさんのキャリア成績です)

ここから、クリさんの打撃の特徴が2008年~2009年シーズンと2010年~2011年シーズンで
大きく様変わりしたことが見て取れます。

2008年~2009年シーズンでは、打率が大きく変動してはいるものの
出塁率-打率(IsoD:Isolated Dicipline)、長打率-打率(IsoP:Isolated Power)共にほとんど変化がなく
出塁率・長打率共に打率と軌を同じくして変動しています。

それは2010年~2011年シーズンにおいても同じくことがいえます。
(※多少2011年シーズンでは長打率が減少しておりますが)

つまり、もともと出塁率に関しては優秀なクリさんですが
彼のキャリア成績平均と比較してもわかるように

2010年シーズンから更に長打率を多少犠牲にしても
そのぶん出塁率でチームの得点に貢献するスタイルへと舵を切っている、

こういうことが言えるかと思います。

それでは、打撃スタイルに最も関連性の深い“打席でのアプローチ”について
2010年シーズンのデータと2011年シーズンここまでのカウント別データを比較しつつ

その打撃スタイルにほんとうに変化はないのか、そして
その特長は何かを見ていきたいと思います。

ピーナッツとクラッカージャック-kuriyama02

まずは、クリさんがどのカウントで“投手との勝負の結果”を残したかを
全打席に占める割合で2010年、2011年ともにあらわしました。

これを見ると、大まかに言って上述の過去記事で示したナカジさんのスタイルと同じように

初球から積極的に勝負をしていくと共に、2ストライク後の勝負についても
おおよそ全打席の半数近くにも上るというスタイルであることが見て取れますね。

ただ、2011年シーズンについては
B0-S0やB1-S0、B0-S1といった2球目以内の早いカウントでの勝負が少なくなり、
そのぶん2ストライク、それも特にB3-S2に持ち込んでの勝負が多くなっているのが
見て取れますね。

要因としてはまず第一に、

犠打数が昨シーズンの18に対し今シーズンここまで5
(単純に×2して今シーズン犠打数予測10)と少なく
それが早いカウントでの勝負を減らしているということが挙げられます。

ここにはもちろんヤスさんの離脱によって、そして更には
過去記事【盗塁を仕掛ける“頻度”-2011、片岡易之-】にて指摘したとおり
ヤスさんの離脱以前にも

今シーズン、長い間クリさんの前の打順だったヤスさんの
盗塁頻度が減少していることが挙げられます。

(※クリさんの犠打は2010年、その打席において早いカウントでのヤスさんの二塁盗塁成功後
ヤスさんを三塁へと進塁させるためのものが10度と半数以上を占めていました)


第二に、こちらもヤスさんの不調、そして離脱に伴い
特に最近は1番を任されるなど更にランナーなしでの打席が増え

より出塁することに重きを置いた打席が更に増えているということが挙げられます。

では、次にカウント別OPSを2010年と2011年ここまでの成績で比較してみましょう。

ピーナッツとクラッカージャック-kuriyama03

ピーナッツとクラッカージャック-kuriyama04

注:B3-S0におけるOPSについてですが
  2010年シーズンは22打席20四球、1単打・1犠飛でOPS1.955に対し
  2011年シーズンは6打席6四球のためOPSが1以上にいかないため
  非常に大きな差があらわれていますが、本来数字ほどの得点貢献度の違いはありません。
  (このあたり、残念ながらOPS指標の限界といえる部分ですね)


ここであらわれているクリさんの特長は

①3ボール、特にB3-S2におけるOPSが高い、つまり
 自分の有利なカウントに持ちこんでゾーンで勝負させることで痛打を浴びせること、
 そして四球を奪うことでチームの得点に貢献していくアプローチであること

②2ストライクにおけるOPSが1ストライクまでのものと比べ
 追い込まれてからは極端にガクッと落ちるというほどでもなく
(※上述の過去記事におけるナカジさんのグラフと比較するとよりわかりやすいかと思います)
 2ストライクをとられてからの勝負においても苦手意識はないだろうことが推察されます。

以上2点に集約されるかと思います。

この結果はSMR BASEBALL LABにおいて岡田友輔氏が
エントリー【西武・栗山選手の一番起用は良い選択?】にて指摘された

クリさんのPFF(Pitcher Fatigue Factor)および
wOBA(weighted On Base Average)の優秀さを裏付けるものとなりました。

ということで、今日ここまでの分析をまとめるならば

クリさんの打席におけるアプローチは

①2010年以降、長打率よりも出塁率で得点に貢献するタイプへとますます進化している

②積極的に早いカウントで勝負していきつつも2ストライクと追い込まれても
 それを極端に苦手とせず 忍耐強くカウントを自分有利にもっていきつつ
 四球を奪い、そしてゾーンに来る甘い投球を痛打することを得意とする


こうなるかと思います。

これを踏まえれば、クリさんは長打を期待されない限り
リードオフしかり、ランナーを置いて盗塁を待ち進塁させることしかり
そしてランナーを得点圏においてそのランナーを生還させること然り、

打順を問わずに状況に応じて着実に得点に貢献できる選手であることがわかります。

ですから、クリさんをラインアップのどこにあてはめるのが正解か、という問いには

本来クリさん自身はどこに置かれても同じように得点に貢献できるのですから
他の打者たちがどうクリさんを活かすかにかかっていると答えることができそうです。

そして、それを延長していった先には
ラインアップの中にクリさんと同じような特長を持った選手を数多く起用することこそ
ライオンズ攻撃陣の更なる得点力アップを実現するための一番の正解だと言えそうです。

ライオンズの若い選手たちは、クリさんにおんぶにだっこということではなく
クリさんの打席におけるアプローチを身近にある素晴らしいお手本だと思い

どんどんと自分なりにアレンジしつつ取り入れながら
自分なりの得点に貢献できる打席でのアプローチをうまく確立していってほしいですね。