2011年、ナカジさんが苦しんでいます。
私は打率が上がったり下がったりすることに対しそこまでの重要性を見出せませんが
(もちろん、選手にとって打率は“腐っても鯛”の伝統的な評価指標であって
そこで好成績を残すことはもちろんひとつの大きな目標であり、実績となるものです)
上記グラフを見ていただければ一目瞭然の通り
打率の低下と共に出塁率・長打率ともに
今シーズンここまで2010年からどちらも打率とほぼ同じ角度で大きく下降しており
破線であらわしているナカジさんのキャリア成績をそれぞれ大きく下回っています。
つまりは四死球を奪うこと、そして長打を放つことに関して言えば
2010年シーズンと比べその割合、確率はあまり目立った変化を示していないという成績が残っており
ナカジさんの打撃スタイルに大きな変化があったわけではないにもかかわらず
チームの勝利への貢献と高い相関性を持つ、打撃の重要な指標OPSを
2011年シーズンここまでは大きく下げていることが推測されます。
そこで、打撃スタイルに最も関連性の深い“打席でのアプローチ”について
2010年シーズンのデータと2011年シーズンここまでのカウント別データを比較することで
本当にナカジさんの打撃スタイルに変化はないのか、
だとすればどこに原因があるのかを探っていきたいと思います。
まずは、ナカジさんがどのカウントで“投手との勝負の結果”を残したかを
全打席に占める割合で2010年、2011年ともにあらわしました。
これを見る限り、強いて言えば2011年は若干0ボール0ストライクで勝負の結果が残ることが増え
その一方で若干0ボール2ストライクでの勝負が減った程度、
他のカウントではほとんど全打席に占める割合は変わらないと言えますね。
つまりはナカジさんは今シーズンも2010年と変わらずに
初球から積極的に勝負をしていくと共に、2ストライク後の勝負についても
おおよそ全打席の半数近くにも上るというスタイルであることが見て取れますね。
では、次にカウント別OPSを2010年と2011年ここまでの成績で比較してみましょう。
ここではっきりとデータとしてあらわれているのは
最も激しくOPSを落としているのは2ボール1ストライク時での勝負であり
その下落幅はなんと1.000以上にもなるという危険なもの、
次いで3ボール0ストライク、0ボール1ストライク、0ボール0ストライク、
そして初球の0ボール0ストライクでそれぞれOPSをはっきりと落としていることがわかりますね。
つまりは今シーズン、2ボール2ストライクで2010年シーズンより好成績を残しているように
2ストライク後のアプローチ、そしてその成績に関してはそこまで大きな変化はないものの
(それでも全体として成績を下げていることは確かですが)
2ストライク前の勝負において2010年シーズンに比べ著しく成績を落としていると言えます。
2ストライク以前に勝負にいって結果が出る時は概して2ストライク以降の勝負に比べ
ナカジさんが“これはキッチリ捉えられる”と判断した投球を打っているということであり
2010年シーズンのナカジさんのデータを見ていただければわかるように
通常、打率にせよ出塁率・長打率・OPSにせよすべてにおいて圧倒的に素晴らしい成績が出るもの。
それが今シーズンここまで必ずしもそうではないという結果が出ており
特に打者有利とされる2ボール1ストライクで12打席のうち1単打のみという結果は
非常に心配なデータと言えるでしょう。
過去のシーズンと同じ感覚で“捉えた”と思った投球が今シーズン、
捉えることが急激に難しくなっている。
ここまでくれば、やはり原因は統一球ということに絞られてくるでしょう。
まとめるならば、
今シーズン、ナカジさんの打撃について
そのスタイル、アプローチ自体は過去のシーズンとの違いは見出せず
基本的にその部分については心配する要素はないということ、
統一球の導入に伴い、同じスタイル・アプローチであっても
これまでと同じような素晴らしい成績を残すことは難しくなっているということ。
今後はここまでナカジさんが長年かけて築き上げてきた素晴らしい打撃スタイル・アプローチを維持しつつ
いかにして統一球に対応していくかが成績向上のカギになりそうですね。
統一球に対応しようしようとし過ぎて
自分のスタイルやアプローチの根幹まで崩し、見失うことはもっとも避けるべきものですから
この統一球への対応は非常に繊細で、困難なものとなると思いますが
長年にわたり、非常に優秀な成績を継続して残し続けてきたナカジさんですから
必ずその経験の蓄積の中から様々なヒントを見出し、みごとに対応してくれるだろうと信じております。
今後、ナカジさんがいつ、どうやってその成績を向上させていくかを
楽しみに追っていきたいと思います。