“中継ぎ”は生え抜きを育成すべきものか | Peanuts & Crackerjack

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ここまで8勝12敗となかなか勝利を積み重ねていけないライオンズ。
問題はその1ゲーム1ゲームごとにそれぞれ異なるものですし

今のように勝利を思うように積み重ねていけないときには
通常であれば“今日は相手が素晴らしかっただけだ、明日あした”と忘れるところが
いや、あの1プレイがなければ、あれば悪かったのかなあ、など
どうしても“無い原因”をむりやりこじつけ、作り出してしまうという
完璧主義に陥って自分で自分の首をしめがちです。

実際、得点を挙げるのに四苦八苦していても、また完封や完投ができなくとも
だからといってチームとしてここまで勝てない理由にはならないもの。

ただ、近年のライオンズの“構造的な”といっていいほどの問題点である
僅差のゲームにおける中盤~終盤のディフェンス
(-投手分業制の広がる今、リリーフ・ピッチャーが主役であることが主ですが-)、

これについてはかなりの重症であることは明白な事実で
限られたリソースの中で首脳陣をはじめとしてライオンズの選手たちも
様々な試行錯誤をしながらもまさに一歩進めば三歩下がる、といった具合に

根本的な解決には歯がゆいほど時間がかかっており光が見えない状態は変わらない。

そこで、今日はその僅差のゲームにおける中盤~終盤のディフェンスという
ライオンズを長年悩ませ苦しませてきている大問題に正面から

順を追って私なりにメスを入れてみたいと思います。

【ライオンズの大方針であり強みは長期的視点での“育成”】

関東圏にはリーグが違えど大人気球団ジャイアンツがすぐそばにあり
また同リーグでも千葉にマリーンズがある中

ライオンズはいわゆる"small-market team"である、
つまりその“市場”は非常に狭いという現実があります。

FA等による選手の移籍が活発化してきた現在
移籍の権利を得た選手たちは更なる高評価を、そして異なる環境での挑戦を求め
続々とMLBへ、そして国内の"big-market team"へと移籍していきます。

そんな中でライオンズが変わらぬ大原則とすべきは
もちろん移籍の権利を有するまでの時間が長い若い選手たちを
“場”を、そして“責任”を与えつつ成功と失敗を繰り返しつつ長い時間をかけて

個人としてその着実なプレイでチームの勝利に大きく貢献でき、更には
その“圧倒的な”魅せるパフォーマンスで多くの観客を球場に呼ぶことのできる、

そんなチームの顔として、軸として育成していくことであり
現在のところ涌井さん、岸さん、帆足さん、中島さん、中村さん、栗山さん、片岡さん、
また続々と新しく魅力あふれる若手が台頭しつつあることなど

その方針はライオンズの魅力として一般的に認識されつつあるほど
うまく機能していると評価していいでしょう。

【僅差のゲームにおける中盤~終盤のディフェンスの現状】

さて、そんなライオンズですが逆に弱点といわれる
僅差のゲームにおける中盤~終盤のディフェンスに対して
どういった措置をとっているかというと

攻撃陣が、先発陣が、そしてクローザーがカバーするなど
対症療法がうまくいけばなんとかなるものの、

その負担が肉体的・精神的両面での疲労蓄積などの形で現れ
一時的な不振やケガなどによる戦線離脱をひきおこし
対症療法がうまくいかなくなると非常に苦しい戦いを強いられています。

そしてその一方で“中継ぎ”投手陣に対しては
やはり先発投手陣・そして攻撃陣の中軸に資源を優先的に割く必要があり
また評価の高い実績のあるリリーフ投手の補強獲得も非常に困難であることから

限られた手持ちの資源の中で忍耐強く時間をかけ
“ストライク・ゾーンの中で勝負する”という指導を徹底して行いながら
ここでも育成をしつつ整備していこうという意図が読み取れます。

この“ストライク・ゾーンの中で勝負する”という方針については
非常に興味深く、また素晴らしいものだと私は評価しておりますので
この方針についてはまた後日、ページを割いて考察したいと思いますが

ただ、その戦略に対する理解が追いつかないまま
選手たちがただ単純に“四球をだせば首脳陣にとんでもなく怒られる”程度の認識で

怒られるのが罰せられるのが怖いから、イヤだからと
打者の内角に速球を投げこんで“攻める、強い気持ち”をアピールしようと

優先順位をはきちがえ自分の投球に自信も見通しもないままとりあえず内角を突こうとして
死球を与えてみたり、その後打者の内角へ投げるものの腕が縮こまって甘めに入り痛打されたり、

またその“弱い犬ほどよく吠える”投手心理を相手打者にみごとに読まれ
僅差での中盤から終盤にかけてのランナーを得点圏に背負った非常に重要な場面で

早いカウントでの内角に来る速球を狙い打たれてしまうことも
現状よく散見されております。

【育成の基本は“競争原理の働く環境”を醸成すること】

ライオンズの現状として、チームの顔を、軸を育成することを優先するため
ブルペン陣に限られた貴重な資源を割くことが困難であることがあります。

そういった選手たちが集まってくるポジションでありながら
先発投手と違い、クローザーとしての位置をもぎ取らない限り

いつどんな時に、状況で登板するかもわからないまま
評価する指標もようやくホールドがでてきただけで
僅差のビハインドで投げるときなんか抑えても評価される指標もない、

またそれまでのゲーム展開がどうであるかに関わらず
中盤から終盤でのお互い集中力の最も高まる状況の中で
1点差であってもそのリードを失えば、また同点や僅差のビハインドであれば1点でも失点すれば
すべてがその投手の責任かのようにクローズ・アップされる、
そんな、まさに“割に合わない”厳しいポジションです。

だからこそゲームの終盤、若い先発投手が球数も100球を越え出した苦しい中
僅差のリードでランナーを背負って一打同点、逆転の厳しい場面で

ライオンズの首脳陣がその若い先発投手を敢えて引っ張り
その苦しい場面を任せ、自分で何とか乗り越えていけと責任を持たせることは

その投手を長期間にわたってチームの顔として活躍できる素晴らしい選手へと
育成していくためには決して避けては通れない道であり経験であり

だからこそ、ライオンズは敢えて時代錯誤的とも勘違いされるほど
“先発完投型”投手を頑なに理想としているのでしょう。

ただ、残念ながら先発投手がそのしごとをうまくこなせずに、また
球数が異常にかさみ、重要な局面で降板してしまうことは多々あります。

そんな、先発投手より包み隠さずに言えば一段劣る“ブルペン陣”で
勝利をいかにしてもぎとっていけるかこそ

首脳陣の手腕の見せどころであり、そして実は育成の基本だろうと私は思っております。

それは一言で言えば“競争原理の働く環境を醸成すること”

長期的にじっくり育成していく組織が陥りがちな最大の弱点が
いわゆる“終身雇用”的な、競争原理の働かない組織になってしまうこと。

首脳陣が自分たちがじっくり手塩にかけて育て上げたという成功体験にひっぱられすぎ
“新卒”と同じようなまっさらな、ドラフトで獲得した自前の資源を好み、傾倒し
自分たちのちからでもって自分色に育て上げようとし

その方針を自分なりに深く理解し自分のものとできずなかなか結果のでない、
そんな選手たちにいつまでもこだわり、ひいきをするとともに

その偏った愛情の裏返しでなぜおまえたちはわからないんだとばかりに
恐怖によっておさえつけ、押し付けや強制育成へと変わっていくと

それは渡辺監督が就任時に一番嫌った
“相手打者、相手投手に向かっていくのではなく首脳陣の顔を見ながら野球をする”
そんな選手たちを多く生み出してしまい、

気持ちで逃げるな、向かっていけと口を酸っぱくしているにもかかわらず
かえって自分たちがその一番嫌うことを助長する最大の原因となってしまうということ。

もう一度、基本にかえるならば“選手は、自らのちからでもって育っていくもの”だということ、
そして首脳陣ができることはその育っていく過程においてそれをうまく助けるような
“場”を、“環境”を提供すること、ただそれだけだということ。

【やりくり、血の入れ替え=更なる大胆なトレードを】

“ストライク・ゾーンで勝負を”というのは現状のライオンズ投手陣にとって
非常に適切な理想、大方針だと評価しています。

ただ、現状が理想とまだまだ大きくかけ離れている選手たちにとって、また
これまでストライク・ゾーンからボールになる球で勝負をすることに慣れてきた選手たちにとって

その意図を噛み砕き、深いところで理解し、自分の特長とあわせて適切に実行することは
非常に時間もかかるだろうし、混乱をもまねくものです。

そんなときに、それでも四球をだせばベンチからイライラのこもった怒号が飛んできて
逃げるな逃げるなと耳にタコができるまで言われ続ければどうなるか。

答えは前述したとおり至極カンタンで、かえって逆効果でしかありません。

では、首脳陣としてはどうするか。

選手たちが自分のちからで育っていくものだとして、
それをできるだけ短期間で結果に繋げることができるよう、促すには

現状、大胆な、冷血ともいわれることを覚悟の上での血の入れ替えをしつつ
先発投手をマウンドから降ろす決断をした後は左右病だの采配ミスだのとの批判を恐れず、
我慢せずにただデータに基づいた交代を繰り返しやりくりをしていくことが最適だと考えます。

ようやく今年のシーズン前にある意味ライオンズの“中継ぎ”投手の象徴的存在だった
大沼投手がトレードで移籍し、現在では新天地での競争の渦中にいるようですが

こういったトレードは更に更に、とくにライオンズだからこそ
トレードで獲得した選手に頼り、期待するという意味ではなく
むしろどちらかといえば競争原理を働かせるという意味で
率先して数多く実現していくべきではないでしょうか。

自分が結果を残せなくとも、チームの顔となるような実績を残せなくとも
結局はこの一番泥臭い場面は最後は自分に頼るしかないよね、という甘えが

選手本人は決してそんなことは思ってはいないと否定してみたところで
知らず知らずのうちにずぶずぶと身体の髄までしみこんでくるものです。

そしてそのどこか“終身雇用”的な甘えこそが
競争を忘れ、相手に対する“強い気持ち”を持てないままでいる最大の原因ではないでしょうか。

首脳陣がガミガミという“ストライク・ゾーンで勝負せよ”、“四球は出すな”、
これにしても競争原理の働く、本気で“尻に火のついた”環境の中であれば

選手から“言ってる意味がわからない”、“それで打たれたらどうしてくれるの”など
首脳陣に対し自分の野球人生を賭けて噛みついてきてあたりまえであって、

そうやって首脳陣の指導にハイハイと従っていればまあ何とかなるだろうという認識ではなく
自分で自分の野球人生はときに守り、ときに切り開いていかなくてはならないという姿勢こそが

相手打者や相手投手に対する“強い気持ち”の根源なのではないでしょうか。

ファイターズの真似をする必要は決してありませんが
同じく"small-market team"を目指しているチームとして

その大胆なトレードの手法は学ぶ余地が大いにあると思います。

資源を大きく割けない、一段劣る中継ぎ陣をどう整備していくか。

それは大胆なトレードと頻繁な細かい継投の中で競争原理を働かせ
生き残り這い上がってくる選手たちを忍耐強く待ちながらも
うまくその“待ち時間”を短縮していくことに尽きるのではないかと思います。

depth(層の厚さ)的に、非常に偏りのある現状のライオンズ。
もちろん、高山さんのような例も非常に稀にあるのですが
そんな稀有な例を期待して引っ張って引っ張って飼殺しにするのではなく、

むしろ彼らのためにこそ新天地での生き残り競争の中でなによりその甘えの意識を無くして
自分で自分の野球人生を作っていくんだという気概と自立心を高めてもらった方がよいでしょう。

今後の球団経営陣を含めた首脳陣の、更なる英断を期待しつつ
今日はこの辺で筆を置きたいと思います。