常識を超越する | Peanuts & Crackerjack

Peanuts & Crackerjack

Dedicated to the Saitama Seibu Lions organization and its players, baseball itself, and those who want to know what counts most in a given situation you are in and to make right decisions in a confident manner everytime. May the 'dose of luck' be with you!

$ピーナッツとクラッカージャック-BS20100417

2009年の日本シリーズ第2戦。
左腰等の故障でクライマックス・シリーズ登板もないまま
このゲームに先発登板したダルビッシュ投手は

(のちに判明することですが)右手人差し指の
疲労骨折も併発しているにもかかわらず

歩幅を狭めて上体だけで投げるような投球フォームと
ジャイアンツ打撃陣対策として即席に近い形で編み出した
岸さんのカーヴを参考にしたスローカーヴを武器に

6回を2失点で切り抜け、みごと白星を勝ちとりました。

ペナント・レースにおいても
本格的にエースとして稼働し始めた
2006年以降、勝利数は毎年2ケタで

2007年以降のここ3年は更に素晴らしく
勝利数は15以上、貯金も自分だけで2ケタを稼ぎ
防御率はすべて1点台後半で奪三振も150以上。

これだけ隙のなく完成度の高い、そして
様々な引き出しを持ってゲームの勝利をもたらす投手は
他には誰ひとりいないといっていいでしょう。

今日のゲームでは、そんなダルビッシュ投手の
引き出しの多さ、完成度の高さが遺憾なく発揮され

調子が悪く大量失点しても“魅せる”ことができ
チームを支え続ける姿に感嘆せずにはいられませんでした。

今日はライオンズの選手たちがどうこうというゲームではなく
まさにダルビッシュ投手の独り舞台、としか言いようがないもの。

打者一巡の集中打で5点をもぎ取った2回の攻撃は
本当に素晴らしいものでしたし

ミンチェさんも1球に泣いたものの
5回を自責点1なわけですから“素人の部”としてはじゅうぶん。

すべては常識を超越するダルビッシュ投手の投球に、
そしてダルビッシュ投手という圧倒的なエースを
チームを支える大黒柱としてすべてが設計された
ファイターズというチームの構成に

去年の日本シリーズのジャイアンツのように
あれよあれよという間にゲームを支配された、

そんなゲームだったと言えるでしょう。

つくづくファイターズというチームは
語弊を恐れずに極端にわかりやすく言ってしまえば
ダルビッシュ投手というひとりの圧倒的な“個人”と
多くの“その他のメンバー”という構成で

ダルビッシュ投手をまずは中心にガッチリ固定し
その大黒柱を活かすためにすべての戦略が立てられ
チームが構成されているのだということ。

ダルビッシュ投手の投げるゲームだけは
どんなことがあっても勝利へと導くことができるよう

クローザーを中心にリリーフ陣を優先的に整備する。

そしてその防御率の圧倒的な、そして安定した低さを前提に
四球を奪いにいく2ストライク・マネージメントや
どんなバッターであっても、1アウト後であっても、
そしてランナーが2塁にいても
徹底的に採られる犠牲バント戦術と
いわゆる“つなぎ”の意識の進塁打。

昨年はほんとうにそれがうまく“嵌まり”ましたが
すべてはダルビッシュ投手という大黒柱があってこそ
その戦略がうまく効果を発揮します。

ダルビッシュ投手の登板するゲームを
必ず勝つという安心感・信頼感をベースにして

他のゲームでもいわゆる“他のメンバー”で
なんとか勝ち負けを繰り返していけば

大きく負け越すことも大型連敗もなく
ペナント・レースでも低い順位に甘んじることはまずない。

今年のファイターズは
クローザーがここまで不安定な成績であり
更には野手陣も故障者が続出しており
かなりチーム成績が落ち込んではいますが

肝心のダルビッシュ投手が不安定にならない限り
必ず浮上してくることだけは間違いないでしょう。

今日のダルビッシュ投手は2回の大量失点の場面でも
決して過度に気負ったり焦ったりイライラすることもなく
マウンド上ではそんな状況をある種客観的に
楽しんでいるかのような表情を見せ続けていました。

これだけでも他の投手では到底到達できない
とてつもなく高い境地にいることがわかります。

ワクさんでも、杉内投手でも、そして大輔さんでも
打ちこまれる時には表情がこわばり、憔悴が見て取れ

それがどうしても味方守備陣に不安として伝染し
また相手攻撃陣の集中力を更に高めることになり

ひとりの個人ではどうも手に負えなくなって
マウンドを早期に降板せざるを得なくなるものです。

対してダルビッシュ投手は
ゲーム序盤に5点という大量失点を喫しても
ファイターズというチーム構成上早期降板はないという
それこそ絶対的な信頼を勝ち取っており

またダルビッシュ投手もその圧倒的な能力と努力で
ゲームの中で様々な引き出し、幅をすぐに披露し
平然ときっちり修正することができたりと
ほんとうにきっちりその信頼に応えてきます。

結果、ゲームが終わってみれば
被安打6、与四球5、失点・自責点ともに5でありながら
7回を投げ切って奪三振10でまとめ

チームの“他のメンバー”たちが
こんな時でも決して崩れないダルビッシュ投手に
寄せる“信頼”をベースにして安心して集中し

自分たちの持てる力をムリなく発揮し役割に十分専念し
きっちりもぎ取っていった得点で

幸運にもゲームをひっくり返すことができると共に
更に幸運なことにダルビッシュ投手に勝ち星までつきました。

こんなゲームができるということが
ファイターズというチームの底力なのでしょうね。

どんなに打ちこまれても、
制球がまったく思い通りにならなくとも

ダルビッシュ投手はマウンド上で
ゲームに“埋没し”溺れるということは決してなく

常に客観的に鳥の目視点で
ある意味もうひとりの自分が常にそばにいて

例え悪い結果となっても落ち込んだりすることなく
常にその勝負の瞬間と結果とを楽しみ

冷静に野手陣に指示を送り、キャッチャーの鶴岡選手と
打者をある意味うまく“無視”してどんどん会話し、
自分の意志をキッチリ伝え、時には指導さえしていく姿は

これこそ昨日わたしがワクさんになってほしいと述べた
“魅せる”エースの姿の完成形ではないかとおもいます。

もちろん、今シーズンは開幕戦でも5失点(自責点3)で
今回で2度目の大量失点となります。

チームもダルビッシュ投手以外のところで歯車が噛みあわず
最後の砦たるダルビッシュ投手にかなりの負担がかかり

その負担軽減のためかローテーションの順番を
シリーズのまん中に変更して必勝を期してきているようです。

ライオンズとしても2回で自責点5と
ダルビッシュ投手をじゅうぶん攻略し打ち込んでも

これでもマウンドから引きずり下ろすことはできないのか、
それどころか簡単に平然と次の回から修正してくるのかと

まるでどれだけ有効打を打たれても
決して倒れず向かって反撃してくるボクサーのように

“常識”を超越してきたダルビッシュ投手に
あれよあれよと今度はゲームを支配され
その投球に圧倒され飲み込まれてしまい

今日はある意味ダルビッシュ投手ひとりに負けを喫した
“寒い春の珍事”で終わってしまいましたが

重要なのはダルビッシュ投手、そして
ミンチェさんにとっては次の登板であり

ライオンズ・ファイターズにとっては明日のゲームです。

明日も楽しみに観戦させていただきたいと思います。



Never Mind !  にほんブログ村 野球ブログ 埼玉西武ライオンズへ