短期決戦と勝負強さ② | Peanuts & Crackerjack

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【ゴールを見据えた揺らぎない、シンプルで明確な戦略】


短期決戦はプロジェクト・マネジメントです。

人生のさまざまなシーンでもおなじですが
きちんとゴールを見定め設定し

そしてそれに到達するための
シンプルで明確な戦略を立案することが重要です。

事前にそれらの軸となる戦略を明確に確立し
共通意識として認識していれば

実際にプロジェクトが動き出した時の
戦術面での誤算はたいした混乱や傷にもならずに
すぐにまたゴールに向って動き出せるでしょう。

アドリブに強いひと、というのは実は
こういった軸となるゴールや戦略が自分の中で
揺るぎないものとして確立しているひとではないでしょうか。

それに対し結果を出せない典型的な例は

プロジェクトをきちっと日常業務とはべつものと認識せず
日常のルーティーン業務の延長とたかをくくってろくに準備もせず、

何とかなるだろうと過信し
何となくプロジェクトが開始したはいいものの

なかなかうまく結果が出ず途中であわてだし
場当たり的戦術をこねくりまわし二転三転させ
不信と大混乱を招くというものです。

今回の野球日本代表の首脳陣。

実績のある選手や今シーズン調子の良い選手さえ選べば
あとはシーズンどおり彼らが力を発揮してくれるだろう、
そんな彼らに“託したよ!”と丸投げしていれば
おのずから結果はついてくると思ってなかったでしょうか。

それが結果が出てこなくなると焦って戦術をこねくりまわし
一貫した軸や戦略のないまま
場当たり的な選手起用をしてなかったでしょうか。

始まってしまってから悪い結果に驚いて
あたふたと考えたところで後の祭り。

“下手の考え休むに似たり”のコトバ通り
打つ手打つ手裏目裏目後手後手。

そんなチームは最低限の力しか発揮できないのは当然です。

なんとかカナダ戦、
首脳陣の鬼のような形相での檄がとび辛勝し予選突破はしたものの
その後もずるずるひどいチーム状態のまま大事な決勝ラウンドで2連敗。

信じられないようなミス頻発するのは
選手たちが諦め気持ちを切らし
そのポテンシャルの半分の力も発揮できていない
れっきとした証拠です。

チームも委縮し、雰囲気も最低。

チームや組織とは特に短期的なスパンでみた場合
1+1が2にならないところが醍醐味だと思います。
1+1が1にしかならなかったり、3になったり。

3になるチームがチームとしての勝負強さだと思いますが

3になるためには

事前にチームとしてゴールを見据えた
シンプルで明確なそして揺るぐことのない戦略をたて

どんな場面に遭遇しても慌てることなく落ち込むことなく
その戦略にかえっていけることが必要ではないかと思います。


日本シリーズにおける野村監督の戦略
例に取ってみたいと思います。

日本シリーズのゴールは日本一になることです。
ここまではどんな監督でもわかっているあたりまえのゴールです。

さて、

●日本一になるためにはどうすればいいか?・・・4勝することです。
●4勝するためには?・・・1戦目は勝つことよりもデータを集めることを
上位の優先順位におくことです。
●データを集めるためには?・・・1戦目の先発ピッチャーに
球威で抑えるエースタイプよりも制球力の良いタイプを起用することです。

こんなふうに

戦前からきちっと戦略を立案し
それをシンプルな形にまとめて
明確にわかりやすく選手たちと共有すれば


たとえ初戦で大差をつけられて負けたとしても
次の試合にひきずるダメージはものすごく軽減されるはずです。

ふたたび野球日本代表。

予選ラウンド、2敗できるとはわかっていても
漫然とどの試合も勝ちにいこうと思っていなかったでしょうか。

こことここは絶対に勝ちにいく試合、
この試合は勝つことよりも決勝ラウンドを見据え
データを集めたり、相手に嫌な印象を与えたりすることのほうを
優先順位高く設定する試合。

こんな明確な戦略はあったでしょうか。

予選ラウンド、韓国戦。

自慢のトリプル・ストッパーの使い方の戦術
場当たり的であやふやだったことにみられるように

戦略が選手たちに共有されていないからこそ
追いつかれるともう負けムードが漂い始め
終盤逆転されるともう気持の糸が切れてとんでもないミスの連発。

わたしたち観客に対し
戦略をわかりやすいように示してくれというのではありません。

問題は、選手たちにもその戦略が共有されてないからこそ
彼らがめったに見せないようなミスを
頻発するのではないですか、ということです。


溺れかかっているような状況の中でも
今の自分たちから金メダルに向ってまだ
なんとか一本の道が伸びているのが見えていれば

気持ちが切れ体が諦めと委縮に支配されることは
まずなかったでしょう。

ひとの足を止めるのは「絶望」ではなく「諦観」である。

戦略があり諦めてさえいなければ

実際相手のクローザーも不調であり
その裏の攻撃で逆転しそれこそ
劇的な勝利を収める可能性もおおいにあったにも関わらず


自分たちでそれがイメージできず
その可能性さえ閉ざしてしまったことは
後悔してもしきれないでしょう。


わたしはここが日本代表のターニング・ポイントだったと思いますが

それは結果“相手に”負けたからではなく
試合の中で選手たちが勝利のイメージを描けず諦めてしまい
“己に”負けてしまったからです。


あとで気持ちが切れていない、諦めていないと
どんなに声高に虚勢を張ったところで
はっきりと行動がしめしてくれていますし

なによりほんとうは選手たち自身がいちばん痛くわかっているからこそ
その後ずるずると力の半分も発揮できず結果を出せないのです。

そしてどんな状況でも決して諦めないためには

○○の1つ覚えのように
気合いだ、気持ちだととりあえず連呼するのではなく

事前にシンプルではあるが明確な途切れることのない
ゴールへの道程(=勝利へのイメージ)を
チーム全員で共有すること。


勝っても負けても
そこにおける“戦術”や個人・チームの“技術”“資質”
神の業の如く持ち上げたり徹底的に批判したりするものを
イヤというほど頻繁に目にしますが

戦略なき戦術はどうあがいても場当たり的で結果を残せず

戦略に沿った戦術は
1つうまくいかなくともすぐに代替の戦術がうまく機能し
最後には出す戦術出す戦術うまくはまり
素晴らしい結果を残すものです。


ですから、単体の戦術として

川崎選手や西岡選手などの怪我の心配のある選手を選出したことや
調子のいまいち上がらない上原投手を選出したこと、
和田投手を継投させたこと、岩瀬選手を起用しつづけたこと、
そしてGGさんを起用しつづけたことなど、、、

どの戦術もそれ自身はひとつとして“間違い”ではないですし

個々の選手もその技術資質
それこそ十二分に素晴らしいものをもっており
またその技術や資質をできうる限り発揮してくれたと思います。

しかし、

たかが2ランHRをあびて同点になっただけにもかかわらず
和田投手の継投を星野監督自ら“自らのミス”と認め選手全員に謝罪したことは


その投球が試合のすべてを決定づけたように
監督自身が思い込んでしまっているということで

とりもなおさずそれは監督自身の意図するところではないにしろ
和田投手個人に責任を感じさせる負の効果があり

その雰囲気を敏感に感じ取った選手たちが
前にもまして安全に安全にと
残念ながら萎縮してしまう効果をもってしまったこと。

同じように
準決勝のGGさん(更には予選での村田さん、阿部さんなど)のミスに対し
“つまらん点を予選からやっていたから
そんな失点を防いでさえいれば”と反省することは


そのプレー(やその累積)が
その試合(やそして金メダルに届かなかったこと)の
大勢を決定づけたように監督自身が
思い込んで(悔しがって)しまっているということで

とりもなおさずそれは監督自身の意図するところではないにしろ
GGさん(そして村田さん、阿部さん)個々人に
責任を感じさせる負の効果があり

その雰囲気を敏感に感じ取った選手たちが
前にもまして安全に安全にと
残念ながら萎縮してしまう効果をもってしまったこと。

この2点のような些細な戦術些細な個人の技術や資質へと
試合全体の勝敗の原因を帰することや
また金メダルに届かなかった原因を帰することは

首脳陣をはじめとしたチームに
“トータルとして金メダルを獲得するにはどうすればいいか”
こういった戦略がなかったことを
明確に示してくれていると思うのです。

プロジェクトは事前の準備によって
結果が決まってくるといわれます。

勝負強いひとやチームは
事前に準備を怠らずシンプルで確固たる軸と戦略を持ち

どんな状況に置かれたとしても
(戦略としての)スタイルを貫くひと(チーム)である。


まずひとつめのポイントはこんなところではないかと思います。