獅子、再生の途上に② 大胆な改革 | Peanuts & Crackerjack

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さて、08年ここまでのライオンズ。

07年とラインアップ自体はまったく変わっていません。
だれもがおっしゃるように、むしろ
主砲である和田選手、カブレラ選手の移籍によって
攻撃力の低下が心配されたほどです。

では、何が変わったのか。

ひとことで言うならば
首脳陣の、そして球団トップの意識が変わった
これに尽きるのではないでしょうか。

今までのライオンズは良くも悪くも
堤義明帝国の独裁支配下におかれていました。

1978年、西武ライオンズの誕生とともに
その豊富な資金力と人脈をもとに
ジャイアンツに追いつき追い越し日本一の球団を
しゃにむに追及してきました。

スカウト陣を強化し、湯水のようにお金を使い
青田刈りや囲い込みなどの裏技を駆使し
みずからの帝王学に基づき、みずからの思い描く球団を
凄まじいスピードでつくりあげてきました。

その努力の結晶が森監督時代の“常勝西武”だったと思います。

・・・ほんとうに、輝かしい結果を残した時代でした。

しかしご存じのとおり、その時代には表面化しませんでしたが
その栄光の影にはさまざまな問題があったことも事実だったようです。

その功罪をひっくるめてその時代の特徴を簡単にまとめるならば

独裁者堤義明の方針に沿う者は
どんなことをしてでも獲得し管理し育てあげるが
方針に沿わないものは極端に冷遇し袂を分かつ


こうだったのかなあ、と今ふりかえると要約できるような気がします。

よく常勝ライオンズを支えたのは
すばらしいスカウト陣だといわれておりますが
それこそがもっともよくその特徴を証明してくれているように思います。

つまり

豊富な資金、人脈、そして
ルール違反スレスレの戦術を駆使し
(違反をしていたことも明らかになりました)
自分たちの方針に沿う人材を獲得してくる。

そしてその後はすばらしい環境の下で
これまた球団の方針に沿うコーチ陣が徹底的に管理し練習させ
もともと抜群の素質をもった若武者を完璧に育て上げる。

前章

「生え抜きの若い選手を育成することは
ライオンズに息づく素晴らしい伝統である」


こう述べましたが、

じつはまさにこの育成“方針”こそが今年
コペルニクス的転回を果たした点ではないかと思います。

帝国の崩壊とともに湯水のように資金をつぎ込むことはできなくなり
日本一の常勝球団は幻想となりました。

ライオンズ新オーナーに就任した後藤高志さんは
まずその現実をきちんと受け止め
埼玉県を中心とした地域密着型の球団経営へと
大きく舵をきりました。

西鉄ライオンズ時代の再評価も
堤帝国時代からの脱却を明確に表明するものだと
評価していいと思います。

そして渡辺監督。

今までのライオンズはすべて堤オーナーの方向を向いており
残念ながら常勝でなければ簡単にそっぽを向かれる
ファンにとっては魅力の薄い球団であることが
07年の観客動員数に明確にあらわれてしまいました。

ファンにとって魅力的なチームとは
どんなチームなのでしょうか?


渡辺監督は端的に
「ホームラン、盗塁、奪三振」
こうおっしゃっています。

それはつまり
失敗をおそれず積極的に
それぞれの選手が自分の長所を発揮すること
です。

育成方針としては、これまでの

“指導者の方針のとおり徹底的に管理し
そのノウハウを1から10まですべて教えたたきこむ”


から

“それぞれの選手がそれぞれの長所を十二分に発揮できるよう
さまざまな準備をし場を与え環境を醸成する”


180度転換したのではないでしょうか。

・失敗は決して責めず、積極的にチャレンジすることを奨励する・
・荒削りであってもチャンスを平等にじゅうぶんに与え
我慢と信頼の起用をする・
・コミニュケーションは責めたり矯正したりするものではなく
 さまざまな情報やデータを提供し相談をもちかけることで
 それぞれの選手に主体性を持たせ考えさせるものにする・

今までのように
そんなに試行錯誤し我慢せずとも
指導者のレールの上に載せさえすればその抜群の才能で
必ず活躍することが約束された選手ばかりを集めてくることは
不可能となりました。

さまざまな才能と短所をもった選手に
場を与え経験を積ませ、それぞれの長所を伸ばしていくには

首脳陣はいろいろな工夫を凝らし
失敗をひきずることなく明日の成功へと導いていけるよう
チームをいい状態に保つ必要があります。

さて、08年前半戦ではライオンズは
ほんとうに素晴らしい活躍をみせてくれました。

しかし、まだまだ再生の途中でしかないことは
忘れてはならない事実ではないかと思います。

次回、最終回として
ライオンズがこれからも長年にわたりファンに愛されるために
目指すべき地平について考察してみたいと思います。