パンドラの箱を開ける覚悟 | Peanuts & Crackerjack

Peanuts & Crackerjack

Dedicated to the Saitama Seibu Lions organization and its players, baseball itself, and those who want to know what counts most in a given situation you are in and to make right decisions in a confident manner everytime. May the 'dose of luck' be with you!



7月27日の“あらたにす”のこの記事ですが
ボストンではかなりの問題になっているようです。

題名からして奮ってます。
“松坂大輔「米国のタブー」への挑戦”なんて、
まさにメディアがものごとをおおげさに誇張する典型。

早速ボストン・グローブが反応します。
"Just Dice-K being Dice-K ?"
"Manny being Manny"をもじったものだと思いますが
もちろん意味は否定的な、がっかりしたトーンのもの。
「・・・やっぱり大輔はただのワガママな
“助っ人ガイコクジン”にしかすぎないのか?」

こんなところでしょうか。

もともとの根っこにある問題は
今年の大輔さんの不振の原因は何か?という問題に対する
180度異なるともいっていいい見解の相違。
(※大輔さんのMLBでのスタッツはこちら

レッド・ソックス首脳陣はWBC、そしてその影響で
スプリング・トレーニングを満足に経ずに
いきなりシーズンに突入したことだといいます。

一方大輔さんはレッド・ソックスの投球数制限にあるといいます。

この議論は大輔さんと首脳陣との間で
大輔さんがレッド・ソックスに入団した当初から続くもの。

それが今シーズンの成績不振で一気にフラストレーションとして
一気に噴き出してしまったようです。

そんな大輔さんのフラストレーションが
ひょいっと口をついて出てきて、
そしてそれがある日本人メディアにコテコテに味付けをされて
大げさな記事になってしまった不幸です。

問題はすでに、根本の議論とはまったく違うところに。

確かにこの考えの違いはなかなか一筋縄ではいかない問題ですが
それでも首脳陣、大輔さん双方が時間をかけて議論し歩み寄り
両方ともフラストレーションを抱えつつ
少しずつよりよい方法を求め試行錯誤していこうというもの。

忘れてはいけないのは、首脳陣も大輔さんも
大輔さんが長くボストンで活躍することを願っている、という
この点に関しては一致しているということ。

ところが。

この記事の罪は“人種問題”なんていう大げさな問題をもってきて
大輔さんをまさにアメリカ合衆国における
“正当に評価されていない日本人”の救世主へと祭り上げるという
余計なスパイスをこれでもかとふりかけてしまったこと。

大輔さんにどこまで“人種問題”なんていう
パンドラの箱を開ける覚悟があったのかはわかりませんが
とにかくこの記事は大輔さんにとって
大きな痛手となってしまったことは間違いないようです。

意見の違いはとても大きくフラストレーションはたまるものの
それでもチームがWSで勝利するというひとつの目的のもと
議論を重ね少しずつ歩み寄っていこうというその地道なプロセスが
このひとつの記事で大きく崩れてしまったのはとても残念なことです。

NPBでは日本人選手以外のプレイヤーを
“助っ人”“ガイコクジン”と呼びます。

多少の例外はあるにせよ、彼らは完全な“アウトサイダー”です。
母国流の調整であろうが緩慢な守備だろうが
結果を出せば何の問題もないし、出さなければすぐに解雇。
根本にあるのは“無関心”。

一方大輔さんは6年という長期契約でボストンに来て、
首脳陣も自分たちの最高のノウハウを持って迎えています。

これは一見大輔さんの個性を、日本人のノウハウを
否定し無視してるかのようですがほんとうにそうでしょうか。

いえ、首脳陣が大輔さんをきちんと“コミュニティのメンバー”
認めているからこそ特別扱いはしないし、議論も重ねるのでしょう。

それなのに大輔さんがやっぱり自分はアウトサイダーだ、なんて
これまたよりによって“日本の”メディアにだけ打ち明けるなんて。

信頼関係を瓦解させるようなことに至ったことは
じゅうぶんこれから反省する必要があるでしょう。

もちろん、よりよい調整法や投球数についてはこれからも
遠慮なくどんどんと自分の意見を述べ議論していくべきでしょう。

なかなかうまくいかない時はフラストレーションがたまるものですが
だからといって余計なものまで巻き込んで
拙速に解決を図ろうとするのは
かえって自分の傷を大きくするだけです。

だいじょうぶ、だって今年うまくいかなかったからって
世界が終わるとか、そんな話ではないのだから。

大輔さんは文句なく素晴らしいピッチャーで、
頼りがいのある攻撃陣と救援陣がいて
レッド・ソックスは素晴らしいチームで
そして何より大輔さんには来シーズンがあるじゃあないですか。

なかなか投球が自分の思うようにうまくいかなくっても
これまでどおりチームのメンバーが、首脳陣が助けてくれますよ。

それと並行して粘り強く少しずつよりよい調整方法を
首脳陣とともに編み出していってください。

そして、ボストンでもライオンズのころと同じく
いつまでも愛される大輔さんでいてくださいね。