瑠璃はボーっとしている時が多い割に、練習熱心でクラスレッスンが終わった土曜日の午後から、日曜日は丸ごと自主練に充てている。妹の瑠衣と良いライバルで、しょっちゅう喧嘩している。お互い良いところがあるのに、先生がそれを指摘すると、絶対にお互いの良さを認めようとはしなかった。姉妹のいない凜はそんな二人の言い争いがちょっと羨ましかった。
ママと帰る夜の道、街灯が灯す明かりがポツポツあるだけで人はほとんど歩いていない。ベッドタウンのこの街は高齢化が進み、凜が住んでいる家の周辺はお年寄りが多い。だから、夜も静かでちょっと寂しい感じがする。あるのは整備された街並みに整然と立つ街灯と街路樹。それに、時折、虫の声が聞こえるようになってきた。
「月明かりがきれい。」凜は半月が輝く南西の夜空を見上げながら、そう思った。
先にママが口を開いた。
「7月のコンクールも予選と決勝があるけど、やれそう?」
「うん。やれそうっていうか、やるしかないし、やらなくちゃ!」
そう答えた凜は唐突に誰もいない広々とした橋の上でグランパドシャをしながらママの先の方で答えた。
「ねえ、ちょっと!そのジャンプ、体が前傾姿勢になってるんじゃない?!しかも、縦一直線に伸びてないし。開脚足りてないじゃない!」
「分かってるってば!だから、跳んでるの!」
「これから必死でやらないと、予選通らないよ。6年生だし。」
「…」ふくれ面でママを見てからひたすら跳び続けた。
それからの数か月、凜は基礎体力の向上と、軸の安定化を図るために腹筋や背筋に、以前にも増して力を意を注いだ。毎週日曜日は自習時間に充てた。その甲斐あって以前にも増してお腹が割れてアスリートのような体つきになってきた。脚にもアンデオールをする時に見える筋肉が見えてきて、レッスンでアンデオールも少しずつ入りやすくなってきた。
「凜ちゃん!ドゥバンの足の低さひどい!」バーレッスンでデベロッペをやっている時にナナ先生の声が響き渡った。
「だいぶ筋力ついて、後ろは上がるようになったけど、デベロッペで全くキープできてない!そして、ドゥバンの低さたるや、目も当てられない!あのね~、いつも言ってるけど、仙骨を感じて、そこに腸骨を集めるような意識で身体を動かして!」
先生は容赦なくバレエ以外の専門用語を言葉を並び立てるから、凜は理解するのに必死だったり、自分の不甲斐なさを自覚するしかなかった。先生は骸骨の模型を使って良くレッスンをしている。仙骨や腸骨を始め、背骨の名称、筋肉の名称をよく覚えてる。それで、出来るだけ意識しながら使うようにはしていたし、家での柔軟を欠かさずやってはいるけれど、時々混乱するし、頭で理解をしていても前側(ドゥバン)にだけはどうしてもうまく上がらなかった。
良かったらフォローお願いします![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()