舌口球<200回>プロ野球なんでも始め物語①
球界の「今」のことは、新聞、テレビ等の情報にまかせればいい。ということから、ボクはあえて「今」のことをいろいろここに記すつもりはない。だから前回まで「プロ球界たった1人の男」を紹介してきたわけだが、今回からは「プロ野球なんでも始め物語」を”連載”することにした。でも、こんな古臭い話はノーサンキューという方は、もちろん”ご退席”でけっこうです・・・。
プロ野球公式戦最初の試合
1936年、巨人、タイガース(阪神)、阪急(オリックス)、名古屋(中日)、金鯱、セネタース、大東京の7球団で日本のプロ野球はスタートした。が、その後、公式試合(あらゆる記録)の起点が問題視されていた。で、その結果が出たのは1972年3月11日のことだった。前年から検討されていたのだが、当時の大浜信泉コミッショナーが、
「記録の起点は1936年4月29日から甲子園球場で行われた”第1回日本職業野球リーグ戦”から」
と決断を下したのだ。
では歴史的な、その4月29日とは・・・。
当日は午前中から3試合行われ、その結果は――
①名古屋8-5大東京
②タイガース3-0金鯱
③セネタース9-2阪急
(巨人は米遠征で参加せず)
これでわかるとおり、プロ野球公式戦最初の試合は第1試合の名古屋-大東京である。
観衆は3000人
試合開始11時8分
試合時間は2時間12分
名古屋 030 030 200|8
大東京 100 100 201|5
勝ち投手=ハーバート・ノース
負け投手=近藤 久(完投)
名古屋の先発は牧野潔だったが、四球、犠打、安打でアッいう間に1点取られ降板。ここでマウンドに上がったのが身長180センチの右腕ノースだった。そして9安打10四球ながら最後まで投げきり、日本プロ野球公式戦最初の勝ち投手になったのだ。その彼をリードしたのも助っ人のバッキー・ハリス捕手だった。
さて、ノースが勝ち投手第1号なら負け投手のそれは、身長170センチの左腕・近藤だが、後にこう語っている。
「この試合で負けたんだけど、完投したのは覚えていますよ。第1球? そりゃあストレートですよ。ストライクだったかボールだったかは覚えていないが、トップバッターを三振に取っているから、ストライクだったと思う。ま、三振を取ったのも、死球を出したのもヒットを打たれたのも、完投して負け投手になったのも、みんな私が第1号か。プロ野球が始まったばかりのときだから、何をやっても初物になるんだが、巨人入りした川上(哲治)君に初ヒットを打たれたのも確かだ。どうも私はロクな第1号がないんだよ、ハハハハ」
それにしても、歴史的なプロ野球公式戦最初の勝ち投手がガイジンだったとは、アナタ知ってましたか?
ちなみに、この第1回日本職業野球リーグ戦は4月29日から7日間行われ、4勝1敗でセネタースが優勝。7日間合計の観衆は1万9164人だった。当時の野球人気は東京六大学、中等学校(高校)、そして都市対抗でプロ野球は注目されていなかったことがわかる。