今月に入ってからジャカルタで日本人女性が自宅で殺害された。
六十代で、すでにインドネシアで暮らして四十年ほどという海外移住のベテランである。
二年前にはやはりジャカルタ近郊で日本人夫婦が殺害された。やはり長年インドネシアで暮らしていた年配の夫婦である。
こういう事件が起こるとリタイア後は海外で、しかも東南アジアで・・・と考えていらっしゃる人にとっては不安になるのは当然である。
やはり東南アジアは治安に問題があるのでは・・・、物騒なのは厭だ・・・と。
ところが、これらの事件はいわゆる治安が悪くて起きた事件ではない。
二年前の事件では、警備員として雇っていた男を解雇し、その男が金を無心に来たのを断ったので逆恨みからの犯行だし、今回の年配の女性の場合は自宅の改装工事にきた男の仕事ぶりをなじったために逆恨みで殺されてしまったようだ。
恐らくどちらも殺害されてしまった年配の日本人の方達の言ったことは正しいことを言ったに違いない。なのに逆恨みされた。
なら逆恨みした方が悪いと思うだろうが、一概にそうとは言えない。
日本的な感覚、常識でいえばそうだろうが、ここはインドネシア。考え方、仕事の仕方などすべてが日本とは大きく違う。その癖プライドは高い。つまり、日本的な感覚では、単に断わったり、間違えを正したり、注意した程度に感じていることでもこちらの人にとっては屈辱的に扱われたと短絡的に思うのが普通である。
この因業ジジイもバリ島に住んで13年になるが、今までに肉切り包丁で迫られたこともあるので、最近では幼稚園児に話すが如くある男を注意したところ、男は激昂して叫んだ。
「ここはバリだ! そして俺はバリ人だ! お前は日本人だろ! 厭ならさっさと出て行け!」
身の危険を感じて引きさがった。
その後、考えるに、この男の言ったことは正しい・・・と判った。
理屈とか道理とか常識など日本の感覚でもってこちらで接すると、いくら正論であっても激昂したり、傷つき、逆恨みに及ぶ。
なら、やっぱり東南アジアなどへの海外移住は無理と思う人は、辞めればいい。要は足し算、引き算の問題である。
冷静に、日本と移住を考えている先の国とを、ここはいい、ここは悪いと、ひとつひとつ吟味したうえで、それでも日本に暮らすよりいいところが沢山あると思えば移住。逆にマイナスであればはなから移住など考えない方がいい。
