楽器店に着き、それぞれ思い思いの楽器を眺める。
「おお…予想はしてたが、やっぱ高ぇな…」
そこにある値札は安く平均して5~6万、ものによっては25万の最大金額を越す機材まである。
「ううん…どれがいいのかわからん」
「お客様、どのようなものをお探しでしょうか?」
店内の慣れない空気に戸惑う3人に気付いたのか、1人の若そうな女性が声をかけてくる。
「私はギターを探してるんですが、初心者なのでどれがいいかわからなくて…」
「オレもギターなんですけど…(以下同文」
「俺はベースをやってみたいんですが…(以下同文」
「…もしかして、バンド初心者の方々ですか?」
「「「はい」」」
それは戸惑うわけだ、と言わんばかりの表情で店員がこちらを見る。
こちらも事前調査(ギターの種類とか、どんなものが必要なのか)をして来なかったのは悪いが、どうもやりづらい。
「それならば、こちらのセットなどいかがでしょうか?」
そう言うと店員は陸人たちの後ろを指し、そこに貼られていた【初心者バンド歓迎!】の内容を説明し始めた。
「こちらのセットならば、バンドを始めるにあたって最低限必要な機材はそろえることができます。お値段もお安くなりますが、少しばかり全体的な性能は高級品に比べて劣ってしまいます」
「へえ…いいんじゃないか?俺らみたいな初心者には」
「そうね…でも、楽器本体の機種やカラーは選べないのかしら」
「そんなことございませんよ。機種はあちらのコーナーにあるものからお1つお選びいただくことができます。ただし本体以外の機材はこちらでご用意させていただきますので、ご了承ください」
「そうか…どうせ資金も限界があるんだし、とりあえずはこれでいいんじゃないか?」
「まあ、とりあえず弾けるとこまでいかないとだしね。千種もこれでいい?」
「おう、俺はいいぞ」
そう言うと店員は注文のメニューを取り、先ほど説明したコーナーに案内する。
「ご注文ありがとうございます。それでは、ご用意させていただきますので、こちらから機種をお選び下さい。お決まりになりましたら、レジカウンターまでお越しください」
「ありがとうございますー」
「なお、機種についてご質問などございましたら、お手数ですがこちらもレジまでお越しいただけますでしょうか」
「あ、大丈夫です。本当もうしわけないです」
「いえ、大丈夫ですよ!それでは失礼いたします」
店員はそのまま楽器店の裏手に入っていってしまった。
「…丁寧な接客だったな…」
「ほら陸人、さっさと決めてカラオケに行くわよ」
「そうだぞ、時間ないんだからな」
高校生である3人は年齢制限もかかり、カラオケなどの娯楽施設に9時までしか滞在できないのだ。
どうせカラオケに行くなら長く居たいと思うのは作者だけだろうか。
「おう、そうだな。じゃあ好きなのを探すか」
-15分後-
「いやー高かった…」
「総計で6万て…でもまあ楽器にしては安かったんじゃない?」
「そうだな、得したと思ってがんばろーぜ」
それぞれ重たい楽器を抱えて歩く。(何の機種を買ったかは別記事「彼らの購入品」記載)
ベースの千種だけは一回りケースが大きく、慣れていないのでそこらへんにガンガンぶつけている。
そうこうしているうちにカラオケに到着。
「よし…先頭オレからいっていいか?」
「どうぞー」
「アタシも曲決めなきゃ」
「じゃあ、お言葉に甘えて…GRooooNの【恋唄】!」
静かだが雰囲気のあるイントロが流れ、陸人がマイクを取る。
「この恋の唄ぁー!!♪」
そして歌い終えた陸人の点数は…82点。
「んー…まあこの採点にしては普通くらいか」
「声出しもなく急によく歌えるな…じゃあ次、俺いくわ」
そう言うと千種が曲を入れる。
「あ!ちょっと!アタシラストとかやめてよ!」
「ふふふ、この場合、入れたもの勝ちなのだ…オオブクロで、【つ○み】!」
「酷いわね…じゃあアタシ飲み物とりにいくから」
千種の曲のイントロが流れ始めると同時に、藍羅は部屋を出て行く。
余談だが、千種がこの2人と共にカラオケに来るのは初めてである。
「【自主規制】」
「ひぎいいいいいいいい!!!?」
あまりの熱傷に陸人が泡を吹く。
「~!!♪…あれ?どうした?」
千種が歌い終わる頃には、陸人は陸に打ち上げられた魚のように、床で痙攣を起こしていた。
「ははん!さては俺のあまりの歌の上手さに体がついてこなかったか!」
はっはっはと笑う千種をよそに、画面に点数が表示される。
それと同時に藍羅が帰ってくる。
「ただいまー…ここのドリンクコーナーわかりづらいところにあるのね…」
「(あ、悪運の強い女だ…!)」
何も知らないということがどれほど幸せか、改めて思い知った陸人であった。
それでも、低いと思っていた千種の点数は意外にも80点だった。
「マジかよ!陸人と2点差か…悔しいな…」
「(…2点の差でこれだけ…!?)」
「なんかみんな似たり寄ったりな点数なのねー…次はアタシね」
そう言うと藍羅は予約機に手を伸ばす。
「…みんながそれなら、アタシは――」