「さて…まず今の我がバンドに足りぬものをあげよ!」
夏フェスがあった土日からしばらくしての放課後。
その場を仕切っているのは陸人だった。
「はい!」
「おう、千種」
「楽器」
「まあ、間違いじゃないがそれは今日買いにいくって言ったろ?次!」
「はい!」
千種に続いて藍羅が挙手をする。
「夢と希望」
「他っ!」
しかし、ここから先は先ほどとはうって変わって静かになる。
「…お前ら…この間ドラムのやつが足りないって言ったろ…」
「ああ、そういえばそうね」
「でも、それはどうしようもないから募集って話だったじゃんか」
「それがな、1年生にとんでもなくドラムが上手いやつがいるって話を聞いたからよ」
「なるほど…スカウトしようって言うわけね?」
「まあざっくり言うとそんな感じだ」
ドラムは募集と言う話だったが、どうやらここで了承をもらえばひとまずはおちつきそうだったので、みんなに報告しようと思ったとのことだった。
「…じゃあドラムは陸人に任せていいわね?」
「おう、任された」
「よし、じゃあそこは問題ないな…楽器なんだが、俺お金ないけどいいのか?」
ふと疑問に思う千種。
確かに、簡単に楽器を買うと言っても、陸人たちの本業は学生だ。
急に言われて買えるような資金は持ち合わせてはいないだろう。
「ふふふ…そこは心配するな!お前らに言われるがままに働き続けてきた1年次…貯めに貯めた所持金はなんと25万!」
「おお…何で使わなかったんだよ…」
「逆に驚きね…」
1年生の時から陸人は藍羅の誘い(命令)でアルバイトをし続けていたため、お金は腐るほどあるという。
自信満々の顔で25人の諭吉さんを持つ陸人。
「これで1人ずつセットを買っても余裕はあるだろう…余ったお金でボーカルを決めるカラオケに行こうぜ?」
「そうね、陸人がいいならそうしましょ。千種は時間大丈夫?」
「おう、俺は気にすることなんかないよ?」
満場一致で楽器購入、カラオケに行くことに決まる。
3人は並んで歩き、これから本格的に始まろうとしているバンドの道に少しの不安を感じながらも、楽しそうに楽器店へ向かった。