蝉の鳴き声。
太陽の熱。
紛れもない、夏。
「暑い…」
決して半ズボンの制服が作られることのない学校という名の地獄。
「暑い…暑い・・・」
私立茜河西高等学校、2学年のフロア。
このフロアは風がほとんど通らず、他のフロアよりも熱気が強く感じる。
「暑い…暑い…暑い…」
「あーもう!このクソ暑い日に暑い暑い言わないでよ、暑いなぁ!」
先ほどから「暑い」を連呼していた男の元に1人の女が近寄る。
「なんだよ…暑いときには暑いってしっかり言葉にするのがオレの美学だ。口を挟むな」
「何よその美学…とにかく、暑い暑い言うのはやめて」
「…はいはい」
ここに居る男の名は桜庭 陸人、女の名は鈴野宮 藍羅といった。
2人は幼馴染で、日頃から一緒に行動しているが、特に熱中するものも、部活にも所属していないため、基本的に平穏ですることのない日常を送っている。
「…ただでさえ暑いのに、そんなやりとりを見ているとなおさら暑くなるよ…」
そう言って2人の近くに寄ってきた男は杉崎 千種。
学年でも10本の指に入るほどの学力の持ち主だが…
「さて藍羅、今日も俺にパンツを見せてくれるかい?」
「物語冒頭でアタシにエロキャラ定着させんな!いつも見せてないでしょ!」
…煩悩まみれである。
「おう、千種聞いてくれよー。こいつ俺の美学にケチつけんだぜ?」
「何?それはよくないな」
「だってうるさいんだもん」
「藍羅だって人にパンツ見せるなって言われたら怒るだろう?」
「人にパンツ見せたこともないしそれを美学としたこともないわよ!何でそんなにエロキャラ定着させたいの!?」
「はっはっは」
「そこ!陸人笑わない!」
-小休止-
「…で?結局何の話だ?」
「あぁ、そうそう。千種がね、商店街の福引きで【夏フェスご招待券】を当てたのよ」
「すごいだろー褒めろ!称えよ!」
「…夏フェス?」
夏フェスはざっくり言うと有名なアーティストなどが屋外屋内で行う音楽の祭典だ。
「…すげえもん当てたな」
「だろ☆」
「その開催日が今週の土曜なのよ。もしよかったら3人で行かないかって」
「なるほど…」
「どうせ暇だろ?(笑)」
「うぜえなお前(笑)でもまあ暇だな」
「よし、じゃあ行こう!決定なーはい決定なー!」
「「(…うぜえ)」」
ともかく。
3人は土曜の朝6時に駅前から出るという無料の送迎バスに乗ることにした。
「あの駅は千種の家からだと遠いけど大丈夫か?」
「問題ない…かな?」
「まあそれはなんとかなさい」
「あれえ藍羅さん、何か辛辣!」
「…頑張って間に合わせなさいよ」
「はーいwww」
「(…うぜえ)じゃあ2人とも、土曜の朝6時にあの駅ね」
「「おーす」」
こうして3人は夏フェスに参加することになった。
この千種の当てた3人分の招待券が新たな音楽の道を開拓することになる…