血の申し子、殺戮の女神カーリー
「殺戮の女神」として名高いカーリー女神は、シヴァ神の妃の持つ別の顔の1つ・ドゥルガー女神の化身です。
「カーリー」と言う名前は、「黒い女」を指します。
ある日、戦闘女神ドゥルガー(次回紹介します)がアスラ(魔神)との戦いに赴いた時、アスラたちはまず、先兵を送り込んできました。
それを見たドゥルガー女神は怒り狂い、怒りで真っ黒になった顔から、「黒い女神」であるカーリー女神が生まれてきたのです。
それを見たアスラ軍は、今度はラクタビージャというアスラを送り込んできました。
この、ラクタビージャというアスラは厄介な敵で、カーリー女神がラクタビージャに斬りつけて、その血が大地に落ちると、そこからもう1人のラクタビージャが生まれるのです。
そこで、カーリー女神は戦術を変更し、敵を剣で斬りつけず、丸呑みにする事にしました。
更に、ラクタビージャの傷から流れる血を、1滴残さずすすりつくしました。
その結果、ラクタビージャの数はたちまち減っていき、カーリー女神が勝利したのでした。
ですが、カーリー女神は血に酔ってしまい、彼女が勝利のダンスを踊り狂うと、世界が振動して破壊されそうになりました。
やむなく、夫のシヴァ神がクッションとして、カーリー女神の足の下に横たわりました。
夫を踏みつけにしてしまったカーリーは、ようやく我に返り、夫に向かってペロリと赤い舌を出したのでした。
カーリー女神は、次回紹介するドゥルガー女神と同じく、ベンガル州で大変人気のある女神です。
現在「コルカタ」と呼ばれているインドの都市・カルカッタは、町の名前がカーリーに由来しており、「カーリーガート=カーリーの沐浴場」がその語源だとされています。
また、コルカタには巨大なカーリー寺院があり、そこでは生贄の儀式が行なわれているとの事です。
カーリーは「殺戮の女神」という神格上、生贄の儀式や血なまぐさい儀式の対象とされています。
このカーリー女神の信仰に関して有名なのが、インドに存在した「サッグ」という秘密結社です。
サッグ団はカーリーに捧げる為に、殺人を行なう秘密結社であり、1年のうち2ヶ月の間、カーリーに捧げる為の人間を殺すべく、殺人旅行に出たとされています。
ただし、血を流す事は不吉な事とされ、サッグ団は細い紐で犠牲者の首を絞めて殺すとの事です。
この、「血を流すのは不吉である」という考え方の出所は、管理者はおそらく上記のラクタビージャ神話ではないかと思っています。
このサッグ団ですが、現在では消滅したといわれているものの、一説によれば今でも存在しているとの事です。
(*管理人は、秘密結社に関して恐ろしく疎い人間ですので、「サッグ」について「カーリーに人間を捧げる殺人集団」、「殺害方法は首を絞めて殺すこと」しか知りませんでした。
この記事を書くに当たり、改めて検索エンジンを使ってサッグ団の情報を集めました。
各サイトの著者の方々、大変お世話になりました!ありがとうございます)
今回は予告どおり、カーリー女神の紹介です。
このカーリー女神、生贄の儀式が行なわれている事や、上記のサッグ団の存在の為に、恐ろしい女神の印象がかなりついていると思います。
(いえ、ついているどころか神格自体が「殺戮の女神」なのですが・・・・・・)
ですが、ラクタビージャ神話を初めて読んだ時の私の感想は、上に載せた漫画通りのものでした。
つまり、こんな感じです↓
「・・・・・・夫を踏んづけちゃって、それに気付いて舌をペロンと出してみせるなんて、カーリー女神って可愛いじゃない」
今まで相手を丸呑みにしたり、血をすすったり、世界を壊すような勝利の舞を踊り狂ったりしたような女神が、自分の失態に「舌をペロンと出してみせる」というのは、私からすれば意外であり、彼女にお茶目な印象を持たざるを得ませんでした。
カーリー女神の絵などを見ると、長い舌をべろりと出して生首を片手にし、夫を踏みつけまくっているという怖いものになっていることが多いのですが、シヴァ神からすれば、おそらく上の漫画のように見えたかも・・・・・・と思い、今回の漫画に至った次第です(見えないか・・・・・・)
生まれ変わった後も彼女を愛し続けるシヴァ神ですから、散々踏まれた事も顔についた足跡も、「愛」の名の下に乗り越えそうだな、と思いまして・・・・・・・・・
次回はカーリー女神の「本体」、ドゥルガー女神の漫画です。