Q265)

前回のQ264)「独立分詞構文の主語は何格か」について、柏野先生からアドバイスをいただきましたので、前回の私の考えの一部を訂正します。

 

<資料1>柏野先生からのメール

 「英語教師の質問箱」の独立分詞構文の項を拝見しました。あなたの言われるように、

独立分詞構文が使われるのはItを主語にした場合くらいでしょう。

(1)         It being Saturday, the place was largely deserted now.

―G. Gipe, Back to the Future.

後は小説の手法として、連続する行為・出来事を滑らかに描写していく

場合があります。こちらの方はよく見かけます。

後置されるのがふつうです [cf. 拙著『英語語法レファレンス』p. 456]。

(2)         “Don’t you understand,” she said, her eyes filling with tears.

“This is wrong.”―J. Collins, American Star

 

I hope this helps.

柏野健次

 

  この<資料1>から、独立分詞構文自身が使われる頻度はかなり低いことがわかります。例外は「itを主語にした場合」と、「連続する行為・出来事を描写する場合」ですね。

 

 ただ、私の疑問は人称代名詞を主語とした独立分詞構文はどの程度使われるのかという点でした。柏野先生にお聞きした返信が次の資料です。

 

<資料2>柏野先生からの返信

  添付ファイル(文献4)は、西尾孝氏の『実戦英文法活用事典』

(日本英語教育協会, 1976)からの引用です。

 ここにあなたの疑問に対する回答があると思います。

 

西尾氏は私が受験勉強をしていた頃の有名人ですが、同書には参考文献が載っていて、JespersenやQuirk et al.(初版)などに目を通されていたようです。

 

柏野健次

 

<文献4>西尾孝氏の『実戦英文法活用事典』(日本英語教育協会, 1976)のp.482

4.分詞構文の意味上の主語

 分詞構文をつくるとき、その意味上の主語が一般不定の人であるか、または主節の主語と同一であるときは必要はないが、そのほかのばあいは主格の形で示す。ただし、文頭にくる分詞構文では人称代名詞はitを除いて、beingの意味上の主語となるとき以外は避けられる。意味上の主語をもつ分詞構文を独立分詞構文(Absolute Participial Construction)といい、意味上の主語を独立主格(Absolute Nominative)という。

 As it was Sunday, the toyshop was crowded with boys.

  → It being Sunday, the toyshop was crowded with boys.

   日曜日だったので、おもちゃ屋は少年達でごったがえしていた。

  He was absent, so I took his place.

→ He being absent, I took his place.

  彼が欠勤したので、私が代理をした。

 The cold wind drove him indoors because he wore nothing but a light sweater.

→  Wearing nothing but  a light sweater, he was driven indoors by the cold wind.

   うすいセーターしか着ていなかったので、寒風に吹かれて彼は家にとびこんだ。

 (注)He wearing nothing but a light sweater, the cold wind drove him indoors.は避けたほうがよい。

 

 <文献4>で、西尾孝先生が「文頭にくる分詞構文では人称代名詞はitを除いて、beingの意味上の主語となるとき以外は避けられる」と述べられているので、前回の私の「it以外の人称代名詞を主語とした独立分詞構文は使ってはいけない」は行き過ぎだったことになりますので、訂正させていただきます。

 以上です。

 

なお、ご質問がある方は、以下のルールを踏まえてお願いします。                                              

 

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1.対象として高校の英語教師の方と予備校・塾の英語講師の方を前提としています。

よって受験生の方の質問はお断りします。

2.授業の教え方という前提から、問題文は出典を明記し、答えやマニュアルをそのまま写し、ご自分の考えを書いてください。

「次の文の訳をお願いします」「次の問題の答えをお願いします」といった受験生のような質問には一切お答えしません。

なお、質問は文法語法の問題と英文和訳に限らせていただきます。

言うまでもありませんが、「どうしたら下位レベルの授業がうまく行くのでしょう」といった漠然とした質問には一切お答えできません。

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それでは質問をお待ちします。