Q240) 今回は、 All that glitters is not gold.について、お願いします。
All that glitters is not gold. は、なぜ、Not all that glitters is gold. ではないのでしょうか。
Crown Ⅱに付属している部分否定のところの問題に、掲題のことわざがあります。
シンプルな疑問として、他の部分否定は、not all ~ なのに、なぜこれだけ、その語順でないのか、と思い、あれこれ調べましたが、文法的な根拠は見つけることができませんでした。
Not all that glitters is gold. は、間違いなのか。
All that glitters is not gold. は、例外的に?文法的に正しいのか、よく解りません。
今の段階で言えることは、
1.not all that ~ で、「さほど~でない」という表現があるので、それと紛らわしいから。
2.Shakespeare の時代は、もしかしてこれが普通だったのかも。
くらいしか、思い当たりません。
教えて頂けるとありがたいです。

A) 「英語語法事典―クエスチョンボックス簡約版」(大修館書店)のp.524の54にこの問題がとりあげられています。質問と回答の両方を紹介します。

<Q>. (1)All the perfumes of Arabia will not sweeten this little hand.
(2) All is not gold that glitters.
 上は全面否定、下は部分否定と思われますが、この否定の差はどこから生ずるのでしょうか。

<A> お示しの(2)のように部分否定となることが多いようです。
(a) All are not friends that speak us fair.(巧言を弄するものが必ずしも友ではない)
/All fish are not caught with flies.(すべての魚がはえで釣れるものでもなし)
(b)All war is not nationalist.(戦争がすべて国家主義的であるとは限らない)
 しかし、お示しの(1)のように全面否定を意味するものもあります。
(c) ...all the police in the world won't solve it.(世界中の警官を集めたってそれは解決できない)
 以上2種類の否定に分かれてくるものは、all とnotの語順ではなく、allの持つ意味の差に起因すると考えられます。
 すなわち、後者のように、全面否定となるall...notのallは集合的な「…のすべてを集めて、ひっくるめて全部」(the sum of, ...put together)の意味であるのに対して、前者のように部分否定となるall...notのallは配分的な「それぞれすべて、おのおのがみな」(each, every, everything)の意味です。
 しかし、部分否定か否かは文の脈絡がただ1つの決め手であるとも言えます。

 all...notが部分否定を意味するとき、notはallを否定する特殊否定であるから、not allの語順が論理的である(あるいは正しい)とされることがあります。
 しかし、実際には最初に引用したように、all...notの語順がしばしば見られます。
 それに対して、お示しの(1)のように集合的なallの場合には、その文や(c)のようにall...notの語順が論理的であるように感じられます。


 さて、質問者の方の疑問、「All that glitters is not gold. は、なぜ、Not all that glitters is gold. ではないのでしょうか」に対しては、「そうする必要性がないから」が答えになります。つまり、All that glitters is not gold.は、部分否定なのだから、わざわざNot all that glitters is gold.という必要はありませんね。
 我々教師は、「部分否定はnot...allの語順」を強調しすぎて、「all...notは全否定」と断定してしまうきらいがあります。特に、近くにいるnative speakerが「all...notは全否定」を断定することがしばしばあるので、それを助長させてしまいます。ジーニアス英和辞典第5版のallの(2)の[語法]に、ちゃんと以下のように書かれています。

(2)[not all...]すべてが(…とは限らない)(部分否定)
 She didn't answer all the questions.彼女はすべての質問に答えたわけではない。
[語法]
[部分否定と全否定]
(1) all...notの語順で用いたAll the students didn't come.は「すべての学生が来たわけではなかった」(=Not all students came.)という部分否定の意にも、「すべての学生は来なかった」(=None of the students came.)という全否定の意にもなる。ただし、all...notの語順は一般的ではなく、また使われた場合には部分否定の解釈を受けることが多い。話し言葉では下降上昇調で読めば部分否定の意に、下降調で読めば全否定の意になる。
(2)「全部合わせても」の意では全否定になる。
All the money in the world can't make him happy.全世界の金をもってしても彼を幸せにできない。


 なお、質問者の方の疑問に対しては、「続・英語語法事典―続・クエスチョンボックス簡約版」(大修館書店)のp.556の22が参考になると思います。質問と回答の両方を紹介します。

<Q> All students are not good.は外人講師は次のように使っており、また学校でもそのように教わったといっています。
All students are not good.(全面否定)
Not all students are good.(部分否定)

<A> お示しの説には賛成できません。All...notはやはり普通には「部分否定」であり、まぎれのない「全面否定」ならば、No students are good.のように表現することになりましょう。
 Fowler, Usageには、ある寄稿者が、
 「all...notの語順のとき―All A is not B.の意(すなわち、全面否定)
 not...allの語順のとき―Not all A is B.の意(すなわち、部分否定)
 とすべきである」
と提案したことに言及して、「このような規則ができれば大いにあいまいさが除かれるではあろうが、いまだかつてそんな規則の存在したことはない」、という趣旨のことが述べてあります。


 以上です。
なお、ご質問がある方は、以下のルールを踏まえてお願いします。                                              

質問のルールです。
1.対象として高校の英語教師の方と予備校・塾の英語講師の方を前提としています。
よって受験生の方の質問はお断りします。
2.授業の教え方という前提から、問題文は出典を明記し、答えやマニュアルをそのまま写し、ご自分の考えを書いてください。
「次の文の訳をお願いします」「次の問題の答えをお願いします」といった受験生のような質問には一切お答えしません。
なお、質問は文法語法の問題と英文和訳に限らせていただきます。
言うまでもありませんが、「どうしたら下位レベルの授業がうまく行くのでしょう」といった漠然とした質問には一切お答えできません。
3.質問は下記のメルアドにお送りください。題名(例 need doingについて)と氏名と職業を書いてください。
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なお、答えはブログに書きますが、その際質問者の方の実名などは一切公表しません。
それでは質問をお待ちします。