Q100)出典は1994年大阪府立大学前期の2です。
I have lived all my life with an embarrassment of squirrels in my backyard; they are all over the place, all year long, and I have never seen, anywhere, a dead squirrel.
I suppose this is a good thing. If the earth were otherwise, and all the dying were done in the open, with the dead there to be looked at, we would never have it out of our minds.
訳は次です。「私はこれまで裏庭にいるものすごい数のリスといっしょにずっと暮らしてきた。彼らは裏庭のいたるところにいるが、死んだリスはこれまでにどこにも見たことがない。それはよいことだと思う。もし世界が今とは異なり、死ぬことがすべて公然と行われ、死ぬものがその場で他の者に見られてしまうのであれば、私たちは死ぬことを頭の中から消し去ることはできないだろう」
 最終文のwith the dead there to be looked atが問題です。私はこの部分は付帯状況のwithの構文だと思います。ただwithの補語にto不定詞が来ている点が珍しいので、ジーニアスで確かめました。ジーニアスには次の例文がありました。

I can't play cards with all these dishes to wash. この皿を全部洗うことを考えるとトランプなんかやってられないわ

ただし、ジーニアスではwithの6は、a 「付帯状況」とb「状況的理由」の二つに分かれており、上記の例文はbの「状況的理由」に分類されていました。この二つは別の構文なのでしょうか?また、with+名詞+to不定詞が使われるのはどんな場合でしょうか?

A)この「状況的理由」という用語はどうやらQuirkから来ているのではないでしょうか。
「現代英文法講義」(開拓社、安藤貞雄著)の608ページにこうあります。

「with+分詞節/不定詞節」も、状況的理由を表す(Quirk et al. 1985:1105)
(13b)With so many children to support, they both have to work full time.
「扶養する子どもが多いので、二人ともフルタイムで働かねばならない」


しかし、いつも「状況的理由」になるわけではありません。安藤先生は、同書の11ページでこう書いておられます。

④小節(small clause):主語・述語関係はあるが、動詞を持たない節。
(b) withの目的語:with句は理由・付帯状況を表す。
(28)I feel lonely with my wife away. 妻が留守なので寂しい
(略)


さらに、同書の249ページにこうあります。

15.5.8「with+独立分詞節」
独立分詞節の前にwithをつけて、付帯状況、または理由を表す場合がある。
(1) The car was upside down, with its wheel still turning.
(車はひっくり返り、車輪はまだ回っていた)<付帯状況>
(略)


よって、いわゆる付帯状況のwithの構文は、文脈で「付帯状況」になることも「(付帯状況に基づく)理由」になることもあるということになります。「例解現代英文法事典」(安井稔編)(大修館書店)の353ページ以降にこうあります。

副次的機能を果たすwith構文は、主文に対して様々な意味を表すが、次例のように、主文の表す出来事に対して同時生起的な付帯状況や様態を表すのが基本的用法である。
(11)Don't speak with your mouth full.
このほかに、with構文は従属接続詞を用いてパラフレーズされるような用法がある。
(12)a. With prices so high, we have to cut down the expenses.<原因・理由>
b. No one steals with the Lions ace Higashio on the mound.<時>
c. What a lonely world it would be with you away.<条件>
しかし、with構文がいずれの意味を表すかはっきりと決定できない場合も多く、その決定には文脈や言語外的な情報を必要とする。


では、次にwith+名詞+to不定詞が用いられるのはどういう場合でしょう。
次の二つを比べてみましょう。
①They grew up in a proud, frugal family of German descent, with five children raised by a widowed mother on a meager pension.
「彼らは誇り高くつましいドイツ人の家庭で育ち、5人の子供たちはとぼしい年金で未亡人の母親によって育てられた」
②With five children to raise, she was not able to save much money.
「5人の子どもを育てなければならなかったので、彼女はあまり金を貯めることができなかった」
このwithの構文は、目的語と補語をとる、すなわち名詞とその次の語句がネクサス関係になっているのが特徴です。
そうすると、
①のwith five children raisedは、five children were raisedの関係であり、「5人の子どもが育てられた」を表します。
②のwith five children to raiseは、five children were to be raisedの関係であり、to不定詞は未来指向なので「これから育てるべき子供が5人いた」を表します。

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