Q33) 予備校のテキストです。4択問題です。
The poor woman ( ) again.
①was robbed her bag ② was stolen her bag ③ let her bag to be robbed ④ had her bag stolen
答えはもちろん④had her bag stolenですが、生徒から「got her bag stolenも使えますか?」と質問されました。どう答えたらいいのでしょう。
A33)ジーニアス英和辞典第4版のhaveとgetの内容が変わったことが混乱を招いているようです。最新の第4版のhaveの17にはこうあります。
17 [SVO done]a [使役] [通例 have に強勢を置いて]<人が>(お金を払って)O<事>をしてもらう, させる《◆get O done の方が語感が強い. ただし過去時制では had O done, 命令文では get O done がふつう》∥I'd like to have these things dry-cleaned. これをドライクリーニングしてほしいのですが
b [被害] [通例 done に強勢を置いて]<人・物が>O<自分の物>を…される《◆犯罪・災害による被害をいう;Sに何らかの責任の含みがある場合は get O done がふつう》∥She had[got]a book stolen from the library. 彼女は書斎から本を盗まれた《◆(1) Someone stole a book from her library. の方が自然. (2) had に強勢を置けば, 「本を盗ませた」(17a)「盗まれた本を持っていた」1の意.
/The house had its roof ripped off by the gale. その家は突風で屋根をはぎ取られた.
c [完了] [通例 done に強勢を置いて]<人が><物・事>をしてしまう∥Have the job done by tomorrow. 明日までにその仕事をしてしまいなさい《◆Finish the job ... の方がふつう》
以前のジーニアスは、She had[×got]a book stolen from the library.だったのが、hadもgotも可になりました。
そして、<3)have は動作主に責任がある場合, get は主語に責任がある場合なのでこの例では get は不可>が削除されました。
つぎに、getの16にはこうあります。
16 [SVO done]a [使役][get に通例強勢を置いて]<人が>(時間と労力を要することについて)O<物>を…してもらう, させる∥Get the curtains washed. カーテンを洗ってもらいなさい
b [被害]《略式》[done に通例強勢を置いて]<人が>O<自分の物>を…される《◆
特に自己の不注意などで引き起こした事故や不幸をいう場合に好まれる
∥Be careful not to get[×have] yourself burned.やけどしないように注意しなさい(やけどは不注意でおこる事故なのでget)
He got[had] his bag caught in the train doors as they were closing.電車のとびらが閉まるときに彼はかばんをはさまれた(自己の不注意による事故を暗示するのでgetが好まれるがhaveも可)
We got[had]our roof blown off in [by] the gale. 強風で屋根を吹き飛ばされた(自己の不注意による事故ではないのでhaveがふつう)
c [完了]《略式》[done に通例強勢を置いて]<人が>O<物・事>をしてしまう∥She worked hard to get the work done. 彼女はその仕事を終わらせようと一生懸命働いた《◆ ...to finish the work の方がふつう》
以前のジーニアスは、We got[×had] our roof blown off in [by] the gale.だったのが、gotもhadも可になり、<自己の不注意による事故を暗示するのでgetが好まれるがhaveも可>の説明が加わりました。
また、He got his bag caught in the train doors as they were closing.だったのが、gotもhadも可になり、<自己の不注意による事故を暗示するのでgetが好まれるがhaveも可>の説明が加わりました。
そして、以前にあった説明の<不注意による事故などで主語に責任がある場合は通例 get, 犯罪・災害などで動作主に責任がある場合は通例 have>が削除されました。
上記のジーニアスの説明を3つに分けて整理しましょう。
1.使役の場合
have O done 過去時制では had O doneがふつう
get O done 命令文では get O done がふつう
2.被害の受け身の場合
have O done 犯罪・災害などで動作主に責任がある場合は通例 have
get O done 不注意による事故などで主語に責任がある場合は通例 get
3.完了の場合
have O done
get O done
ウィズダム英和辞典のhaveの20にはこうあります。
have A done
a[使役]業者・専門家・目下の人などにA(物・人)を…してもらう、させる
【語法】haveはmakeほど強くないが強制の意味を持つので、仕事を依頼している業者・専門家・子・生徒・部下など、社会的立場が自分と同等以下の者に対して用いる。
I'd like to have my car checked.車を調べていただきたいのですが(業者の人以外に言うときは失礼に響くので、Would you check my car?などを用いる。なお、よりくだけた言い方のget A doneでは説得に重点があり、このような制限はない)
b.[経験、受け身]<人などが>…にA(物)を…される、させられる(しばしば不快さを暗示する。aと紛らわしいので避けられることがある)
He had his car stolen (by someone).彼は(誰かに)車を盗まれた。
c[完了](くだけて)A(物)を…してしまう、…してしまっている
Please have this done at once.これをすぐやってください
I had my right leg hurt in the accident.事故で右足をけがした(他人ではなく自分の不注意に原因がある場合はhave A doneは用いない。(×)I had my right leg hurt when I fell down.転んで右足をけがした)
同じくgetの28にはこうあります。
a[使役]<人・事が>人にA(物・人)を…(の状態)にさせる、してもらう
【類義】get A doneとhave A done
(1)getは困難なため何らかの努力を要する行為に用いられる傾向がある。これはget A to doにもget A doingにも当てはまる。一方、haveは努力を要しない決まりきった行為について用いる傾向がある。
How did you manage to get your car fixed so cheaply?どうやってそんなに安く車を修理してもらったの
The children have their teeth checked every year.子どもたちは毎年歯を検査してもらう。
(2)命令文ではgetの方が自然に響く。
b[完了](時間をかけて・努力して自分で)A(物)を…(の状態)にする。Leave it to me. I'll get it done.僕に任せて、やっておくから(I'll do it.と違って、自分の力で完了させることを強調)
c[被害]A(体の一部)を…される
get[(まれ)have]one's fingers caught in the door(自分の不注意から)ドアに指をはさまれる
【語法】(1)doneには自分で制御不可能な内容がくる
(2)getは主語の行為を強く意識し、しばしば主語が何らかの点で、たとえ偶然でも起こったことに責任があると話者が考えていることを暗示する
have[(まれ)get]one's car stolen 車を盗まれる
上記のウィズダムの説明を3つに分けて整理しましょう。ただし、ウィズダムは「被害の受け身」と「完了」の区別は明確ではありません。
1.使役の場合
have O done 仕事を依頼している業者・専門家・子・生徒・部下など、社会的立場が自分と同等以下の者に対して用いる/努力を要しない決まりきった行為について用いる
get O done 説得に重点があり、上記のような制限はない/ getは困難なため何らかの努力を要する行為に用いられる/命令文ではgetの方が自然/
2.被害の受け身の場合
have O done
get O done 主語が何らかの点で起こったことに責任があると話者が考えていることを暗示
3.完了の場合
have O done
get O done
なお、「英語語法レファランス」(柏野健次著)(三省堂)の115ページに、こうあります。
get+目的語+過去分詞の構文は、完了の意味で用いられることがある。have+目的語+過去分詞もアメリカ英語では完了の意味を表すが、このgetの構文のほうは英米の区別なく用いられる[Swan(2005)]
よって三つの辞書をベースに整理すると、以下のようになります。
1.使役の場合
have O done 業者・目下の人に当然なすべきことをさせる場合
get O done 人に困難な努力を要する行為を説得してさせる場合
2.被害の受け身の場合
have O done 通例犯罪・災害などで主語に責任がない場合
get O done 通例不注意による事故などで主語に責任がある場合
3.完了の場合
have O done アメリカで
get O done アメリカでもイギリスでも
ここで冒頭の質問に戻ります。「バッグを盗まれた」のは、犯罪によるものですから、ふつうはhadを使うべきです。しかし、それは「通例」なので、gotも可となります。