犬さん みなさんこんばんは~! ついに! ついにですよ!
晴野 『麒麟がくる』最終回でしたね! 
カク この日がきてしまいました
ロバ 無事迎えましたね!
カク ものには終わりというものがあるのですな
晴野 おク○リ事件から始まり、コロナ禍となんとか無事に最終回にたどり着けましたよね!
ロバ 薬ダメ絶対! にしてもいやぁほんと大変な年だった。早速参りましょう! NHK大河『麒麟がくる』をより楽しむために!
晴野 戦国のマニアックなウンチクや
カク 大河ファンとしてライトにきゃぴきゃぴ妄想したりっっ
ロバ 僕ら俳優・演出家ならではの演技論や演出論などなどっ、語ったりする。それが‼‼ 【麒麟がくる チャットでナナメ斬りッ】! キンカーーーーーーンファイナル!
晴野 きんかーん
カク キンカーーーーーーっ
犬さん キンカーーン!(ついに光秀は禿げなかったが) いやあついに終わってしまったね。一晩経って今このナナメ斬りを語ってるワケですが、早くもロス感大きいw
カク そうすね。意外と、きますな
晴野 あと50話くらいやってくれて良かったのに! ってくらい寂しいですね
カク しかし、山あり谷あり、の大河でした
ロバ 本当にここんとこ内容が駆け足だったから、もっと尺があればと思わざるを得ない大河だったわよん。
カク そう! ちょっと駆け足だったね。ラストでも十兵衛駆け足だった! パカパカ
犬さん まさに山あり谷ありだったねえ。尺はもっとほしかったよ。オリンピック想定でまずもともと話数が少なかったところに、キャストの不祥事、そしてコロナと、未曽有の危機に見舞われた大河でした。それを考えるとまず最初に、クリエイター陣に拍手を贈りたい。よくぞ締めくくってくれました!
晴野 駆け足ながら『麒麟がくる』の世界線にも四国があって良かったε-(´∀`*)長宗我部元親が名前だけでも出てきたので!
カク 滑り込みで! でました! 長宗我部!
犬さん 長宗我部元親、一瞬でもいいからキャスト込みで見たかったけどね
晴野 私には超フレッシュなイケメン俳優が颯爽と槍を構えている姿が見えました!w
カク 黒田官兵衛は、一瞬出られました
ロバ 一瞬の濱田岳の黒田官兵衛にはびっくりしたなw
カク 栗山大膳ちゃうのかい!
犬さん みこ……w 濱田岳をたった二言、それも「は」、「は」だけで起用するとは! 大河ならではの贅沢よ~
カク ほとんどギャグでしたな
ロバ 『軍師官兵衛』では栗山だったっけね。贅沢でした。思わず笑っちゃったよ。
犬さん いやオレはその二言だけでも存在感を感じたけどなあ

 
【2014年に放送された大河ドラマ『軍師官兵衛』。主演の黒田官兵衛をV6の岡田准一が、濱田岳はその家臣の栗山大膳を演じた】

晴野 笑ったよね! 官兵衛に「運が開けて参りましたぞ」と、言わさない! 自ら率先して運を切り開きに行く秀吉の姿に、官兵衛も引き気味というw
カク 「なんじゃこの人」みたいなリアクションでしたものな
犬さん 今回は官兵衛の役どころを秀吉が全部持って行った。観ていて腹が立つくらい、「(謀叛を)やればいいのじゃあ。明智様が天下をぐるっと回してくださる~」の秀吉、悪かったなあ
晴野 悪かった! そこが良い! あれは間違いなく耳削ぎ鼻削ぎの太閤殿下になるに違いない!
ロバ やっぱ秀吉は悪くなきゃね! あの秀吉の今後とかが見たくなる。真の悪役として、君臨できそうw
カク 細川藤孝が秀吉に情報を流したことになってましたな
犬さん ああ、語りたいことたくさんありすぎ! そうそう。明智が謀叛するかも? の情報を秀吉にもたらしたのが、細川藤孝だったという! ある意味、本能寺後に明智を見捨てるよりもっと悪いよ、細川
カク 細川も、ワルですなあ
晴野 てか、情報網ガバガバ過ぎて、コレ謀反できる? と心配でした。信長以外みんな、明智やらかしそうってバレてるんだもんw
犬さん その前段として、光秀が藤孝の覚悟を問うシーンがあったじゃない? あの時点で、「覚悟とは果てなきもの」と言う光秀に、(あ、信長様に謀叛する気だ。もうついていけない)って思っちゃってたよね、藤孝は
カク 「果てなき」で、ドン引きしたんだろうな。勝算なくなっても、突っ込んで自滅する気だ、と思ったと思う
犬さん んで、その藤孝の情報で秀吉はいち早く帰り支度ができたことになって、中国大返しからの山崎の合戦で光秀を討つ、とこういう解釈だったよね。ドラマは
カク 合理的な解釈ですよね
ロバ そして、ナレーションでバッサリというドラマでしたねw
カク 山崎が、ない!
犬さん とまあ、4人が4人とも語りたいことてんこ盛りの今回ですが、一応お題に沿って進めましょう。今回はいつもと違ってその回の考察やウンチク3題ではなく、「一年間このドラマを観た総括・感想を3題」でお贈りしまっす♪
ロバ そうっすね、多分無限に話せちゃいそうだから。しぼっっっって参ります。まず今夜の最初は★トピック1 室町の終焉を描き切った
晴野 コレよ! コレコレ! 『麒麟がくる』は、室町幕府の終焉をしっかり描いてきて、織豊期の大河ドラマなのに新しい大河だった!
カク 池端さんも最初からおっしゃってたと思いますが「(室町幕府の興りを描写した『太平記』の対として)室町幕府の終焉のドラマを書きたい」という趣旨の言及がありましたが、それは果たせた感じだね

 
【1991年に放送された大河ドラマ『太平記』。脚本は『麒麟がくる』とおなじ池端俊作。室町時代を切り開いた主人公・足利尊氏を真田広之が演じた】

犬さん その新鮮味はたしかに大きかったねえ♪
晴野 戦国モノのおもしろさは、天下取り、国盗りなんだけど、今回はそちらはほとんど描かれなかった代わりに、美しい足利義輝や、信長以前の天下人・三好長慶、一人半沢直樹の摂津晴門などなど普段の戦国モノには出てこない様な面々にも光が当てられていました!
ロバ そうっすね、細川藤孝にしろ明智光秀にしろ、理由なき足利将軍ブランドにしがみつく点や、それらの室町武士の価値観そのものがポンコツに映った意味でも、その衰退や、破綻を表現できており、息詰まった戦国感を出していたのも印象的だね。
カク 相対的に京の動静がつぶさに描かれた、というのも、戦国大河では異色でしたな。まさに、中世と近世のはざまで、時代と共に消える室町武士、そして新時代を切り拓くサムライ、入り交じっておもしろかったな
犬さん そうだよねえ。その意味では異色の戦国時代劇だったね。摂津晴門や足利義栄、三淵藤英なんて、普通の戦国モノには出てこない人物に多数光を当てたし、朝廷側も二条、三条西、近衛、正親町帝をしっかり描いていた。この点ではとても骨太なドラマだったんだよなあ。そこはすごく評価してます!
カク この辺りの歴史を深掘りしたくなった新しい歴史ファンも増えたかもね
晴野 室町秩序を崩壊させていったのが、道三や松永、信長なんだけど、そちらの煌びやかさと対比的に、室町幕府が敗者の物語として描かれていたのが良かったですよねぇ、本当
カク そうだよね。朽ちて斃れていく室町幕府の様子が新鮮でした
晴野 アホか脳筋にしか描かれない足利義輝があんなに聡明で美しく儚く描かれるなんて! 信じられない!
犬さん う~ん、でも “そこは”なのよ! 史実も含めて、なぜ織田信長が革命児と呼ばれるのか。なぜ室町幕府を解体せねばならなかったのか。今までの戦国モノと違って、“そこ”を丁寧に描いていただけに、その延長線上にある明智光秀=室町武士の典型と、新体制を創る者=麒麟を呼ぶ者・織田信長との相克に落とし込まれなかったのが残念!
カク 十兵衛は、最後の最後まで「幕府復興」に奔走してましたな。完全に信長とは同床異夢…… 十兵衛は、室町幕府以外に平和統治のかたちをイメージできなかったんだね
犬さん 最終回で念押しされてたけど、二人とも「大きな国を創る」ことでは同床だったけど、それを幕府や朝廷、つまり旧権威主体で創るか否かで大きく違ってた
ロバ 室町幕府の衰退を描くのはいいけど、それと麒麟がくる来ないって主題は、室町幕府の動向と因果関係ないもんね。平和な国、大きな国を作りたいのか、幕府を再興したいのかそこに言及できなかったのが構成上の残念な点なんだと思うんだよね。主題とやりたいテーマが噛み合ってないのは残念。
犬さん だからあと一歩踏み込んで、信長と光秀に「なぜ義昭や朝廷任せではダメなのか」の意見を戦わさせてほしかったよ。単に光秀に「信長様は変わられてしまった」と言わせるんじゃなくさ。
カク そうね。せっかくドラマ序盤で「抑止力論」が出てたんだけど、幕府の統制力も抑止力論なんだよね。室町幕府は、基本が有力守護大名の合議制で、足利一門も外様も力を合わせて政治をしてたけど、それでは世の揉め事が収まらなくなった
ロバ 信長の天下布武、つまり強大だった幕府を滅ぼすほどの武は、全国の争いを鎮める抑止力足り得るでしょう? その辺ちゃんと考えちゃうと、やっぱり信長が正しくなっちゃう。この作品名を決めた時点で、そこから逃げちゃダメなんだよ。
カク ひるがえって、徳川幕藩体制というのは、大きな外様や、家柄のいい親藩は政治に関与させず、将軍家が圧倒的な800万石の石高で全国の大名を圧倒する体勢。
犬さん そうよ。室町幕府やその頂点である足利将軍は、すでにその抑止力を失ってるじゃない? だから乱世が長引いてるわけじゃない。その事実を描き、だからそれらに代わる新体制が必要なのだ。そこを描くために、松永久秀を序盤から出して光秀と邂逅していたことにして、鉄砲=抑止力、鉄砲を多数持つ者=大きな国を創る者、という構図を唱えていたのに。ドラマ終盤ではその主題がまるでなくなっちゃった。
カク それがイメージできた家康の勝ちだったんだとおもう。歴史の流れ的には……。僕も、そういう骨太の統治論をやるのかと思ってたけど……
犬さん まあ、そこに気づけない幕府や旧室町体勢の人々、という捉え方は、史実的にもドラマ的にも間違いじゃなかったと思う。問題は明智光秀の立ち位置。まさか光秀を旧室町価値観の人にしちゃったから、その先は描きにくくなったよね
晴野 残念ながら首の皮一枚で繋がってた様な室町秩序を完全に崩壊させてしまった事件が本能寺の変なんですよねぇ。
犬さん というと?
晴野 強い幕府があれば、そもそも下剋上なんてものは無かった筈なんだけど、それが各地で起こり始めて、幕府も統制ができない。将軍は京から追い出されたりもして。そんな中で、日本の全国に衝撃を与えた最大の下剋上こそが、本能寺の変。例えば、分かりやすい例でいくと、真田家なんかはただの国衆だったのが、自ら舵をとってどこに付き従うのかを決めなきゃいけなくなった。今までは、武田に従う国衆で良かったのに。信長が本能寺の変で討たれた事によって、それぞれの家がそれぞれの家の判断で舵を切り始めた事によって、今まで幕府だったり、信長だったり各大名によって安堵されていた自分の土地すら保てるのか分からない。そんな状態になっていったんですよね。特に、関東一体とかは、カオスですよ。
犬さん そうそう。みこが言いたいのは多分、そうして信長によってギリギリ収まりかけていた乱世が、本能寺の変によってまた逆戻りしてしまった、ということなんだと思うのよ。光秀がそこまで考えられたかどうかは別として、史上最大の下剋上=本能寺の謀叛を起こしてしまったことで、世のまとまりがまた逆戻りしてしまった、と
ロバ それはわかるよ。でもそこは室町システム関係ないじゃん? 結局崩壊仕掛けの幕府の威光を、光秀は信長の威を借りて幕府の権威を復権させたかった。義昭を担ぎたかった。だけど、あまりに信長がイノベーターだったから、ついていけなくて摂津や義昭はノブを切ろうとして失敗。衰退は加速するよね。本能寺関係なく、やはり室町の崩壊という点では、義昭が信長と反目した時点で詰んでるよ。
カク そうすねー。足利将軍家は御料地ももともと少なく、親衛隊の奉公衆も弱体で、これでは全国を抑えることができなかった。ところが、三好が軍事力さえあれば畿内を制圧できることを示しちゃった。信長は三好政権を見習って、まず軍事力で京を制圧して、それから全国静謐を目指そうとした、という流れだと思うんすよね
犬さん そう、そこがこの一年間のドラマの一番大事なテーマだったと思うのだけど、終盤はそこに舵を戻せなかったのだと思う。これはトピック3に話したいから後にとっておくけど、池端先生も30数話の段階でラストにかなり悩んだと吐露しているのよね。どう本能寺に繋げればよいか、ってことに
カク で、信長はほぼ日本の中心地を軍事的に抑えたんだけど、永久的な統治機構を構えるまえに、明智に討たれちゃった。それが「逆戻り」の部分だと思うのよね
晴野 信長の秩序構築の途中で、明智にぶっ壊されちゃう訳ですからね。しかも、前にもナナメ斬りで語った様に、信長は合議制を意識していたりして、室町の秩序については、むしろ取り入れようとしていたのに。
ロバ そう。だからこそ、その破綻した平和維持に向けてのルートに対する脚本的な正義を、逃げずに模索して描かなきゃいけなかったけど、そこには触れずに旧室町価値観の明智がイノベーターを討つという、主題から離れた本能寺の変を描いてしまった。これが問題だと犬さんと俺は言いたいのだ。
カク 十兵衛が、あの頭の良さで、織田政権の統治機構をうまく編み出す方向で活躍すればよかったのにね♡
犬さん シンプルに言い換えると、室町システムそのものはロバートの言うとおりとっくに破綻して詰んでいたけれど、ギリギリ最後の下剋上上等! 全国に流行らせちゃえ、みたいな風潮は信長が断ち切ろうとしていたのよ。それが信長の天下布武。でもそれをあと一歩のところで頓挫させたのが、光秀の本能寺の変だと思うの。光秀は自ら乱世に逆戻りするスイッチを押しちゃったに等しい。かろうじて、秀吉が、その被害が大きくなる前に光秀を討ち、後継者争いに勝って押しとどめてくれたようなものよ。
ロバ 結局主人公が麒麟を求める主題と真逆じゃないか! なんとかしてよ‼‼ とぼくは画面の前でブチギレよ。
犬さん その話はトピック3でたっぷり語ろうよ♪
晴野 本能寺の変の後の関東のカオスさを知りたい方は是非『真田丸』をどうぞ!
ロバ ギギギギギギギギ(猛りを抑えきれん)
犬さん でも元の話に戻すけど、これまでの大河でも戦国時代劇でも、社会システムとしての室町幕府やその制度に目を向けたことは少なかったから、その点でこのドラマの意義は大きかったよね。
ロバ 暴論ですが我はそこのみ評価します。
カク ちょっと垣間見せただけでも、まあすごいことすよね
晴野 少し前じゃ考えられなかった