ロバ では次はまさにその

 

★トピ2 光秀、義昭との「訣別」

 

ロバ について話しましょう

犬さん オレ、38話にして、初めて「人間・明智光秀」を見た想いがしたよ

初芝 ボロッボロ泣いてましたねぇ

カク 殿中で大泣きに泣いてました

犬さん 光秀があんなに己の感情をあらわにしたのって、初めてじゃない?

カク それだけ今回のことは、十兵衛にとって、大きな挫折だったんだと思うのですよ

犬さん これまでは「なんでも御見通し、それがしにはわかってござる感」がマンマンの完璧超人っぽかったけど

初芝 剣術稽古の時から義昭に疑問を感じていて、妻に「どちらが大事なのか」と問われると、義昭との訣別を決めるという流れが描かれてましたよね

犬さん カクちゃんの言う、その挫折、かやのの言うその疑問を掘り下げると?

カク 十兵衛は、自分が選んだ義昭がハズレだったことに気づき、そしてまた、せっかく義昭を支えるべく自分が選んだ信長と戦ってしまう、という……長年掛けて培ってきた自分の「麒麟を呼ぶ」戦略が、完全に崩壊してしまったですからね

初芝 剣術稽古の時に、光秀は義昭の剣を払いながら、出会った頃の義昭との思い出をフラッシュバックさせていたじゃないですか。あれは、あの頃は義昭も同じ世を目指していたはずだったのに……って意味だったのだと。でも、今自分の目の前にいる義昭はどうなんだ? あの頃の志が今の義昭にはあるのだろうか? っていう疑問を持ったのではないかなぁと

カク たしかに、天下に麒麟を呼べる将軍の器ではないかもしれぬと疑い、悩みながらも、覚慶のあのキラキラした瞳を買って十兵衛は選んだのに、結果としてその光は、とても薄っぺらいメッキの輝きだったことが露わになりましたね。手合わせのとき義昭を「見下ろす」十兵衛の目は、義昭に呆れを感じて「見下して」いたように見えました。やはり、人は強くないと、美しい言葉や思いがあっても、淀んでしまうと思うのですよ。しかし、義昭は、弱すぎた

ロバ 強くないとというか、権力を持つことに義昭は耐えられなかったのだろうな

初芝 権力にのまれてしまった、って感じがしましたね

カク 力や知恵やカネがないのに、貧しい人を救いたいって気持ちだけでは……なにもできないと思う

犬さん いや、権力を持つことに耐えられないのではなく、その使い方を知らなさすぎた。権力を持つことで自分と他人が変わってしまったように誤解したんだと思う。その点信長は権力を持ってもまったくブレないし、まして呑み込まれもしない

カク そうすね。信長は、力を持っても、舞い上がらない

ロバ そこは光秀はね、「どこまで行っても十兵衛」ですからね

カク いい意味でも、悪い意味でも、ね

初芝 劇中でも、十兵衛は十兵衛、って言われてましたからね

ロバ あの腹黒系幼馴染の上司の妻にね

犬さん かやのの「あの頃の志が今の義昭にあるのだろうか?」という疑問は、まさに今回のあのシーンで答えが出されたよね。駒ちゃんがせっせと稼いだお金を、全部鉄砲購入に充てたいって手紙のシーン。あなたはかつては、そのお金で悲田処や薬院を築きたいって言ってたんですよ?

カク まったくです……あのセリフは、ドラマとして、いいセリフでした

ロバ 勝ったら返すからってw ヒモ男がパチンコ代借りる時みたいなこと言ってましたね

初芝 あれ駒ちゃん相当ショックだったと思うんですよね。私だったらぜっっったい使わせん😤

カク 力強さに裏打ちされない薄っぺらい慈愛というのは、その程度のものなんだと思う。現代人も、そういうところ、あるじゃないですか。上辺だけの慈愛とか博愛。それへの皮肉だと思いましたよ

犬さん 演技だけに絞って見ると、泣き叫んで感情を爆発させる光秀と、それを涙と悲しい笑みで見送る義昭、どちらも良い芝居だったけどねえ。でもその内容がどうにもいただけない

カク 不完全だけど懸命にもがく姿が、人間模様としては、すばらしいですよね

初芝 「光秀は鳥じゃ」っていう時の義昭の笑みが悲しくて悲しくて、心がキュってなりましたね。芝居だけみると。

カク 戻ってくるやもしれぬ、といいながら、もう戻ってこないな、と義昭は思ってたろうね。別れというのは、そういうもんです

犬さん そうなんよ、芝居はすごく良いんだけど、この時点での二人の悩みや歯がゆさを、信長はとっくに見越してたし現実はそうなることがわかっているから、事前に先手先手を打ってきてたのに! って思っちゃう。二人がそれを理解していれば、実は二人自身もこんなに悲しくなることはなかったんよ

カク 信長は、さすが天下を取る男だけはある、ということっすよね

犬さん 理想を描くなら(持つなら)、それ相応の実力を持てってことなんだろうな。しかし実力が備わる前に理想を夢みてしまうのもまた人間。うーん、悲しい

カク 信長としては、たとえば、義昭がせめてミカドをもうちょっと持ち上げてくれれば、却って将軍の権威も上がると分かっていたんだろうけど、義昭にはその発想が分かってなかったね

ロバ あの、ちょっといいです? 実は、私今回の訣別全般に、そこまでみんなほど乗り切れなかったんだよ。置いてけぼりくらった感じで

カク おっ、といいますと!

初芝 置いてけぼり?

犬さん 聞きたいね

ロバ いやね、幕府に期待を、みんなはいつ頃からしなくなってました? 歴史の観点じゃなく、『麒麟がくる』単体で見て。

犬さん 相当前からよね。覚慶のキラキラ時代からそうだし、前回のナナメ斬りでも語ったように、摂鶴チャンが一身に背負ってくれた幕府の腐敗・衰退が見えた時点から一気に……

ロバ 僕もね、結構序盤。義輝のキラキラはよかったけど。義昭上洛の手前、織田からの軍資金を見て義昭の目の色が変わったとこからもう期待してないの。そして作中、幕府の良い政治は一切描かれずじゃない?

初芝 義輝時代は期待してたなぁ。義昭と光秀が床下で夢語ったところくらいから、期待度は一気に下がった感じですかね。

ロバ そうだよね。

犬さん ああ。あの時目の色変えたよね。千貫ぞって

カク しかし、あの現ナマを、いきなり貧者に配ろうとしてましたな。たしかに今作で幕府の良政治の面は一切描かれてないね。史実でもそんなの多くないけど

ロバ それ以降、幕府再興! って言ってるの光秀だけでしょう? 義昭も駒を抱いて以降ずっとクズ。見てる僕からすれば未練も何にもないし、やっと光秀が目を覚ましただけ。なんなら手前の剣術のシーンで完全に見限ったと期待したのに。

カク ああ!確かに、剣術で見限ったように一旦は見えたけど、まだ「夢」は手放してなかったものね

犬さん これまでの悪役・摂鶴チャンが退場した途端、義昭の株が下がった、というかドラマ側が強引に引き下げた感はあるね。義昭が人変わりしすぎたけど、その理由があまり描かれていないので、特にそう感じる

カク 摂津のようなヤツであっても、実務官僚に去られてしまうと、義昭の無力感がさらに膨らんで、攻撃的になっちゃった感はありますな

ロバ 勝手に悪堕ちして横暴に振る舞う義昭にラスト涙流されても、ですし、その直後に、あのヒモ男みたいな政治献金流用使い込みメールを、愛の思い出の虫かごに入れるクズっぷり。どうにも見てて混乱しちゃうよ。

犬さん 虫かごに手紙入れた件はオレもさすがにないと思った! そんなロバートに一票

カク 大切に慈しんできた虫すらも無視してしまう、ということかな、と……

ロバ わお! ダジャレわお! それはそうと、聞いて聞いて! わけわかんないのは、十兵衛は「決して公方様が信長様を追い落とすなどと、もしさような動きがあれば、この十兵衛が食い止めてご覧に入れまする」とか言ってたでしょ

犬さん そうそれ! 手のひら返しとはこのことで、いったいお前は公方様と信長様、どちらの味方なのか、と。それが今回、ハッキリと義昭の目の前から立ち去ったことでハッキリしたけれども

初芝 前回から素晴らしいくらいに手のひら返しですね…

ロバ やっとね!

カク この大河はここで幕臣から信長の配下になった、という立場なのですな

ロバ 違うんだよカクちゃん、公式にはもともと幕臣ですらないんだ 

カク そ、そうなんですね!

ロバ 『幕臣のようなもの』が公式設定なんだ

犬さん 今回のそのセリフの話に戻るけど、「この十兵衛が食い止めてご覧に入れまする」というあのセリフにしても、結局は義昭の下を去るってだけで、決して松永攻めは食い止められていないし、信長本人は参陣していなかったものの、柴田や佐久間ら織田の軍兵は河内に送られて、信長包囲網の好機を作っちゃってるんだよな。食い止めまする、ができてないんだよ

カク 有言不実行、ですか……

ロバ そうなんすよ! ここにきて、光秀あいつただのビッグマウス説が濃厚なんですよ

 

 

【義昭のクズ男っぷりと 十兵衛の有言不実行ぶり。どちらの本性も見えてきた!?】

 

犬さん 義昭含めてだけど、あまりに有言不実行すぎるのよな

初芝 確かになぁ……

カク 本国寺の床下回想シーンでも、ありましたねえ「我らにとってここは夢の都であった」「その美しき都に戻さねばなりませぬ」「自信はあるか」「ございます」って。義昭と一緒に美しい都を作るんじゃなかったのかよ、って……

ロバ 美しき都の景観の一つである、御所の壁は信長が直しました

カク そうよね

ロバ 坂本も結局松永にあげてないしね。

初芝 その辺りから光秀の有言不実行が……

犬さん 何度も何度もナナメ斬りで語ってきたことだけど、理想を持つことは悪いことじゃないが、それを実現する手段と力を得ようって働きかけが足りないのよ、光秀は。義昭はそういう役だし、結局は信長と敵対する役だからそれでもいいけど、仮にも麒麟が来る世にしたい! と願う主人公なら、それを実現するための努力(というとちょっと語感が違うが)、働きかけはあなた、なさってる? と言いたい。自分がそういう働きかけをする中、義昭と乖離してしまったり、信長を討つことになるなら、視聴者のモヤモヤも少しは減るんじゃないかな。

ロバ 初回からずっと文句言うだけですもんね。あの子。夢は描くけど、その実現はいつでも他人任せ

カク 人と人との調整だけ、してるんだよね。建設的な政策を立案・実行してるわけじゃないのよな

犬さん まさにそれ

カク で、最後、調整にすら失敗して、泣く

初芝 まさにだ……笑

ロバ そう! そうだわ! 夢半ば感がないのよ!!!

初芝 そうなんですよね。

犬さん その点では、古株で上役の柴田や佐久間に、「松永攻めなんぞ、今やらんでいい。浅井朝倉攻めが先じゃ」って建設的意見を出してる藤吉郎のほうが、よほど織田家のためを想ってる

ロバ そうなんですよ! なのに一番手柄は光秀ですからね! 殿の命令に歯向かったのに

カク 調整役する中で一番ダメなのが、八方美人。十兵衛は、大事なところで、そうなる。そうすると、二枚舌って言われる

犬さん その二枚舌のせいで悔しいのは、前回の「信長様が道を外すなら~~」宣言を、前回のナナメ斬りでは本能寺の変の動機をついに自白したか? とまで語って、みこも同様に感じてたらしいんだけど、今回の「(信長様のためにならぬことが起きるなら)それがしが食い止めます」でまた白紙に戻っちゃたこと

カク あらら、ですな

ロバ でもね、そのことで私は一つの道筋が見えたのよ!というわけで!