海の切り立つ岩礁から
海岸線の鬼の洗濯岩も
立ち並ぶ恐竜石までが
山高ペンギンのテリトリーだったのだ


「 なんばーーーっ
頭上を越えて飛んで来た
動体視力は測らずとも
抜きん出てるは合点承知
その目が捉えた投げ輪が宙を舞い
「 ヴォロスっ
山高ペンギンを捕らえたっ
動きが止まった一瞬が起死回生の一瞬だった
グキャアアーーーッ
グェェーーーッ
グキャアーッ
跳び上がって振り下ろっす
「 ちえええっすとおおおおーーーっ
力の限りの大根斬りが留めを刺したっ
っ筈だった
「 ちえええっすとおおーーーっ
跳び上がって一刀両断っ
グワンッッッと跳弾みたいに跳ね返り
手応えなしの黒光り
「 せえぇっいいいーーーっ
グエェッグエェッギャギャアッ
三角頭を振り回し
頭を擦すった嘴重く
「 せえぇいいいっ
鈍く艶やかそのボディ
弾力強力硬質ゴムか
剣先まるで歯が立たずっ
「 なんばっにげろーーっ

動きが止まったのは一時っだった
グエェッギアャギアャギャッギャッ
下品な声で威嚇する
山高ペンギン紳士服
燕尾服は三つ揃え
橙色の蝶ネクタイ
三角頭振り立てて
睨む黒目にアイシャドウ
翼の自由は奪っても
山高ペンギン動きは止まず
怪力自慢のヴォロスでも
人の腕力微弱に過ぎた
グギャアッ
ずるずるずると引き摺られ
暴れるペンギンっペンギンモドキっ
堪えるヴォロス引き摺られ
暴れるペンギンっペンギンモドキっ
耐えるヴォロス引き摺られ
迫るペンギン山高ペンギンっっ
捕らえた筈の鋼の綱が
ギシギシギシと締め付けるっ
がっ
ヤツの自由は奪えない
逆に
引き摺られ
引き付けられ
堪えるヴォロス引き摺られ
暴れるペンギンっ山高ペンギンっ
耐えるヴォロス引き摺られ
迫るペンギンっペンギンモドキっ
迫る迫る迫るるるるるーーーーっ
「 ヴォロスっ離せっ
手を離さなければ
ミイラ取りがミイラになって
単に犠牲が増えるだけ
「 逃げろおおーーっ
ギャアギャア騒ぐ山高ペンギン後にして
逃げた判断
拾った命
えいっくそっ
ペンギンモドキめっ
逃げたん違ゃうぞ
一時撤退やっ
今は
「 こんくらいにしといたるうぅっ

彼等はテリトリー守っただけだった
それ以上は追って来なかった
「 やっぱり紳士かっ
ギャアギャア騒ぐ山高ペンギンに見送られ
並んで走るヴォロスとオレ
「 えぇかっ二度と手ぇ出すな
これが上陸一班組やったらのお
「 旨くてもなっ
ヤマト刀の達人ナキハも居たし
ヤマト槍の師匠オリベも居たし
ヤマト弓百発百中カタリも居た
もう勝手は許さん
旅の責任者として言うべき時は言わなあかんっ
「 それと組分けはオレが決めるっ


山高ペンギンが放った白濁噴射水で
負った火傷に例の薬草ブチュを塗ってくれる
ウパネを眺めるウダダを見てから
トバリとトアリが
声を合わせて
「 にやついとるのおぅなんば
どうやら爺さん達は
暇潰しのネタにオレをからかうと決めた様だ
「 アホかっそんなん違ゃうわっ

海岸沿いに移動する
目指すは新たな上陸地点
何処まで行けばたどり着く
我が名は難波成行
異世界にて記す者