【AWS基礎】Amazon VPCについて学ぶ② | 若手エンジニアのブログ

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前回記事では、AWSのVPCについて概要を書きましたが、

今回はVPCの外部通信について、どういった種類のAWSサービス内容があるのか、ざっと見ていきます。

 

前回の記事はこちら。

 

 

もくじ

1.VPCで通信を行うための各種コンポーネント・サービス

2.VPC間の通信

 ・VPCピアリング

3.インターネットとの通信

 ・インターネットゲートウェイ

 ・下り専用インターネットゲートウェイ

4.オンプレミス環境との通信

 ・AWS VPN

 ・AWS Direct Connect

5.プライベートサブネットからの通信

 ・NATゲートウェイ

6.VPCとAWS内の各種サービスとの通信

 ・AWS PrivateLinkとVPCエンドポイント

7.トランジットゲートウェイ

参考文献

 

1.VPCで通信を行うための各種コンポーネント・サービス

Amazon VPC単体は、閉じたネットワークである。

そのため、インターネット通信接続はもちろん、VPC同士の通信やオンプレミス環境への専用接続等を実現したい場合、それぞれ必要なコンポーネントの設置・サービス利用が必要である。

 

AWSの主な通信コンポーネント・サービスは以下の通りである。

 

コンポーネント・サービス 用途・説明
VPC Peering
(VPCピアリング)
2つのVPC間の通信
Internet Gateway
(インターネットゲートウェイ)
インターネットとの相互通信
Egress-Only Internet Gateway
(下り専用インターネットゲートウェイ)
インターネットへのアウトバンド通信(IPv6のみサポート)
AWS VPN VPCとオンプレミス環境のVPN通信
AWS Direct Connect VPCとオンプレミス環境の物理専用線による通信
NAT Gateway
(NATゲートウェイ)
プライベートサブネットとパブリックサブネットの通信
AWS PrivateLink、VPCエンドポイント VPCとAWS内の各種サービスとの通信
Transit Gateway
(トランジットゲートウェイ)
各種接続の中央ハブ(接続設定の集約管理機能)

 

以降、本記事では、VPCの各種通信方法について簡単に紹介する。

 

 

2.VPC間の通信

AWSでは、独立した2つのVPC同士の接続が可能である。

VPC同士の接続には、VPCピアリング機能を利用する。

 

◎VPCピアリング

VPCピアリングでは、2つの独立したAmazon VPC間で、プライベートな通信を行える。

 

※図はAWS公式ドキュメントより引用

 

VPCピアリングの特徴は以下の通り。

 ・IPv4通信、IPv6通信の双方に対応

 ・VPC間で相互接続が可能

 ・VPCは異なるリージョンに存在していてもよい

 ・AWSの別アカウントのVPCとも接続できる

 

VPCピアリングの使用料は以下の通り。

 ・VPCピアリング接続の確立自体は無料

 ・VPCピアリング接続間のデータ転送には料金がかかる

 

 

3.インターネットとの通信

AWSでは、VPCとインターネットの通信接続も、もちろんサポートされている。

パブリックサブネット内のリソースとインターネットとの直接通信、

NATを介してプライベートサブネット内のリソースとインターネットとの間接的な通信が可能である。

 

◎インターネットゲートウェイ

インターネットゲートウェイは、パブリックサブネット内のリソースとインターネットとの通信に用いる。

ただしインターネット通信の前提として、パブリックサブネット内に、

グローバルIP(パブリックIP)を付与されたリソース(EC2インスタンス等)が必要である。

 

インターネットゲートウェイの主な特徴は以下の通り。

 ・IPv4通信、IPv6通信の双方に対応

 ・デフォルトでインバウンド通信、アウトバンド通信の双方向可

 

なお、インターネットゲートウェイの作成は無料である。

 

 

◎下り専用インターネットゲートウェイ

下り線用インターネットゲートウェイ(Egress-Only Internet Gateway)は、

名前の通り、インターネットとの下り専用通信に用いる。

 

下り線用インターネットゲートウェイの主な特徴は以下の通り。

 ・IPv6のみサポート

 ・インターネット→インスタンス方向の通信は開始できない

 

 

4.オンプレミス環境との通信

◎AWS VPN

AWS VPN(Virtural Private Network)とは、インターネット経由のVPNにより、

AWS環境と他のネットワーク(オンプレミス環境等)を、仮想的な専用線で接続するサービスである。

 

VPNとは、オープンな公共回線(ここではインターネット)において、
暗号化したデータをやりとりすることで、あたかも専用線で通信している状態を実現する技術である。
AWSに限らず、広く一般的に利用されている。

 

AWSでもVPNの技術を用いて、AWS環境とオンプレミス環境等、

特定のネットワークとの通信を、仮想的な専用線で行えるようになっている。

 

VPNの良いところは、VPN対応のルータ(※)さえあれば、安価で簡単に仮想の専用線を実現できる点にある。

ただし、インターネット経由の接続になるため、
速度や安定性がインターネットの状態に左右されるのが難点である。

(※)オンプレミス環境側に置くルータは、AWS用語では「カスタマーゲートウェイ」と呼ばれる。

 

仮想的に専用線を実現するAWS VPNに対し、物理的に(実際に)専用線を引き込むのが、次に説明するAWS Direct Connectである。

 

◎AWS Direct Connect

AWS Direct Connectとは、AWS環境とオンプレミス環境等を、

物理的な専用線(標準のイーサネット光ファイバケーブル)で接続するサービスである。

 

物理ケーブルでの接続となるため、設置作業は大掛かりで、時間的・金銭的コストがかかるデメリットがある。

一方で、メリットとして、専用線を用いるため、インターネットを経由せずに済み、ネットワークの安定・高速化が見込める。

 

AWSへのアクセスを有効にするためには、仮想インタフェースの作成が必要となる。

仮想インタフェースは、以下3つから、用途に応じて適切な種類を選択する。

仮想インタフェース 説明
プライベート仮想インタフェース Amazon VPCに接続する場合(プライベートIPアドレスを用いる)
パブリック仮想インタフェース AWSの全パブリックサービス(VPC非対応のサービス)に接続する場合(パブリック(グローバル)IPアドレスを用いる)
トランジット仮想インタフェース トランジットゲートウェイ(後述)にアクセスする場合

 

 

5.プライベートサブネットからの通信

ここまで紹介したVPCピアリング、インターネットとの通信、オンプレミス環境との通信は、

いずれもVPC内のパブリックサブネットとの通信手法である。

プライベートサブネットからは、外部へ直接通信できない。

 

そのため、プライベートサブネット内のインスタンスと、各種ネットワークとを接続したい場合、

NATゲートウェイをパブリックサブネットに設置し、通信を中継させる必要がある。

 

◎NATゲートウェイ

NATゲートウェイの主な特徴は以下の通り。

 ・IPv4通信、IPv6通信の双方に対応

 ・複数のアベイラビリティゾーン(AZ)内のリソースで、1つのNATゲートウェイの共有が可能。ただし信頼性観点から、AZ毎のNATゲートウェイ設置が推奨される

 ・接続タイプはパブリック(デフォルト)、プライベートの2種類

 

接続タイプ 接続対象
パブリックタイプ インターネット(アウトバンドのみ可)
プライベートタイプ 他のVPCまたはオンプレミス環境

 

NATゲートウェイの使用料は以下課金額の合算となる。

 ・設置時間に応じて課金

 ・処理データ1GB毎に課金

 

 

ここまで紹介してきた通り、VPCと、VPC外で通信する場合は、

通常はインターネットやAWS Direct Connect、AWS VPNなどを経由する必要がある。

 

しかし、AWSには、VPCに対応しているサービス(EC2等)と、対応していないサービス(S3等)が存在する。

AWS内の、VPCと、VPC非対応のサービスとが通信するために、
わざわざインターネットやAWS Direct Connect、AWS VPNを利用するのは手間である。

 

そこで例外的に、VPCと、VPC非対応のサービスの通信においては、

AWS PrivateLinkというサービスを利用することができる。

 

◎AWS PrivateLinkとVPCエンドポイント

AWS PrivateLinkは、名前の通りプライベートな通信線である。

AWS PrivateLinkを用いることで、VPCと、AWS内のVPC非対応サービス間での通信を実現できる。

 

AWS PrivateLinkのサービスを利用するためには、「VPC エンドポイント」というコンポーネントを、VPC内に設置する必要がある。

VPCエンドポイントはプライベートIPアドレスを持ち、VPCと、VPC非対応のAWSサービスとを中継してくれる。

 

※図はAWS公式ドキュメントより引用

 

VPCエンドポイントの使用料は以下課金額の合算となる。

 ・設置時間に応じて課金(リージョンによって時間単位の課金額が異なる)

 ・月毎の処理データ量に応じて課金

 

 

7.トランジットゲートウェイ

トランジットゲートウェイは、VPCやオンプレミスネットワークを1つに取りまとめ、たがいに接続する接続点を提供するサービスである。

 

本記事で紹介してきた様々なゲートウェイやネットワークサービスについて、

数が多くなってくると、個々に作成して管理するのは非常に煩雑である。

トランジットゲートウェイを用いれば、複数のネットワークを統合的に管理できるようになる。

 

トランジットゲートウェイの使用料は以下課金額の合算となる。

 ・時間毎の接続数に応じて課金

 ・通信データ量に応じて課金

 

 

参考文献

本記事は、前回記事に引き続き、以下の2冊と、AWS公式ドキュメントを参考にしています。

どちらも基本を学ぶ上でお勧めなので、これからAWSを学ぼうという方はぜひ!(*^^*)

 

図解即戦力 Amazon Web Servicesのしくみと技術がこれ1冊でしっかりわかる教科書

図解即戦力 Amazon Web Servicesのしくみと技術がこれ1冊でしっかりわかる教科書

(小笠原種高著/技術評論社出版/2019年)

 

 

AWSの基本・仕組み・重要用語が全部わかる教科書 (見るだけ図解)

 

AWSの基本・仕組み・重要用語が全部わかる教科書 (見るだけ図解)

(川畑光平、菊地貴彰、真中俊輝著/SB Creative出版/2022年)

 

 

今回は以上!

 

次回はAmazon VPCシリーズ最終として、ACLやセキュリティまわりについて書く予定です。