「だからこれは違くて!!!!」

理「なにが?何が違うの?後輩と2人、密室で、抱き合って、何??浮気以外の何物でもないでしょ」

「…はぁ、もういいよ、浮気だって思うなら勝手に思えばいいじゃん。ひかる、行くよ。」

森「えっ…で、でも、」

「いいから。おいで。」

事の発端はひかるの相談に乗ったことだった。
先輩として、後輩の悩みを聞くのは当たり前だし別室で二人きりになるのだって理解出来るでしょ。
それで、悩みを話してるうちに泣いてしまった後輩を慰めるため抱きしめる、それだってやましいことじゃない。

ただその場面を見た人が悪かったんだ。
たまたま理佐が休憩で、私たちがいた部屋を使おうとした。
ドアを開けたら私の肩に顔を埋めるひかるとそんな後輩の頭を撫でている私がいた。

ただそれだけ。
なのに理佐は私の話なんか聞いてくれなかった。

低く、冷たい声で、"何してんの?"
理由を説明したらわかってくれると信じていた。
それなのに浮気の一点張りで私の意見なんか1ミリも頭に入れてくれない。

それだったらもういい。
理佐の私への信用はそれくらいだったってことだろう。

ひかるの手を引っ張り楽屋に戻る。

-楽屋-

森「由依さん、ごめんなさい私のせいで、」

「いいよ、気にしないで。ソファー行こっか。」

幸いにも部屋の一角にあるソファーに座ってるメンバーは居らずひかるとふたりで腰を下ろす。

森「でも、理佐さん怒ってましたよね、」

「ん〜、でもさぁ、私の意見聞いてくれない理佐も悪いし。」

森「…私やっぱ理佐さんところにいってきます」

「いいよ、逆に悪化するだろうし、ほらよく言うじゃん。火に油を注ぐ的な。」

森「じゃあ、由依さんたちは、」

「別れるかもねぇ。」

森「そんな、なんでそんなに冷静でいられるんですか。

「信じきってたんだよね、理佐を。理佐なら話聞いてくれるって、正当な理由だって判断してくれるって勝手に信じて期待してたからそれが崩れてなんか客観的に考えられてるって言うか。」

森「…」

「2年付き合ってようが壊れる時は一瞬なのかもね。」

森「そんなの、だめです、やっぱり行ってきます。」

「ひかる、いいから。これは私と理佐の問題だから。ね?」

森「でも…」

「ただでさえ今頭ん中パンクしそうなくらい悩んでんだから問題追加させないの」

森「っ…何も出来なくて、ごめんなさい、」

「いいんだよ、後輩は先輩に甘えてれば。それが仕事だから。」

森「はい…。」
しゅんとしてしまった後輩の頭を軽く撫でこれからどうしようと考えている時楽屋にキャプテンの声が響いた。

菅「誰か〜理佐知らない〜?」

田「分からないです〜…」

尾「私もわかんない。ゆいぽんは?しらない?」

「あー、A22室にいたと思うよー」

菅「ごめん、ゆいぽん、呼びに行ってもらってもいいかな??」

そりゃ状況を知らないメンバーからすればいつものように恋人である私が行くのが当たり前である。

でも今はなぁ、ぶっちゃけ理佐話したくないしなぁ。

まぁ仕方ない、迷惑かける訳にも行かないし。行くか。

「ん、行ってくるね〜」

菅「ありがとう、ごめんね〜」




コンコン

「入るよー」

ガチャ

理「…なに。」

「ゆっかーが呼んでる。」

理「分かった。」

「…なんでそっぽ向いてんの」

理「別に由依には関係ないでしょ。」

「そ、理佐がそう言うならそうなのかもね。」
「じゃ、私は呼びに来ただけだから、早く来てね。」

ソファーの上で膝を抱え腕に顎を乗せていた理佐の目は赤かった。鼻も赤かった。

いつまで意地張ってるつもりなんだ私は。
例えいかがわしい気持ちがなくても恋人のいないところで他の子と抱き合うなんて嫌に決まってるじゃないか。

なのに理佐だって抱きついてんじゃん、なんて想いが邪魔をして、自分を正当化して、1番大切にしなきゃ行けない人を傷付けて、私は何をしてるんだろう。

閉めかけていたドアを開き部屋の中に入る。

ガチャ

「理佐」

理「…なに、早くいきなよ。」

「ごめん。」

「ひかるちゃんと浮気しててごめん?ひかるちゃんが好きだから、別れて欲しいのごめん?どれ?」

「傷付けてごめん。意地張ってごめん。理佐のこと、大切にしなくてごめん。」

理「…今更罪滅ぼし?」

「そう聞こえちゃうかもだけど、聞いて欲しい。」
「ひかるとは何も無い。ただ相談を受けてただけ、それで話してるうちに泣いちゃったひかるを慰めようとしてつい抱きしめちゃったって言うか。」

理「…」

「だから、やましい気持ちとかは一切ないよ。」
「あの時すぐ謝れなかったのは理佐なら話聞いてくれるって信じてた。正当な理由なんだなって思ってくれるって勝手に思ってて、今考えたら自分勝手だね、ごめん。」

理「…っ」

「理佐の泣き顔見てやっと気づいた。私が間違ってたって、恋人を傷つけてからじゃなきゃ気づけないダメな私でごめん。」

理「由依だけが、悪い訳じゃない、由依の言う通り、私も話聞くべきだった。ごめん、」

「理佐は悪くないよ、私が理佐の立場でもきっと同じことするもん。」

理「…ひかるちゃん、可愛いし最近仲良いしその不安になってて、それであんな場面に遭遇しちゃったからもう頭の中がいっぱいになっちゃって、ごめんね。」

「んーん、私がごめん。」
「もし良かったら仲直りしてくれないかな。」

理「仲直りする。したい。」

「ふふ、良かった。じゃあ、握手、しよ?」

理「ん、」

すっと差し出された私の大好きな手をぎゅっと握る。

「仲直り、OK〜」

理「ん〜、由依が来てくれなくて寂しかった。」

「ごめんごめん、おいで理佐。」

理「ん!!!!」

「わ、ん〜、理佐だ。」

理「由依の理佐だよ。」

「私も理佐の由依だよ。」

理「ひかるちゃんにも、誰にも渡さない。私だけの由依。

「ふふ、そくばっきーなこと言うじゃん。」

理「知らなかったの?私すっごい束縛するよ」

「知ってるよ笑2年付き合ってるんだよ?」

理「ふふ、そうだね。」

「実は朝が苦手なことも、見かけによらずメンヘラちゃんなところも、私のことが大好きなところも全部知ってるよ。」

理「じゃあ今なんて考えてるかわかる?」

「ん〜、ちゅーしたいなぁとか?」

理「ふふ、それは由依でしょ?笑」

「バレた?笑」

理「ばればれ。」

「で、本心は?」

理「手繋いで楽屋帰りたい。」

「ふふ、なにうちの彼女可愛すぎるんですけど。」
「ん、戻ろ理佐。」

理「うんっ。」

ぎゅっと力強く恋人繋ぎされた右手を見ながら緩む頬を抑える。

本当は冷静なんかじゃなかったんだと思う。
心の中ではすっごく焦っていた、それでも私のプライドが後輩の前で意地を張ってしまった。

ガチャ

菅「あ!理佐ー!わ、珍しい、2人がイチャイチャしてる〜」

「ん〜、まぁね、たまにはいいかなぁって、」

理「ふふ、そう、たまにはね〜」

心配そうにしていたひかると目が合う。
グッドサインをうかべれば嬉しそうに笑った。

ひかるも早く叶うといいね、悩みの種がさ。





森「良かった、仲直り出来たんや、」

田「りさぽんのふたり喧嘩してたん?」

森「うん、私のせいでね、」

田「えーひぃちゃん何したんー笑」

森「色々相談をしてたら話が展開してちゃった。」

田「ふーん、なんか悩みあるん?」

森「……うん、」

田「なにー?」

森「……ほ、ほのちゃんのことが、す、すき。」

田「……??ほのも好きやで?」

森「そういんやなくて!!」

田「なに〜、夏鈴ちゃんの真似?笑」

森「あぁぁぁ…もう、違うよ〜、」

森田ひかるの悩み
ほのちゃんにアプローチしても気づいて貰えないこと。




「頑張れ、後輩よ。」

ちゃんちゃん