小「ひかる指名入ったよー」

「はーい、今行きまーす。」
女性専用キャバクラsakura、NO.1の森田ひかるです。

沢山のお姉さんが私を指名して、お酒を入れて、一緒に盛り上がる。アフターに入ることも多々あるけどそれなりに楽してお金を稼げてると思う所存です。

私を指名するほとんどの人は私にリアコらしい。
そのお陰でいいことも悪いことも沢山あったり。

小「初回さんだから掴みなねー」

「任せといて社長!」

小「ほら行った行った。」

社長の由依さん。由依さん自体社長になる前はこの歌舞伎町でトップを飾ってた人。あ、普通のキャバクラでね。

尊敬しているし、由依さんだからこの仕事を続けられていると言っても過言ではない。

「おまたせしました。ひかるです。」

松「わ、写真よりも顔整ってんじゃん!!!ね、井上!」

井「イケメンだわ」

田「…」

3人組かぁ、誰もヘルプ着いてくれんのかな。

由依さんに目線でヘルプ着けて下さいと念を送り通じたのか助っ人として天ちゃんが来た。

まりなちゃん天ちゃんいのりちゃん私ほのちゃんの席順で座りとりあえず記念すべき1発目ってことで10万程のソウメイを入れてもらった。

「ありがとうございまーす、かんぱーい」

それなりにお酒も回り始めて天ちゃんやヘルプの夏鈴に3人を預け私は何度かほかの指名客の方の元へ席を外したりしていた。

けど気になる。
ほのです。と名乗った以来一言も喋らず笑顔も見せない彼女がとても気になる。こーゆうところ苦手なんかな。

「由依さん、VIPルーム空いてましたよね」

小「うん、空いてるよ。」

「あの子、連れ出してもよかですか?」

ほいとほのちゃんを指さし由依さんにお願いをする

小「んー、うん、いいよ。指名はもう入れないでもらっとくね」

「ありがとうございます!」

もう一度3人組の元へ行き天ちゃんたちに要件を伝えほのちゃんの隣に座る。

「ほのちゃん」

田「…?」

ソファーの上に置いてある手が少し震えている。
もしかしてずっと無理しとったんかな。

遠慮気味に手を重ね、少しだけほのちゃんの方に寄る。

「あ、怖がらんで、って言っても無理だよね。笑」
「私の勝手な考えだけど、こーゆう場所苦手?」

田「…」

コクコク

小さく首を縦に振ったほのちゃん。

「ちょっと抜けよっか。」

田「え?」

「私ほのちゃんと二人で話したい!!だめかな。」

田「だめ、やない、」

「ふふ、決まりやね。まりなちゃん達、ほのちゃんちょっと借りるね?」

松「んー??んー!!」

こりゃ意識もないし、天ちゃん達あとは頼んだ!!

「行こ、ほのちゃん。」

ぎゅっと繋いだ手を離さないよう階段を登りVIPルームに入る。

「はぁぁぁぁぁ…、つっかれたぁぁ」
「好きなとこ座って〜」

田「ありがとう、」

「ごめんね、すぐ連れ出せんくて、オレンジジュースで大丈夫?お酒が良ければ作るけど、」

田「あ、えっと、こーゆうのって、お酒頼んだ方がいいん、?」

「あ、ふふ、気にせんで、もう営業じゃなくて普通に私として接してるからお金も取らないし帰りたくなったらいつでも送ってくよ。」

田「え、そんなのいいん?NO.1なんやろ?ひかるちゃん」

「そんなの気にしなくていいんよ〜〜、ね?」

田「ありがとう、えっとじゃぁ、オレンジジュースお願いしてもええかな。」

「オレンジジュース一丁入りやしたー!ありがとうございまーすー。」

田「ふふ、なにそれ笑」

「ふふ、ノリのいい居酒屋さん。笑」
「はい、どーぞ。」

田「ありがとう。」

ほのちゃんの笑顔は柔らかいもので凄く可愛かった。

「帰りたくなったらいつでも言ってね、送ってくから。」

田「いいん?ありがとう、でもほんまにひぃちゃん大丈夫なん?利益とか、ほののせいで」

「そんなん気にせんでって言ったでしょ?それにNO.1になりたくてこの仕事続けてるわけでも死ぬほど金好き!とかでもないけん、こうやって人と話すのが好きで働いてるだけだから。

田「そっか」

「それにほのちゃんと二人で話したかったから。」

田「っ…ずるいな、そうやって営業してるんや。

「ふふ、まぁあながち間違いではない?笑」

田「罪深き女やな〜」

先程が嘘だったように2人になった途端沢山話してくれるほのちゃん。理由を聞けば大人数、騒がしいところが苦手なことを教えてくれた。

「教えてくれてありがとう。」

田「んーん、でも今度はちゃんと貢献しに来る。」

「無理せんでもよかよ、私はほのちゃんと話せてるだけで嬉しいから。」

田「ふふ、はいはい、笑」

「あー今流したでしょー!」

田「別に流してへん〜」

なんて楽しそうに笑うほのちゃんが可愛くて、もっと近づきたくなってしまった。

「ほのちゃん、こっちおいでよ!!もっと近くで話そう!!」

田「なに〜ベッドに誘うなんてひぃちゃん狼さんやな〜」

「ふふ、はいはい、ほらおいでっ!!

軽口を流しながら手を広げれば素直に腕の中に飛び込んでくる。

「ん〜ほのちゃんいい匂い」

田「ひぃちゃんはちょっと煙草臭い」

「すいませんね〜営業マンなもので〜」

田「ふふ、けど嫌いやない。」

私の膝の上に向かいあわせで座っているほのちゃん、
こんなん少しでも気を抜いてしまえば魔が差してしまう。

「…えーっと、何話そーかなー」

田「ひぃちゃん、」

「ん?」

熱っぽい目、ほんのり赤く染まる頬。
そっと髪を耳にかけてやれば嬉しそうに可愛く笑った。

田「すき。」

「…っ、急やね」

田「急やないで、ずっーと思ってた。」

「え?」

ドサッ

視界がくるりと回って、天井をバックに私を見つめてくるほのちゃん。


田「高校生の時、ほのひぃちゃんと同じクラスやってん」

「え?……え!?あのほのちゃん?!」

私の遥か遠い記憶から蘇ってきたのは眼鏡をして2つ結びのThe地味子!!って感じの子、けどよくよく思い出せば目の前にいる彼女の面影は十分にある。

田「やっと思い出してくれた、」
「ほのな、2年生のあの日ひぃちゃんがほのの事守ってくれた日からずっーとすきやってん、」

守ってくれた日?
いつの事だ、ていうか私ほのちゃんと関わりあったっけ。

田「2年生の夏休みの最後の日、ほの本当は屋上から飛び降りようとしててん、けどひぃちゃんがそんなとこにいると危ないよー、って、手差しのべてくれたやろ?」

「あぁ!!

あれ飛び降りようとしてたんだ、


田「その時からずっとひぃちゃんのことが好きやった。ほのだけのひぃちゃんにしたかった、」

「ほ、ほのちゃん?」

するりと伸びてきた腕は私の首にとどまった。

田「なぁ、ほのだけのひぃちゃんになってや、」

きゅぅぅぅと首が締め付けられる。

ドンドンドンドンドン

小「ひかる!!!ちょっ、なんであかないのこれ!!!」

田「…邪魔やな、折角ひぃちゃんと2人の時間やのに。」

まずい、ほのちゃんの目しっかり真剣だ、
このまま由依さんが鍵を開けてしまったら、どうなるんだ、

ガチャ

ドアが開こうとした瞬間ほのちゃんは近くにあった花瓶を手に取った。

まずい。

バンッ 

小「ひかる!!」

田「んっ…!!!」

ぎゅっと手を引っ張りほのちゃんの唇を奪う。
これしか私には正解なんてわからなかった。

小「っ…おっと、ごめん、」

「あ、由依さん、どーしました?」

小「え?あ、いや、そのごめん、そーゆうプレイだった?」
「監視カメラにさ、そのひかるの首絞めてる感じのが写ってたから、」

「あー、すいません、その私実はそーゆうの好きで、」

小「あ、ごめんごめん、すいません、失礼しました。」

そう言うと由依さんは素早くドアを閉めて居なくなった。

田「っ…なんで、ほのひぃちゃんのこと、」

「私のことが好きなら、私だけを見てよ。」

狂ってる人への対処法、
それはその人以上に狂うこと、

随分前に先輩の理佐さんに教えてもらった。
まさか役立つ時が来るとは思わなかったけど。

田「ひかるっ…」

「今度は、私の番。」

立ち位置を逆転させ、ほのちゃんの首に腕をかける。

きゅぅぅぅぅと締め付けて苦痛に歪ませたほのちゃんの表情をしっかりと見る。

「ふふ、可愛い。けど、今死んじゃったら勿体ないけん、トドメはまた今度にしてあげる。」

唇を重ねて私は乱れた服を治す。

さて、これからどうしようかな。




「狂ってこ、一緒に。」