土田先生「ほい今回もー森田、学年1位だよ。」
森「ありがとうござまーす。」
土田「田村惜しかったな、2位だ。」
「ありがとう、ございます。」
またや。またほのはあの子に勝てへんかった。
なんでなん、なんでほのはあの子に勝てへんの。
もっと、勉強しなきゃ。
テスト総合結果返しの時、いつもほのは2番目に呼ばれる。
1番目は決まってあの子。
森田ひかるちゃん、ガリ勉ちゃんでも、塾に通ってる訳でもないのにほのはあの子に勉強で勝てたことは無い。
「はぁぁ…」
またこの結果を見てお母さん達は怒るんやろうな。
"なんであと一人を抜かせへんの!!"
って、そんなんほのがいちばん知りたいわ。
なんでほのはあの子に勝てへんねん、
土田「でも森田の成績ならいいとこの大学行けるなー。」
そうやろうな、きっといい大学行って、いい会社就職して、安定した幸せを手に入れるんやろうな。
森「あー、私専門行くんで別にそんな学力必要ないです。」
「え?」
土田「田村もびっくり。え、お前専門行くのか?」
森「はい。」
土田「そりゃ、成績の無駄遣いだな。」
森「??なんでです?」
土田「いや、お前ほどの学力があれば東大も目指そうと思えば叶わぬ夢じゃないだろ。」
森「あー。私親が専門は頭悪い子が行くみたいな偏見持ってるんで、学力はその偏見を正すための理由っていうか。」
っ…ほのは、親を説得する理由に勉強してるような子に負けてるん、せめて、いい大学行きたいからとか言ってくれたら、
土田「ほー、すごいなーそれで学年一位取れるなんて。」
森「やりたいことやるための努力は嫌いじゃないので、」
そんな言葉を最後にホームルームが終わった。
同級生たちが減っていく教室。
鞄に教科書を詰めほのも帰ろうとした所だった。
森「あ、ほのちゃーん。」
「…森田さん、どないしたん?」
森「一緒に帰ろ〜。」
「あぁ、ええけど。」
初めてや、森田さんと一緒に帰ることも、森田さんから話しかけてくれたことも。
-帰り道-
森「ほのちゃんが載ってる雑誌見たよ。」
「え?あぁ、この前の?」
森「そうそう。凄いね、色んなモデルさんがいる中でほのちゃんが1番きらきらしとった。」
「っ…ありがとう。」
「でも、モデルは大学費用稼ぐためにしてるようなもんやから。」
自分で言ってて虚しくなる。
ほんとの気持ちさえ言えないほのはなんなんやろ。
森「そーそれ、ほんとなん?」
「え?」
森「いや、ていうか、ほのちゃんってなんで勉強してるの?」
「なんでって、いい大学入って、いい会社に就いて安定した収入得るためやろ。」
森「それはほのちゃんがしたいこと?」
「え?」
森「いや、なんかさ私ほのちゃんのことなんも知らないけど、ほのちゃん、勉強嫌いでしょ。」
「な、に言ってるん?嫌いやったら、2位なんて取れてへんよ。」
森「んー。なんて言うんだろ。勉強ってさなんのためにすると思う?」
「そんなん、いい大学に入ったり仕事に就いたりするためやないん?」
森「違うよ、役に立って初めて勉強した意味になるんだよ。」
「だから、ほのにとっていい大学に入れて、いい会社につけたらそれは役に立ったって言うんやない?」
森「んー、そりゃ、理屈上はそうだけど。私が言ってるのは理屈とか肩書きじゃなくて、中身の話。ぶっちゃけほのちゃんいい大学に入りたいなんて思ってなかでしょ。」
「え?」
思わず動揺してしまう。
ずっと隠してきたのに、話したことも片手で数えるくらいしかないような子にバレてたなんて。
森「ほんとはモデル、続けたいんじゃないの?」
「…お母さん達はいい大学に入っていい会社について安定した幸せを送ることを望んでる、やからモデルなんて不安定な仕事させてもらえる訳ないねん。」
森「お母さん達は今どうでもいい。私は、ほのちゃんの気持ちが知りたい。モデル、やりたいの?やりたくないの?」
「やりたい。やりたいに決まってるやん。」
森「なら、夢、叶えようよ。」
「だから、そんなん無理やって、大体お母さんもお父さんも大企業のお偉い立場やし、安定してないモデルの娘がいるなんて、お母さんたちのプライドが許さないよ、」
森「挑戦したと?お母さんたちにモデルになりたいってはなした??」
「それは、話してへん、けど。」
森「ならまずは話してみようよ。」
「1人が怖いなら私も一緒に行く。だから、夢への1歩踏み出してみよう?」
気づけばひぃちゃんと一緒にお家のリビングに座っていた。
(帰り道気づいたらひぃちゃん呼びに)
母「どうしたの、お友達来てるならお部屋で遊んだらいいじゃない。」
「…えっと、その、」
いざお母さんたちを前にすると考えていたことがどっかに飛んでいってしまう。
ぎゅっ
「っ…」
ほのの手に重ねるように手を置いてぎゅっと握ってくれたひぃちゃん。
「ほの、モデルになりたい。」
母「何言ってるの?」
「ずっと、お母さんたちに言われた通り勉強頑張って、いい大学に入れるようにって、でもほんまは、モデルになりたかってん」
母「モデルなんて、ダメに決まってるでしょ!!」
「っ…」
「でも、ほのバイトとして始めた読モもやっと褒めて貰えるようになってきて、この前やってまだ有名やない雑誌やけど表紙、飾れてん。」
母「だから何よ、モデルなんてね安定もしてなければいらないと思ったらすぐ切り離される世界やねん。」
父「俺も、モデルはおすすめ出来ない。いい大学に入っていい会社に就くのが1番ほのにとって幸せなことや、今はまだそれに気づけていないだけ。」
「っ…」
父「この話はもうこれで終わり。さ、友達と部屋に行きなさい。」
「……」
結局話したって無駄やった。
モデルなんてさせてもらえるわけなかった。
もういい、そう思って席を立とうとした。
けど、彼女の発言がほのの背中を支えてくれた。
森「まだ話、終わってないですよ。」
母「ごめんなさいね、これは私たち家族の話なの。」
森「家族だから、もっと話聞いてあげるべきなんじゃないんですか?」
父「何が言いたい。」
森「私、毎回、学年一位なんですよ。」
母「あなたが…」
森「けど別にいい大学入って、いい会社に就くのが幸せなんて私は思いません。私は、やりたいことがあります。だからそのために専門学校に行きます。」
父「そんな勿体ないこと、」
森「勿体ないって、何が勿体無いんですか?」
「私は親が専門は頭悪い子が行くところ、っていう偏見を持ってて、それを正すために勉強を頑張って学年一位っていう結果を理由として持ってるだけです。」
森「私は、自分のやりたいことのために努力として勉強をしてます。誰のためでもない、私のために頑張ってるんです。」
「…」
森「けど、さっきのほのちゃんのお母さんたちの話聞いてると、いい大学入って、いい会社に就くのが幸せだってほのちゃんを洗脳して自分たちに恥がないようにしむけてるだけにしか聞こえないんですよ。」
母「何言って…」
森「だってそうでしょ。自分の娘がモデルで、しかも売れてない。なんてそんなのあなた達のプライドは許せないでしょ?」
父「っ…」
森「けどそれってプライドをほのちゃんに押し付けてるじゃないですか?親が子の幸せを望むのは当たり前です。けど、あなたたちのやってる事は幸せを押し付けてるだけ、ほのちゃんの幸せをなんっも分かってない。」
母「あなたさっきから何言ってるの!!!!」
「私はほのの母親なのよ!!?娘のこといちばんわかってるに決まってるじゃない!!」
森「なら、ほのちゃんの気持ち、分かってよ。」
「自分の感情とか、プライドとか立場とか、そんなん捨てて、ほのちゃんの母親っていう肩書きだけ持って、ほのちゃんのこと、ちゃんと見てあげてください。」
母「っ…」
父「お前が、ほのが1番したいことはなんだ?」
「っ…モデルになりたい。お母さんたちに否定されようと、努力が結ばれなくても、ほのはモデルになりたい。有名な雑誌の表紙飾れるくらい凄い人になりたい!」
母「…」
父「俺たちは、間違ってたのかもな。」
「ほの、モデルになりなさい。」
「っ…」
母「あなた!」
父「娘の幸せを願うのが俺たちの役目だ、ほのの幸せを俺達が決めることは許されてないんだよ、」
母「っ…」
父「ひかるちゃん、大切なことに気づかせてくれて本当にありがとう。」
母「声を上げてしまってごめんなさい。」
父「ほの、今まで辛かっただろう。気づけなくて申し訳なかった。」
「っ…これからもきっと沢山迷惑かけちゃうと思う、けどほの頑張るから、やからこれからもよろしくお願いします。」
森「ん〜〜ずっと座ってたら腰痛か〜〜。笑」
「ひぃちゃん、ほんまにありがとう。」
森「ん?別に私なんもしてないよー。」
「ひぃちゃんが背中押してくれたから、頑張れた。」
森「そんな大袈裟な、ふふ、じゃあここでいいから、また明日学校でね。送ってくれてありがとう」
「あ、うん、あ、あのさ!!」
森「んー?」
「ひぃちゃんのやりたいことって、なんなん、?」
森「んー、ふふ、それはねー、」
森「ん、その表情よかよ!!可愛いね。」
カシャ カシャ
森「照明もうちょい明るくして貰ってもいいですか?」
「ありがとうございまーす。」
カシャ カシャ
森「確認入りまーす」
「理佐さん、どうですか?」
理「うん、いい感じ!!可愛いよ。」
森「ありがとうございますっ。」
「ほのちゃん、今日もすっごい可愛い。」
「ふふ、ありがとう。けどまさかひぃちゃんがほの専属のカメラマンになる日が来るなんてな〜」
森「その話何回目。笑」
「やりたいことやれる人生って最強やね。」
「うんっ、あの日勇気出して良かった。勇気出させてくれてありがとな。」
森「はいはい、次のカット行くよー。」
「ふふ、はーい。」