夏鈴と話し始めて早1ヶ月。


それなりに話すようにもなったし、少しづつ笑顔も見せてくれるようになった。


「夏鈴〜」


藤「ひかるおはよう。」


「おはよ〜。」


藤「なぁずっと思ってたんやけどさ」


「ん?」


藤「なんでそんな作り笑いしてるん?」


……え。なんでそんなすんとした顔で、とんでもない発言を。


「え、ええ!?なんのこと、?」


藤「わかりやすすぎやろ。」
「他の子に向けてる笑顔と田村さんに向けてる笑顔、ちゃうやろ?」


「夏鈴にはなんでもお見通しって訳か〜〜笑」


藤「ふふ、せやで。」
「ひかるのことならなんでもわかるからなぁ。」


「っ…」


"ひかるのことなんでもわかる"


それが何故だか凄く嬉しくて、
私の深いところまでしっかり見てくれてる気がして更に夏鈴へのすきが増した。


「私も、夏鈴のことならなんでも分かるよ」


藤「ふふ、どうやろな〜。」


「わかるもーん。ふふ、」


藤「はいはい。」


理「夏鈴ちゃーん。ちょっといいー?」


藤「理佐さん!!!ちょっとまってくださいねえ」
「ひかる、また後でな!」


「うん、」


現れた。私の天敵。渡邉理佐。
その名前は知らないほど有名で、モテモテな理佐さん。


何故かその理佐さんと夏鈴は仲がいい。
理佐さんは夏鈴を溺愛していて、そんな理佐さんに夏鈴はすごく懐いている。


理佐さんの姿が見えた瞬間にこにこと嬉しそうに可愛らしい笑顔をうかべる夏鈴を傍で見るのはなかなかに辛い。


田「理佐さんに取られたやん〜」


「と、取られてないし。」


田「ふふ、やきもち妬いたん?」


「…少しだけ。」


田「2人について行ってみれば??」


「え、?」

 
田「ここ一、二週間のもやもやの原因がなんか分かるかもよ?」


「…ほのちゃんも一緒にきて!!」


田「しゃーないなぁ。」


「ありがとう!!」


遠くの方に見える2人の後ろ姿にバレないようこっそりと着いていく。


2人が向かった先は屋上、?
あれ、屋上なんて空いてたっけ。


田「屋上空いてんねや、初めて知った。」


「私も初めて知った。


きぃぃと少し重い扉を開ければひゅーんと風が吹き目を閉じそうになる。
だけど目を閉じることはなく、その代わりにしっかりと、風が吹く中抱き合い顔を近づけている2人の姿が見えた。
これからちゅーでもするのだろうか。
そこの2人付き合ってたなんて知らなかったな。


「…、」


田「ひぃちゃん、」


「帰ろう、ほのちゃん。」


田「…せやな、」


開けた時より重く感じる扉を引き早足で階段を降りて宛もなく走り出した。


「っ…はぁはぁ、」


たどり着いたのは私が初めて夏鈴に出会った桜の木の下だった。


田「はぁはぁ…ひぃちゃん、」


「ほのちゃん、私ここで初めて夏鈴に会ったんだ」


田「うん。」


「桜の木を眺めてる夏鈴に一目惚れしたの。」


田「うん。」


「辛いことがあった時も、疲れた時も、ここに来れば必ず夏鈴が居たんだ。」


田「うん、」


「私、夏鈴の事が好き。」


田「うん、」


「夏鈴の事が、好きだったの、」


田「ひかる、おいで。」


ぱっと手を広げたほのちゃんの腕の中に飛び込んだらもう、我慢していたものは歯止めが効かないくらい溢れ出して、
夏鈴への思いも全部が、溢れ出してしまった。


田「今日寒いやんな〜。こうやってくっついてれば暖かいな!ひぃちゃんサイズ感ばっちしでほんま助かったわぁ。」
「てか風うるさいなぁ!!!ひぃちゃんの声がなんも聞こえないやん。」


……人前で泣くのが嫌いな私をほのちゃんの精一杯でフォローしてくれてるのがわかって更に目頭が熱くなる。


ほんとにいい友達、持ったな。


-続く-