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プリパラ夢!! ~二次創作~

プリパラの二次創作小説を書く。更新は、毎週月曜日くらいにしていきたいと思っている。思っているだけ。

※このブログには、二次創作、オリジナル設定、キャラクターなどが登場します。

 いいね。いいね。いいね。いいね……

「だはぁ……緊張したぁ」

「中々やるじゃない」

 初ライブを終了し、ステージを降りる。にいながいるとは言え、無名アイドル。ランクは上がらなかったが、自分でも予想以上の評価を受けた。

 おそらく、大半はにいなのおかげだが。

「ありが――」

 にいなにお礼を言おうとしたら、それを遮るようににいなと雨宮の間にぬいぐるみが割って入った。

「いいねの数、ダイガンね、大岩ね、多いわねぇ!!」

 白い体毛に頭に赤いとさか。鶏だ。

「な、なんだ? 鶏?」

「あたしは、フォロ・ル・ガトー・ボン・ボヤージュ・ガルー・ザ・ポルシェ二世。通称ニワだにわよ」

「スカウトマスコットね」

「あんたら二人、フェイバリットにわ!! 気に入ったわぁ。あたしのもとで、ゴッドアイドル、目指さないにわ?」

 雨宮とにいなは互いに顔を見合わせる。

   ☆

 初ライブをし、なんやかんやでマスコットがつき、アイドルとして順調な第一歩を踏み出した。

 そんなアイドルの日常は、男。雨宮はぼんやり廊下を歩いていると、どこからか聞き覚えのある冷たい声が聞こえる。南みれぃ風紀委員長の声だ。

「受け取れったら受け取りなさい!!」

「委員長の行動など、十手先まで丸見えだ!!」

 廊下の真ん中で、委員長と、ドレッシングパフェの東堂シオンが睨み合っていた。

 一体何をしているのだろうか。委員長の手には違反チケットが握られ、東堂シオンの手には囲碁の参考書がもたれている。どうやら、東堂が違反指導に従わなかったようだ。

「どうかしら……えぇい!!」

 委員長が強制的に違反チケットを受け取らせようと、素早く動き東堂へ向かう。

 その瞬間、東堂はカッと目を見開き、手をさっと動かす。その動き、目にもとまらぬ速さで、なにが起こったのか、遠めの雨宮には見切れなかった。

「見切った!!」

「なっ!?」

 委員長が動きを止めると、その額に東堂へ渡すはずのチケットが貼られていた。

「パプリカ学園校則第84条、廊下は壁に沿って右側を歩くこと!!」と東堂。

 言われた委員長は、額にチケットを残したまま、自分の足元を見る。そこは、廊下の真ん中、左右を仕切るラインの上だった。

 それを知った委員長は絶望の表情を浮かべ、その場に崩れ落ちる。

「委員長が違反してどうする」

「自分で自分の違反を取り締まることになるとは……」

 四つん這いになる委員長。クソ、後ろ側に回ることができれば……見えるのにッ!!

 委員長のパンティはなに色なのだろうか。きっと、清潔感あふれる白だろう。などと考えていると、委員長が立ちあがっていた。何やら話しが展開したようだ。

「私達そんな簡単に倒せる相手じゃないわよ」

 何の話だろう?

「ドレッシングパフェの勝利に二言は無い!!」

「理論的にソラミスマイルの勝利よ!!」

 ソラミスマイル!! 委員長の口から出たその単語。それを聞いて確信した。

 ソラミスマイルのみれぃは、委員長だ。

 結局、東堂シオンの指導が出来ないまま、委員長と東堂は別れた。仕方ない。

 委員長と分かれ一人になった東堂に近づき声をかける。

「東堂シオンさん」

「む、何だ貴様」

「あ、あの……これ、受け取ってください!!」

 チケットを裏返し、東堂シオンに押し付ける。

「なんだ、こ……れ……チケットじゃないか!!」

「プリパラ学園校則第61条、本を読みながらの歩行禁止、です」

「貴様も委員長の差し金か……ッ!!」

 違反は違反。

   ☆

 昼休み。雨宮は弁当を忘れたため購買に向かう。

 しかし、そこにはいつもより多くの人が集まっていた。それも、一年C組が多い。その人だかりを掻き分けて、前に出る。

「おばちゃん、アンパン……って売りきれ」

 普段は多くのパンが並んでいるのだが、今回はその殆どが売りきれ、または売り切れ寸前だ。

 メロンパンなどの、甘類が少ない。これは、選り好みしている場合ではないと判断し、余っているパンを適当に示し、購買のおばちゃんに頼み購入する。

「毎度あり」

 パンの入った紙袋を抱えて人ごみを出る。そして、紙袋の中身を覗く。適当に選んだパンだ。何を買ったのかわからない。

 きな粉あげパン。きな粉苦手なんだけど。

 カレーパン。なんか潰れて中身飛び出してるんだけど。

 ナン。なるほど、これで中身をすくえと。
 
 茹でもやしサンド。ん? なにこれ。

 これで、千円近く……。くそっ、勿体ない!!

「はぁ……結局茹でもやしサンドしか買えなかった」

 と、そこへ委員長がため息をつきながら通りかかる。

「あれ、委員長。きょ――」

「私の読み通り!!」

 声を掛けようとしたのだが、それを遮るように東堂シオンが姿を見せた。

「委員長、お気に入りのパンを買えない作戦は、成功を収めたようだな。説明しよう!!」

 東堂シオンがポケットから落語の本を取りだし、作戦の内容を語り始めた。

 言うにはこうだ。

 本をクラスメイトに読ませる→面白い→授業中に思い出し笑い→授業中断→罰でダッシュ→疲労&空腹→糖分欲する→売り切れ

「どうだ、私の先読み力に屈服したか?」

「別に? 私、茹でもやしサンド好きなの。残念だったわね。行くわよ雨宮」

「え、あ、はい」

 気付いてたんだ。気付いていて無視してたのか。

「委員長。どうして東堂シオンと張り合っているんですか?」

「以前、廊下で指導したことがあったでしょう? それを逆恨みしているらしいのよ」

「あー。なるほど」

「それより、中庭でお昼にしましょ。貴方には話しがあるわ」

 委員長に誘われ、中庭のベンチで昼食を取ることにした。

「先日は、強く言いすぎたわ。色々あってピリピリしていたの。ごめんなさい」

「いえっ、気にしないでください! 僕のためを思っての指導だと思いますし、自分も最近気が緩んでいました」

「実は、さっき自分で自分の違反を取り締まってしまったのよ」

「はぁ……」

 あの現場を見ていなければ、意味のわからない言葉だが、見ていたのでわかる。あえて言わないが。

 委員長は、それが大分ショックだったようで、普段より暗い表情をしている。そうだと思ったらふいに顔を上げて、レンズの中の瞳でこちらをじっと見つめる。

「これからも、共にこの学園の風紀を守っていきましょ」

「…………、はいっ!!」

 しばし見惚れて、返事をする。

 雨宮の返事を聞き、気が緩んだのか、委員長のお腹がぐぅっと鳴く。ハッと頬を赤らめて手でお腹を押さえる。

 そう言えば、茹でもやしサンドしか買えなかったって言っていたな。

「委員長、茹でもやしサンド一つじゃアレですし、僕のも食べます?」

 言って、自分の茹でもやしサンドを差し出す。

「……いらないわ」

「冗談ですよ。えーと、きな粉あげパンとか好きですか? 僕、きな粉苦手なのに買っちゃって、良ければ食べてくれませんか?」

「好きだけど、貰っちゃって良いの?」

「勿論。食べられないなら、誰かに食べてもらった方が良いし」

 袋に包まれたきな粉あげパンを差し出す。委員長は、ありがと、とお礼を言いながらそれを受け取ると、

「じゃぁ、お礼に私の茹でもやしサンドをあげるわ」とそれを差し出した。

「いえ、要りません」

 などと笑いながら、楽しく食事をした。

   ☆

 放課後、一目散へ公園へ向かいトイレに入ると、ササッと着替えてプリズムストンへ走った。あくまで女性らしく。

 プリチケをスキャンして、プリパラタウンへ入る。

「遅いわよ!!」

「悪い悪い。変装とかいろいろあるし」

「そのまま来ればいいでしょ!?」

「どうでも良いけど、今日はメイキングドラマを作るにわよ~」

「「了解」」

 メイキングドラマとは、アイドルが伝えたいことをドラマ風に伝える演技の一環である。そのステージでのハイライトであり、一番の見せ場である。

 三年前には、プリズムジャンプという演技が存在したが、プリパラシステム導入に伴い廃止となった。およそ三年間の歴史に幕を閉じたのだ。ちなみに、連続ジャンプをすると高得点になり、セインツのメンバーは10連続は飛んでいた。

 そして、その日行われた、ソラミスマイルとドレッシングパフェのライブ対決の番組を見ながら、にいなと共にメイキングドラマの構想をねる。

 その際中、ロングラッセのメンバーが差し入れにきたりした。その時に雨宮は挨拶と謝罪をした。なぜか、にいなレズ説が持ち上がっていたが……。

 そして、ライブ対決の結果が出た頃、

「よしっ!! 困難どうだ!!」

「ふむふむ……鏡に映る自分と本当の自分が違う、か。なるほど、面白そうじゃない」

「良いよぉ! 良い、良い! アヤピカだね、採光だね、最高だね!!」

 メイキングドラマが完成した。

「あ、と、は……じゃじゃーん!! 新曲、貰って来たにわよ!!」

「「おぉ~!!」」

 しかし、駆けだしのアイドルは新曲など高価なものは貰えず、課題曲を演奏するしかないのではないか?

 どうやって手に入れたんだ?

「あたし、上級スカウトマスコットだから」

「多分、それ自分で思ってるだけ」

「おだまり!!」

 さて、今回、ソラミスマイルとドレッシングパフェの対決は引き分けに終わったらしい。結成間もないドレッシングパフェが並べたんだ。自分達に出来ないわけがない。

「にいな。一緒に頑張ろう」


 つ・づ・け・ば・い・い・な
 ベッドに寝転がり、手にするプリチケを眺める。一体、なぜ自分の元へプリチケが届いたのか、わからない。

 しかし、これでプリパラワールドへ入れることは確かだ。入ってどうする? アイドルを目指すのか?

「あ~あ、どうしよ」

 自分がどうすればいいのか、またどうしたいのかわからない。正直、委員長の事は好きだ。それゆえに近づきたいが近づけない。並びたいが並べない。

 成績でも、委員会でも、クラスでも。全てにおいて、一歩引いて見つめることしかできない。

「……」

 プリチケを置き、ケータイの画面を見つめる。何のしゃれっ気もない待ち受け画面に時間だけが表示される。

 すると、突然画面が切り替わりピピピと音を立てて震え始めた。

「うわっ!?」

 画面にはメール着信ありの文字と、宛先:委員長の文字。

『先程は、ごめんなさい』

 ただそれだけの本文。でも、全て伝わった。

 ありがとうございますとメールを返信する。それと同時に、雨宮の中でなにかがぷちんと切れる音が聞こえた。

 続けて、にいなにメールを送る。

『明日、大事な話がしたい。時間を作ってほしい』

   ☆

 翌日。土曜日。午後。午前中はにいなが部活なので時間が作れなかったが、午後はフリーだというので、家の前で待ち合わせをしぶらぶらと街中を歩く。

「そ、それで? 大事な話ってなによ」

「あぁ、うん。なるべく人がいない場所へ行こう」

「う、うん」

 なんかいつもより気合の入った服装をし、頬を赤らめうつ向き気味のにいなを連れて、人気の無いカフェに入店する。

 昨日迷惑をかけてしまったので、雨宮が代金を支払い、ケーキをおごる。

「それで、本題なんだけど、コレを見てほしいんだ」

 雨宮はポケットから、自分の下に届いたプリチケを取り出し見せる。

「これって、プリチケ……?」

「幼馴染にこんなこと相談するの恥ずかしいんだけど、僕、委員長、昨日あった眼鏡のあの人に告白しようと思うんだ」

「え……」

 にいなの顔から表情が消える。

「でも僕は、彼女になに一つ並べてない」

 にいなはそうと小さく呟き、持っていたフォークを叩きつけるように、置く。

「そんなこと、アタシに相談するんじゃなくて一人で何とかすれば良いじゃない」

「僕は、弱いから……。キミに相談するしか道がいないんだ。聞いてほしい」

「……」

「なにか彼女に並べるモノは無いかと考えた結果、アイドルになろうと思うんだ」

「ハァ!?」

 にいなの口から呆れと驚きの声が漏れる。その所為で、イライラした気持ちが少し薄れる。

「僕は自分の本当の気持ちも箱にしまい、奥へ押し込んでいたのかもしれない。僕は、アイドルが好きだ。だからこそ、アイドルになりたかったのかも知れない」

「アンタ、なに言ってのよ……大体、今のプリパラに男性アイドルは居ないのよ?」

「プリパラワールドでは、自身の見た目を変えることが出来る。勿論、現実世界と変わらない人もいるけど、プリパラワールドは現実とは違うんだ」

「つまり?」

「女装する」

 ハァ、とため息をついて、置いたフォークを取りケーキを裂くにいな。

「アンタの言う委員長って、ソラミスマイルのみれぃでしょ? 彼女、デビュークラスの下よ。今から追いつくなんてほぼ無理だけど、それでも良いの?」

 ケーキを口に運びながら言う。口の中に広がる甘酸っぱいような味。

「僕は、アイドルを知ってる。研究生クラスの突破は容易いはずだ」

「本気なのね。彼女への思いも、アイドルになるって決意も」

「勿論」

 アルミ製のフォークを強く噛む。その所為か、歯が少し痛む。

「そこで、僕とユニットを組んで欲しい」

「えっ」

 予想外の頼みにフォークを噛む力が緩む。

「もしかして、大事な話って」

「そう。ユニットを組んでもらいたくて」

 にいなは悩む。フォークでケーキを弄び、口へ葬る。

「少し、考えさせて」

 何も残らない皿にフォークを置いて立ちあがる。

「御馳走さま、おいしかったわ」

 そう言い残すと、静かに店を出て行った。

   ☆

 雨宮が本気ならば応援したいし、協力したいとは思う。でもソレは、自分にとって利点がまったく無い。

 にいなは、店を出たその足でプリズムストンへ向かった。プリパスにはメール送信完了の文字。

 プリパラタウンへ入り、中央にそびえる高い建物の控室で一人待つ。しばらくするとそこに二人の女性がやってきた。

「おまたせー、話ってなにぃ?」

 彼女達は、にいなとユニットを組んでいるメンバーだ。チーム名は【ロングラッセ】

「アタシ、どうしたいのかな?」

「…………」

「何かあったの?」

 二人の内片方が、にいなの横へ座り、もう一人は正面で立ち話を聞く。

「実は――」

 にいなは、ユニットへ誘われた事、雨宮が好きで振り向いてもらうためにアイドルになった事、その好きな彼の恋愛を応援するために協力したいなど、私情事情を全て打ち明けた。

「だから、アタシ、ロングラッセをやめようかなって思っちゃったのよ。ホント、最低よね」

「ロングラッセの掟、第五条恋愛禁止!! 掟を破るようなやつ、ロングラッセにはいらない」

「えっ」

「悩んで迷っているならば、背を押し導くのが友達だよ」

「行きなよ。彼の事好きなんでしょ? だったら、ユニット組んで、アンタの魅力バンバンぶつけて惚れさせちゃえ!」

 二人は、ポンとにいなの背を叩いた。

「二人とも……」

「私達は、ずっとロングラッセだから。もしフラれて泣き戻ってきても良いように、にいなの場所ちゃんと取って置くから」

「あ、でも、あたし達だけで神アイドルになっちゃうかもねぇ~」

 目頭がジンと熱くなるのを感じた。かすれた声で、ありがとう、とお礼を言う。

   ☆

 日曜日。にいなに誘われてプリパラタウンへ向かうべく、まずはにいなの家で女装。男性姿でプリズムストンへ入る恥ずかしさは尋常じゃないことを、以前学んでいる。

「でも、一々こんなことしてあげるの面倒だから、今度からは自分でやりなさいよ」

「慣れたらね」

 化粧はほどほどに中学生らしく、身体のラインが目立たないような服を借りてウィッグを付ける。

 にいなはユニットを組むことを了承してくれたが、

「にいな、ありがとう。僕なんかの為にユニット組んでくれて」

「別に、幼馴染なんだし、そんなこと気にしなくていいわ」

 にいなはすでにユニットを組んでいた。それを知らずに頼んでしまったのだ。気付いたのは昨日の帰宅後、ネットでアイドル映像を探っている時に、ふと彼女の言ったユニット名を思い出し調べてみたのだ。

 そしたら、そのユニットの中央で歌っているのがにいなだったから驚いた。

「でも、ロングラッセのメンバーには」

「アンタから、謝罪すれば良いんじゃないかしら」

「そうするよ。今度紹介してよ」

 着替えを終えて、いざ出発。

 プリズムストンで赤井めが姉ぇにブランド【Dreaming Girl-ドリーミングガール-】を勧められ、おとぎ話の世界の様な衣装でプリパラタウンへ入る。

 勿論、顔つき髪型はこちらで指定した女性物になっている。

「こ、コレが……」

 プリパラタウン入口にある大鏡で自分の姿を見て驚く。本当に女性化している。コレもそれなりにあるし、アレは無くなっている。声も、女声に変わっている。

「見惚れてないで行くわよ。まずは、あのプリパラタワーでライブ受付をするの。スカウトマスコットが入れば楽なんだけど、今は自分でやるしかないわ」

「へー……おっ」

 にいなに導かれ中央広場を横断しタワーへ向かう途中、広場に二つの人だかりを見つける。その中心には、人気上昇中アイドルユニットのソラミスマイルと、ドレッシングパフェの姿があった。

「ドレッシングパフェって結成間もないのに、かなり人気よね」

「東堂シオン? 東堂シオン!?」

 ドレッシングパフェを二度見してしまう。なにせ、あの中学生囲碁チャンピオンの東堂シオンが堂々とファンと交流しているのだから、仕方ない。

「なに、知り合い?」

「同じ学校の生徒。囲碁のチャンピオンなんだけど、アイドルやってたんだ……」

 意外すぎて、茫然とする。

「さ、行くわよ」

「にいな、ちょっと待ってて」

 にいなを置いて、一人で人だかりの中へ突っ込む。その人だかりの中心にはソラミスマイルの姿。人を掻き分け、ソラミスマイルの、みれぃの前に出る。

「い。い、じゃなくて……みれぃさん!!」

「ぷり?」

「貴方を目標に、貴方に追いつき並べるアイドルを目指すので、待っていてください!!」

「……」

 その場がしんと静まり返る。そして、急に恥ずかしくなり耳まで熱を帯びる。

「ポップ、ステップ、げっちゅ~!! 目標にされるのは嬉しいぷりっ。ありがとうぷり♪」

 その笑顔に見惚れ、言葉を失い、コイのように口をパクパクさせる。そして、ハッと我に帰り逃げるようにその場を離れた。

「にいな、行こう!」

 待たせていたにいなの腕を取り、タワーへ向けて走る。

 雨宮の戦いはこれからだ!!

 つ・づ・く・よ
「私立パプリカ学園校則、第105条ゴミを投げ捨ててはいけない!! 通算2枚目の違反チケットよ!!」

 パチンと音を鳴らし、男子生徒の額に違反チケットを張りつける茶髪ポニーテイルのメガネ少女は、南みれぃ風紀委員長だ。

 その背中を後ろで見つめながら、雨宮は名簿に彼の名前と所属クラスを記入する。

「委員長、時間です。そろそろ戻らないと授業に遅れますよ」

「もうそうな時間? 今日は、あまり取り締まれなかったわね」

「では、続きは放課後に?」

「いえ、今日は放課後に用事があるの。悪いわね雨宮、集計頼んでおいて良いかしら」

「わかりました」

 今日の放課後は委員会活動が無いため、部活の無い者は速やかに下校する。委員長もなにやら用事があるそうだ。

 用事って何だろう。と考え始めたのは教室に入り席についてからだ。

 ソラミスマイルのポップ系女子、名をみれぃという。

 委員長の名前も、みれぃ。しかし、あのポップな彼女と真面目な委員長では、真逆と言っても過言ではないほどに、別人だ。

 それに、委員長があんな格好して「ぷりっ」などと言っている姿を想像できない。でも、だが、しかし、そこが良いッ!!

   ☆

 放課後、今日は委員会もなく、部にも所属していない雨宮は下校する他にすることはない。

 なので……、

「こ、ここは」

 委員長を尾行してみた。

「ここは、プリズムストン……」

 ここは、プリパラタウンに通じる、ゲート。つまり、この向こうには三年前はここにセインツも通っていたプリパラワールドが広がっているということだ。

 というか、委員長がプリズムストンに来たということは、やはり……。

 道路の向こう側に見えるプリズムストンを眺めながら、ポールの陰にしゃがみ隠れる。

「む、アレは……」

 見張っていると、そこに見慣れた御団子頭と赤毛のロングがやってくる。真中らぁらと北条そふぃだ。あの二人が、ソラミスマイルのらぁらとそふぃだとするなら、やはりみれぃは、南風紀委員長ということに。

「雨宮? アンタ、こんなとこでなにやってんの?」

「ゲッ、にいな、お前こそ部活はどうした、部活は!」

 突然背後から現れたにいな、幼馴染に驚き隠れていたことを忘れ大きな声を上げてしまう。

「今日は休みなのよ。そんなことより、また、アイドルの追っかけでもやってんの?」

 身を隠すためにしゃがんでいた雨宮は、スッと立ち上がり首を強く振り否定する。

「違うよ! ただ」

「ただ?」

「た、ただ……」

「はっきりしないわね。罰として、なんかおごりなさい」

 にいなに腕を引っ張られ道路を渡り、無理やりにプリズムストンへ入店させられる。
 
 そして、店内のカフェエリアでケーキをおごらされる。

「あ、あのさ、周り女子しかいないんだけど。店員含めて」

「ほら見なさい、なんかDJっぽい人がいるでしょ?」

「いや、あの勇者だけじゃん!!」

 羞恥心に負けないように大丈夫だと自分に言い聞かせながら、アイスコーヒーをストローで啜る。

 ていうか、

 ていうかこれ、

「ていうかこれ、なんかデートみたいじゃん」

「ぶふっ!?」

 口にケーキを含んでいたにいなが、手で口を押さえつけてむせ返る。

「な、なに言いだすのよ! んなわけないでしょ!?」

「いや、別ににいなとデートするのが恥ずかしいわけじゃないんだ」

「す、少しは照れるとかしても良いんじゃないかしら。なんか、負けた気がするし」

 なにに負けたのか考えながらコーヒーを一口、二口。すると、店内が騒がしくなる。

「ライブが始まったみたいね。今日は確か、ピンクアクトレスとソラミスマイルのライブが入ってたはずよ」

 店内の客の視線の殆どを奪う大型モニターには、ライブステージに立つ見慣れないアイドルユニットの姿が映し出されていた。

 あれは、おそらくピンクアクトレスだろう。ピンク髪のサイドポニー少女を中心に構成され、全体的にピンク色が強い。

「良かったわね、アンタの大好きなソラミスマイルが出るわよ」

「別に、大好きってわけじゃないよ」

「はいはい、どうせアンタの一番はセインツなんでしょ」

 確かに、アイドルの中で一番好きなのはセインツで間違いない。

 だが、先日聞いたソラミスマイルの歌、アレにも心を惹かれたことに間違いはない。

「ねぇ、にいな。男はプリパラタウンに入れないのかな?」

「さぁね。どちらにせよ、プリチケが届かないと入れないもの」

「だよね」

 苦笑いを浮かべてコーヒーの入ったグラスを突く。

 指についた水滴をストローを覆っていた袋で拭き、視線をモニターからテーブルに戻す。

「三年前、か」

「どうしたのよ急に」

「昔はさ、アイドルってもっと自由だった。学校では部活もあったし、まして禁止なんてされない」

「そりゃ、今と昔は全然違うもの」

 違う。そうだ。プリティーパラダイスシステム(通称プリパラ)を導入してから早三年。以前はプリティーリズムシステム(通称プリズム)だったのだが、プリパラとは異なり、プリズムはスケートとアイドルを掛けあわせた様なモノだった。

 プリズムは皆が自由で、楽しく演技をしていた。しかし、プリズム協会内でのゴタゴタが原因でシステムが停止した。

 そこで導入されたアイドルシステムがプリパラなのだが、どこでも演技が出来るのではなく、安全にプログラムされたプリパラワールドでのみ活動が許された、いわば規制の上に成り立つシステムなのだ。

 今のシステムがダメだという訳ではない。ただ、プリズムシステム時代からのアイドルであるセインツが三年前に引退した理由を思うと……。

「確かに、色々規制されるようになったけどさ、でも、それでも変わらないものはあると思うよ」

「変わったよ」

「ほら、見て」

 にいなが指さす方にはソラミスマイルが映し出されるモニター。そして、それを見て笑顔を浮かべる客達。

「見る者を笑顔にする、アイドルとしての輝きは変わらないと思うわ」

 ふわっと風が吹いた気がした。

 委員長は言っていた。『アイドルは皆を笑顔にする』と。

「ありがとう、にいな。キミは、僕なんかより、よっぽどアイドルの事を思ってた」

 忘れていたのかも知れない。クローゼットの奥にしまい込み、見ようともしなかったアイドルの中身。

 今も昔も、何も変わってはいなかった。アイドルは、

「僕、やっぱりアイドルが大好きだ」

 アイドルは、良い。

「……キッモ」

「えぇー……」

 えぇー……え? えー……

「冗談よ。それでこそ、ア、雨宮ね」

「なんで今詰まったの!? アイドルオタクとか言おうとしたでしょ!? だってカタカナだもん!! 〝ア〟がカタカナだったもん!!」

「さぁね」

 ふわっと笑うにいな。

 その笑顔に免じて、今日は許すとしよう。

 落ち着きを取り戻すために、コーヒーを勢いよく啜ると、後ろから、

「あら、雨宮? こんなところで、なにしているの?」と、聞き覚えのある鋭い声が聞こえた。

 恐る恐る振り返ると、黒縁眼鏡をきらりと光らせ、茶色の尻尾をふさっと揺らす、南みれぃ風委員長が立っていた。

「み、南委員長!?」

「委員長知り合い?」とらぁら

「えぇ。風紀委員でクラスメイトよ」

「へー、始めまして、真中らぁらです」

 こちらとしては、始めましてではないのだけど。

「い、委員長! 違うんです、これは、そのー……デートとかではなくですね!」

「別に、人のプライベートに踏み込むつもりはないけど……」

 委員長は腕を大きく振り上げる。

 そして、パンチと音を鳴らして雨宮の額を叩く様に振り下ろす。

「校則第22430条、公共の場で騒いではならない。通算六枚目の違反チケットよ。最近、たるんでるわね、見損なったわ。行きましょ」

 委員長は平然と、雨宮の横を通り過ぎる。他のメンバーはその背中を追い店を出た。

 額からひらひらと違反チケットが落ち、膝をつく。

 考え事歩行&そのために廊下逆歩、委員会に遅刻、銅像の前でくしゃみ、授業中の返答、そして今。計六枚。

「雨宮……」

「帰る」

   ☆

 日も落ち、辺りは街灯もなく薄暗い。そんな川原で雨宮は済んだ夜空を見上げる。

「雨宮さんですね」

 すると、背後から聞き覚えの無い綺麗な声に名を呼ばれる。

「これを」

 暗くてその人が誰なのかわからない。しかし、声は女性で、背丈もさほど高くないことから女性だとわかる。

 そして、彼女が渡してきたものは、四角いカード状のモノ。彼女は渡し終えると何も言わず、声をかけても振り返らずにその姿を消した。

 外灯の下へ行き、そのカードを見る。

「これは」

 マイチケ。


 つ・づ・け