ガラケーの充電器が届いた。
夫の写真が少しあった。
だらしない顔でだらしない体形でだらしない格好で寝てる写真。

数年前夫の浮気が発覚した。
まだ疑惑だったころ、
まさか夫が・・・こんなだらしなく格好いいといえない
初老の夫が浮気だなんて・・と思いながら撮った写真だった。
証拠を集めて確信に変わった。その証拠の写真も残ってた。

その頃、心のざわつきは半端なかった。
私だけ違う世界を見てるようだった。
そして夫に問い詰めた。
「もう会ってない」と答えた。
合ってないじゃなくて、事実はどうなのか?聞いた。
白状した。悲しかった。
だって、毎日帰宅したし、不審なお金の使い方も無かった。
私は銀色の少女になれないんだな、と思った。
夫は私に謝ることを知らない。
謝る気はないのか?と聞いたら「申し訳なかった」とやっとそれだけ。
今から思えば、やっとそれだけ言えたのかもしれない。
その後離婚話になった。夫は何も言わない。
離婚するか?と聞いたら「しない」と一言。
自分の考えを言わないタイプだった。
不満は多々あったけど、胸に収めた。
夫に対する愛情の形が変わったのを覚えてる。
数カ月泣きっぱなしだった。

愛情の形は変わっても、ちゃんと愛していたようだ。

そのころ私は太ってた。10キロ以上体重が減った。
年甲斐もなく、安い美顔器買ったり見た目を良くする努力をした。
浮気は許せないが、おじいさんになった夫に嫉妬してた。

家族として私を信用してたのはわかってる。
捨てる気はなかったらしい。

息子もこのことを知ってる。
お父さんの救急搬送とか世話に影響したかと聞かれた。
それは無かった。
命に係わることなのに、それは無い。
数年かけて克服していたようだ。
だけど、遺品整理で発見してたら立ち直れなかった。

相手の女から何の連絡も無い。
夫の死を知っているのか、知らないのか?

ねぇ、あっちに逝くとき、誰の顔を浮かべたの?

離婚しないで添い遂げたよ。喪主やったよ。
最後のキスは私だよ。
おかしくなり始めたとき、何とかしなきゃって走り回ったんだよ。

あのころのざわつきと、今のざわつきは種類が違う。
絶対会えないざわつき。