3年前くらいだったと思う。ある飲み会で、たまたま隣に座った人と話が弾んだ。
趣味や読んでる本が偶然にも似ていて、その場のノリでLINEを交換した。
その後、特に連絡を取ることもなく月日は流れ、正直その人のことも忘れかけていた。
けれど、ある日ふいにLINEが届いた。
「LINE整理してたら懐かしくなって…久しぶりに連絡してみました。元気ですか?」
思いがけない再会。
俺は少し驚いたけど、悪い気はしなかった。
「おお、ご無沙汰してます!元気にしてますよ。最近はジムに通ってて、筋トレにハマってます」
これは事実だ。
筋トレが習慣になってから、体も心もいい感じだし、仕事や家庭にも特に大きなトラブルはない。
だから、そのまま素直に今の自分を伝えた。
すると、少ししてこんな返信がきた。
「いいですね〜!でも、なんか今悩んでることとかないですか?仕事とか、人間関係とか…」
……ん?
ちょっとだけ違和感を覚えた。
なんで“悩み”の話に突然なるんだろう?
少し考えてから、こう返した。
「今は特に大きな悩みはないですね。筋トレのおかげもあって、毎日楽しく過ごせてます。〇〇さんはどうですか?」
それから──返事は、来なかった。
既読のまま止まったトーク画面。
そこでやっと、腑に落ちた。
ああ、俺、最初から“お客さん候補”だったんだな。
ちょっと落ち込んだ。
せっかく元気に過ごしている今を素直に伝えただけなのに、それで会話が終わるなんて。
まるで「悩みを抱えてる自分」じゃないと、価値がないみたいで。
でも、よくよく考えたら、俺が落ち込むことじゃなかった。
相手は、「悩んでいる人」を探していただけなんだ。
困ってる人の心に入り込んで、それを自分のビジネスにつなげる。
そういうスタイルの人なんだって、ただそれがわかっただけの話。
ちょっと調べてみたら、心理学では人との関係性には2つの種類があるらしい。
ひとつは、「役割ベースの関係」。
相手に何かしてもらう、あるいは自分が何かを提供する、目的があってつながってる関係。
もうひとつは、「存在ベースの関係」。
ただ、そこにいるからつながってる。ただ、話したいから話す。そこに取引も損得もない。
今回の件を思い返すと、最初から俺は“役割ベース”で見られていたんだと思う。
しかもその役割が「悩みを持ってそうな人」だったから、「元気です」と答えた瞬間に興味を失われたんだ。
でも、だからこそ気づけたことがある。
俺は、そういうつながり方は求めていないんだなってこと。
誰かと連絡を取るとき、そこに下心や“目的”があるのではなくて、ただ「元気そうでよかったな」「なんか話したくなったな」くらいのゆるいつながりが好きなんだなって。
ただ、元気なときはそれを喜び、つらいときはそれを慰める。
そんな声かけをしていきたい。
そして、それが自然にできる相手を、大切にしていきたい。
きっとそれが、「存在ベースの関係」ってやつなんだと思う。
そういう関係を、これからも少しずつ、増やしていけたらいいなと思っている。