死のうと思って登った春の朝日岳で、残雪の中に咲くたっ

た一本のシャクナゲの花に命を救ってもらったという話を

書いていた方がいて、その方は私の地元のある企業の経営

者の方でした。「恩の経営」という本です。確か瀬島龍三

というやはり同じ郷里の元名参謀と呼ばれた人が推薦文を

書いていました。

 

自分の目の前にあった残雪の中のシャクナゲの花、そのあ

まりの美しさに、その花の前で泣き崩れた著者の奥野博さ

んでした。たった一本の花が人の命を救うこともある。

 

やはりむかし読んだ本で「宇宙からの帰還」という本があ

り、元宇宙飛行士たちへのインタビューを綴った本で著者

は立花隆氏です。そこには初めて月面に降り立ったアーム

ストロング船長などへのインタビューが載っています。

重力が地球の6分の1の月面。漆黒の大宇宙の中に、手を伸

ばせば届くほどのところに、ぽっかりと浮ぶ青い地球。

それを観たときにあまりの感動が本人の言葉で書かれてい

ます。

 

私は想像するのですが、自分1人が乗った宇宙船が軌道を

外れてしまい、どこかの星に不時着したとして、絶望感に

打ちひしがれながら、何もない岩石だけの星の大地を歩い

たとき、そこで一本の花にもし出会ったとしたら、どんな

感動がそこにはあるのだろうということなんです。

 

たった一本の花、たったひとふさの雑草であったとしても、

生命は懸命にそこに生きようとしています。それに気付い

たときの感動を想像してみてください。

 

私たちは普段何気なく自分の住居の周りの風景を見ていま

す。そこにある大自然ーーたった1つの小さな庭の中にも

大自然の命が息づいています。

 

そして私たちのこの身体もまたそうした大自然の1つです。

自分1人の命を生かすために、どれだけのものがこの命を

支えるのに協力してくれていることでしょう。

それを想像してみてください。

遠くの星、たとえば太陽系のどの1つの星がなかったとし

ても、太陽系というこの系は維持することができず、私た

ちの命、この存在は無いのです。

すべてがすべてと結びついているのがこの大宇宙であり、

私たちのこの体、この命もまた、そうした宇宙の仲間の1

つなのです。

すべてはすべてと結び付いています。

その感動を味わいましょう。