いきなり他人の着物の襟をこじ開けないで下さい! | 風月庵~着物でランチとワインと物語

風月庵~着物でランチとワインと物語

毎日着物で、ランチと色々なワインを楽しんでいます。イタリアワイン、サッカー、時代劇、武侠アクションが大好きです。佐藤健さんのファンで、恋はつづくよどこまでもの二次創作小説制作中。ペ・ヨンジュンさんの韓国ドラマ二次創作小説多々有り。お気軽にどうぞ。

今日、着物を見ていたところ、見ず知らずのおばさんから、とんでもないことをされました。

そのおばさんは近くにいた私に、興味を持ったらしい着物を手に取り、この着物は何?と聞いてきました。ベージュに街並みの風景柄の小紋ですね、と答えたのですが、今一つ反応が薄いのです。小紋の意味がよく分からないようでした。今度はこの着物には何の帯を締めればいいのと聞いてきました。小紋ですから何でもいいですよ、例えば博多帯でもいいですし、カジュアルな帯でもいいと思いますと答えました。それでもよくわからないようなのです。私はその方が持っている 帯はまったく存じ上げないので、何とも言いようがありません。お店の方も半幅帯でも大丈夫ですよと言いました。すると今度は、自分は腕が長いから裄(ゆき)の短い着物ばかりで着られないと言い出しました。その着物は私が着ても十分足りるくらいの長さがありました。そのおばさんは私より小柄ですし、腕が長いとよく言われる私よりは、どう見ても短いのです。ですから、その着物は私でも大丈夫な長さですよとお話ししました。

裄は67 CM ありましたので悠々着られるかと。あとは前幅と後幅が合うかどうかですね。身丈は十分ありました。そしたらおばさんはお店の人に、これは普通サイズかと聞いてきました。

着物は大雑把に普通サイズという言い方もありますが、前幅、後幅が自分に合ったものが一番良いかと思います。それでも自分は裄が長くないと着られないと私に話し掛けてきました。その時には、着物の襟を幅広にとって、半襟を出して肩の方に落として着ると、袖が外側に落ちて長く裄が取れますよ、とお話ししました。

不思議そうにしていたので、襟は半分に折らなくても内側に少しだけ折れば幅広になります、と付け加えました。そうしたら次の瞬間、おばさんは私の半襟を見て、なぜかとても興奮状態に陥り、テンションがとんでもなく上がり、

ちょっとその半襟、何?綺麗!そんな半襟があるの?

と叫ぶと、私の片方の襟を掴んで、思いっきりグイッと開いて広げたのです!

な、な、何だ!

おばさん、半襟のキラキラに顔を近づけて確かめようとしている。あまりのことに、とっさに言葉が出ませんでした。

「やめてください、着物の襟を開かないで」

そう言って後ずさりするのが精一杯でした。ヘタに手を振り払うと、爪が引っかかったりして着物がつれたりすると大変です。昨日しつけ糸を取ったばかりの、今日初めて着る縮緬の着物です。

見ず知らずの他人の、それも着物の襟に手をかけて開くなんてとんでもない行為です。あまりのことに、お店の人も唖然としていました。

着物の襟はちゃんと合わせているので、開いたりしたら、ずれて着崩れるでしょう、と言っても平気な顔しています。すみませんも、ごめんなさいもありません。

私の襟はと言うと、ぐいと引っ張られて広げられたので、浮いてしまいました。 ずれてしまいました。
とにかく半襟にキラキラのストーンが付いてるのが珍しくてたまらないようなのです。この半襟は特別なものでも高いものでもありません。今はどこにでも売っていますよと答えたのですが、興奮冷めやらず。私の着物をじろじろ見だしたので離れました。もうこれ以上あちこち引っ張られるのは御免だ!

そうしていたらお店の人が、おばさんが気になった着物を試着してみたらと言いました。興味がそちらに向いたかと思いきや、コートを脱ぐのが面倒臭いと言い始めました。いやいや着物を試着するのに、コートは脱がなきゃ無理でしょう。

そうして試着したのですが、何か待ち合わせの時間があったらしく、着物をほっぽって、どこかに行ってしまいました。お店の人の話ですともう一度来るんだそうです。

もう一度、来るんかい!

そして後ろからやってきたオバサンは、今度は勝手に私の帯に手を触れて確かめ始めました。

『誰が触っていいと言った!』

いい帯だこと

『当たり前じゃ、百寿模様の袋帯だ』
着物も帯も今日初めて着たのに、なんということしてくれるの(ToT)

お店の人が遠回しに、着物や帯にベタベタ触ったり、必要以上に引っ張ったりするのは良くないことだと言っても、全然平気で屁の河童なのです。

着物を見るときも、裏からそっと手を当てて大切に扱うということを示しても、やっぱり屁の河童なのです!

あたしは、屁の河童を連発したいわ!

襟は胸元なので一番目立つところですし、着物を着る時に最初にきちんと合わせるところです。そこが無理に開かれて引っ張られたので、家に帰って合わせ鏡で見たら着物全体が大きくずれて片側に曲がっていました。冬でしたのでコートを着ていたから、なんとかそのまま過ごせましたが、コートや羽織、道中着や道行コートがない場合もあります。

着物は大変デリケートなものです。高価なものというより本当に愛おしく大切に扱ってほしいでものです。帯も表面を撫でたり手で触ったりしないでください。それも他人が着ている着物や帯です。本当にやめてほしいです。ものすごく失礼でしょう。

キラキラがついた半襟は本当にポピュラーなものです。私はほとんど毎日着物を着るので、少しカジュアルにリラックスに着たい時は、半襟など、こういうところで和らげます。着物を着たいのであれば、他人のものがどうこうではなく自分の物を大切にしてください。自分が身に付けるものです。共に時を過ごすものです。

私は今日、この着物と帯と過ごすのを本当に楽しみにして出かけてきました。

怒ったり悲しんだりしなかったのは、一応安定剤の薬を飲んでいるからかもしれません。そうじゃなかったら怒ってるぞ!むちゃ怒ったからな!

着物の色を確かめて、海松色(みるいろ)と日本の色の名前になんと素敵だろうと感動して、はるか昔の平安時代の頃にもあったのだと知って思いを馳せて、とても嬉しかったです。

ですから台無しにしたくないので怒り心頭の気持ちにはなりたくありません。着物も帯も悲しむでしょう。

着物を楽しむということは、大切に扱うというところから始まるのだと思います。日本の美しい文化を大切にすることにつながるのだと思います。

今度、着物の襟をいきなり掴まれたら私とて容赦はせぬぞ。『今日から俺は!』の三橋、伊藤状態になっちゃうからな~(^_^;)

着物は美しいです。着るのも見るのも楽しいです。でも大変繊細なものでもあります。本当に本当に相手のものも自分のものも、大切に大切に扱ってください。

着物や帯も喜ぶ気持ちが、きっと自分に伝わってくるようになると思います。