ヒゲのように何本も出た糸は、2本だったり3本だったり、とても風情があります。
こちらのひげ紬の帯は、本来は網織紬というものだそうですね。
かつて琵琶湖で漁をするときに、その網を絹糸で編んだそうな。絹糸が豊富な地域だったので、可能だったのでしょうね。しかし魚を取ると網は毛羽立ちヒゲのように跳ね返ります。その網の間に着物や帯の絹糸を差し込み、寮で毛羽立た編みの糸を髭のように編みこんでいったのだとか。
それが特徴となり風情となり髭紬と呼ばれるようになった網織紬と言われるもののようです。
今回の帯は昭和の中頃のものかと思われます。 作家もので落款が入っていました。
古い名古屋帯ですとよく長さが足りなくて締められない事がありますが、こちらは長さが376㎝。よく見ると途中から手の部分を足して長さを出しています。その分、長くなったので余裕で締められまさす。
ひげ紬の帯は、今は作られているところも大変少なくなり手に入るのも、お目にかかるのも困難になりました。
実は今日父と一緒にお店にフラリと行ったところ、父の方がこの帯を大変気に入りまして、プレゼントしてくれました。
私としてはお値段も張るし、ちょっと手が出ないかなと思っていたのですが、とにかく父がこの帯を気に入りまして購入に至りました。びっくりして目がまん丸になりました。ありがたいことだと思って感謝しなければなりません。後でホテルのランチでもご馳走しようと思います。
随分と年数がたったものでしたが、お店でクリーニングに出してくれたので、綺麗になっています。

大変柔らかで腹の部分に来る柄も、墨絵の良さを施したとてもシンプルなものです。そこがまた何とも言えずいい感じです。
帯の遊び心と、ふんわりとした優しい風合い。また帯が過ごした長い年月の味わいもあるのだと思います。
しかし作家さんのお名前が墨でにじみ、落款もひげの立体感で薄くしか付いていないので、よく読めません。
せっかくのひげ紬の帯、早く締めたいのですが明日は悪天候の雨なので、ちょっと控えた方が良いようです。
帰りは雨になりましたが、帯はたとう紙に包んでもらって、さらに風呂敷で包んで、ビニール袋に入れて、買い物袋に入れて、大事に大事に濡れないように。私は半分自分の着物が濡れても帯に傘を傾けて抱いて帰ってきました。
ちなみに今日は雨に備えて化繊の着物だったので濡れても大丈夫でしたが、やはり冷たかったです。でも帰り道は楽しかった。
これもめっけもんの面白さだと思います。