改:第704話.命懸けの愛【連枝の行方.第二部⑦ 】 | 風月庵~着物でランチとワインと物語

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第704話.命懸けの愛

【連枝の行方.第二部『世界は愛に満ちている』⑦】

ジュンサンとチェリンの交際は意外にも早く両親の知るところとなった。春川からソウルへ出てきたオ・ジュニクとソン・ユリ夫妻は仕事の時間をさき、チェリンのブティックへ立ち寄った。
「チェリンはいる?両親が来たと伝えて」
「あの、社長は…」
「いないの?」
「先ほど帰っていらっしゃいましたが」
「何処にいるの」
「2階の社長室ですが今はあまり行かれない方がよろしいかと」
「何かあったのか」
「それがお友達もいらしていて…」
おどおどと目を反らし歯切れの悪い返答にユリは気づいた。
「友達って男と女?」
「はい」
「恋愛沙汰でもめているんでしょう」
「おい、ユリ!」
「行きましょう、あなた」

階段を昇った二人は部屋から言い争う声を聞いた。
「許せない、取り返してくる」
「今は行かない方がいいわ」
「ジンスク、あなたユジンの肩を持つの」
「そんなことない」
「ユジンと仲が良かったものね。でもあなたは私のブティックの社員よ。雇って貰いたくて私に会いにきたくせに」
「チェリン、そんな言い方するな。友達じゃないか」
「何が友達よ。ヨングク、あなたもサンヒョクが婚約者を取られて何とも思わないの」
「思っているよ。一番辛いのはアイツだ」
「ちょっと、辛いのはサンヒョクだけじゃないでしょう」
「ユジンも辛そうだったわ」
「ジンスク、それはいくら何でも」
「あっ、ごめん。チェリンもだったわね」
「私を馬鹿にしてるの」

ジンスクはビクリと身体を震わせた。
「口が滑っただけだろう。チェリンも乗り込むなんてよせ」
「恋人を取られて黙っていろっていうの?ミニョンさんは私の恋人よ」
「分かっているよ」
「じゃあ、言って」
「いけ好かないけどイ・ミニョンはオ・チェリンの恋人」
「ミニョンさんはカン・ジュンサンじゃないわ。ユジンがジュンサンを好きだったからって、ミニョンさんにちょっかい出すことないじゃない。ミニョンさんは何も知らなかったんだから」
「最初からジュンサンのこと、ミニョンさんへ話しておけば良かったのに」
「ジンスクがミニョンさんに告げ口したんでしょう」
「してないわ。ミニョンさんはジュンサンを知っているみたいだって言ったじゃない」

聞いていたユリは我慢出来ずに階段を駆け上った。それを止めたのはジュニクとサンヒョクだった。
「待って下さい。チェリンのお母さん」
「君はキム・サンヒョクか」
「はい。これ以上、事を大きくしたくありません。ユジンは僕が取り戻します」
頷(うなず)いたユリはサンヒョクへ言った。
「チェリンの恋人はイ・ミニョンと言ったわね。チェリンは何処で知り合ったのか分かる?」
「パリだそうです。パリに留学した時に出会ったとか」
「そんな前から」
「それでチェリンの恋人は今、あなたの婚約者と何処かへ逃げたのね」
サンヒョクは苦渋の表情を浮かべた。
「大丈夫よ。イ・ミニョンとチョン・ユジンは付き合えないわ。だってあの二人は…」
ユリはその続きは言わなかった。
「サンヒョク、ユジンを愛しているなら取り戻しなさい」
「そのつもりです」
「このままではあなたが考えているより大事になるわ。でも逃げたくらいだから二人はすんなりとは元に戻らない。普通のやり方では無理よ」
「分かっています。命懸けで取り戻します」
「そうね、そのくらいの覚悟でないと。あの二人は惹かれ合うから早くした方がいいわ」

オ・ジュニクとソン・ユリはその足でマルシアンを訪ねた。代表者の部屋にはイ・ミニョンの物がある。ユリはニューヨークのテワンの元へ電話を繋いだ。
「お久しぶりね、テワンさん」
「どうしたんだ。マルシアンから掛けているのか」
「テワンさんはミニョンとチェリンが付き合っていたと知っていたの」
「何だって?」
「フランス留学中に二人はパリで出会い恋人同士に。今度はソウルまで追い掛けてきた」
「ミニョンがチェリンと付き合っているだと?」
「そのうえ今はチョン・ユジンと手に手を取って逃避行ですって」
絶句したテワンへユリは告げた。
「チェリンはあの銃撃事件の事は覚えていないわ。ただミニョンと親しくすると思い出すかと怖いのよ。それにミニョンはセナの息子、チェリンは私の娘。そしてミニョンはテワンさんの息子、ユジンはチョン・ヒョンスさんの娘よ。どちらも従姉弟同士、この恋は実らない」

テワンは声を潜(ひそめ)た。
「ミニョンは今、ニューヨークにいる。フローラと結婚してシンシアという女の子もいる」
「何ですって?呆れたわ、ミニョンは妻と子供がいるのにパリとソウルで恋人を作ったというの?」
「ミニョンはニューヨークにいると言っただろう」
「じゃあ、あれは誰なのよ」
ハッとしたユリの脳裏に一人の男の名前が浮かんだ。
「カン・ジュンサン」
「そうだ」
「でも火災事故で行方不明なんじゃ」
「ミニョンとジュンサンは幾多の困難を乗り越え入れ替わった。二人とも生死の間をさ迷った。そしてこれはミニョンの命懸けの愛でもある」
「ジュンサンはその事を知っているの?」
「彼もまたチェリンのように記憶を消されている」

テワンから壮絶な出来事を聞いたユリは声を詰まらせた。
「ミニョンはどうしているの」
「童話作家の傍(かたわ)ら設計図も書いている。ペンネームはアスティだ。ナルコレプシーも落ち着いている。いつも小児科医のタルトが傍(そば)にいるから」
「もしかしてアスティとタルト」
「そうだよ」
「あの二人ならチェリンの留学の時にパリでサイン会を…」
「ジュノと話して絵本にチェリンへのサインも書いたそうだ」
「じゃあ、ソウルにいるのは本当にジュンサンなのね」
テワンは言った。
「あぁ、ジュンサンとの事は何とかしよう」

次回:第705話.ミニョンの電話

(風月)