改:番外編:二人【ロマンティック☆ミニョン『それから』】 | 風月庵~着物でランチとワインと物語

風月庵~着物でランチとワインと物語

毎日着物で、ランチと色々なワインを楽しんでいます。イタリアワイン、サッカー、時代劇、武侠アクションが大好きです。佐藤健さんのファンで、恋はつづくよどこまでもの二次創作小説制作中。ペ・ヨンジュンさんの韓国ドラマ二次創作小説多々有り。お気軽にどうぞ。

番外編.二人

【ロマンティック☆ミニョン『それから』】

ルルル…目覚し時計が鳴っている。
「ああ…起きなくちゃ」
ベッドの中から手を伸ばす。
ルルル…
「何で止まらないの?」
彼女はブランケットから顔を出した。
「電話だ」
寝ぼけ眼の彼女は起き上がると、テーブルの上の電話を取った。

「おはよう」
「誰?」
聞き覚えのある甘く柔らかな声。
「おはよう、ジュリア」
まどろむ頭で考える。「あぁ、ええと…ミニョン?」
ジュリアは欠伸(あくび)をしながら立ち上がった。
「ごめん、まだ寝ていたんだろう」
「いいけど。まだ6:30よ。どうしたの?お姉ちゃんならいないよ」
電話の向こうでミニョンは微笑んだ。
「ソフィアならここにいる」

「えっ…何?お姉ちゃん、こんな早くからミニョンの取材に行ってるの?」
ミニョンは笑い出した。
「ハハハ~違うよ。取材じゃない。ソフィアは僕と…昨晩からずっと一緒にいる」
「えっ?」
カーテンを開けていたジュリアの手が止まった。

「言っている意味、分かるよね」
「うん」
「小細工なんかしたくないから、ちゃんと話すよ。昨晩ちょっとトラブルがあって、ソフィアの服びしょ濡れなんだ」
「お姉ちゃん、大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。僕が悪いんだ。怒って彼女にシャワーを掛けたから」
「ふうん、喧嘩したんだ」
「あぁ」
「それで仲直りして、そういうこと」
「察してくれてありがとう」
「どういたしまして」

電話の向こうのミニョンは、はにかむように下を向いた。
「それで彼女、着て行く服も靴もないんだ」
「私に持って来いって事ね」
「ごめん、君にしか頼めない」
「分かったわ。お姉ちゃんに一式持って行くって伝えて」
「ありがとう、ジュリア」
電話を置いたジュリアはフーッと息を吐いた。
「全く、お姉ちゃんったら。仕方がないわね。面倒見の良い妹に感謝してよ」

グラマシーの朝は快晴だ。爽やかな誰かの喜びに、空も祝福しているってこと?
ドアの向こうにミニョンが立っている。白のVネックセーターとコットンパンツが、眩(まぶ)しい朝日に映えている。
「おはよう、ジュリア」
「おはよう。お姉ちゃんは?」
ジュリアはミニョンの後ろを窺(うかが)った。
「ソフィアはまだ僕の部屋だ。出て来ないんだ」
「まあね、どんな顔していいか分からないものね」
ジュリアの大人びた口調に、ミニョンは口元を押さえた。
「はい、これ。着替えとメイク道具と…あと朝食」
ジュリアは紙袋を差し出した。
「来る途中、買って来たの。ベーグルサンドでよかった?」
「ありがとう。君は一緒に食べないの?」
「イヤよ、目の前で見せつけられたくないわ。二人でどうぞご勝手に!」
吹き出したミニョンは右手で髪をかき上げた。

「ジュリア、僕たち結婚する」
「うん、おめでとう」
「ありがとう。君に一番最初に伝えたかった」
ジュリアは涙ぐんだ。
「私、ずっと思ってた。お姉ちゃんとミニョンは絶対結婚するって」
「ああ、僕のパートナーはソフィアしか考えられない」
涙を拭(ぬぐ)ったジュリアは顔を上げた。
「ミニョンは子供の頃から憧れの王子様だったわ。私のロマンティックな王子様…もうお兄さんになるのね」

2階の窓からブランケットにくるまったソフィアが、心配そうにこちらを窺(うかが)っている。
「ウフフ~」
ジュリアは小さく笑うと、バッグから何かを取り出した。
「これ、お姉ちゃんに渡して。一番早いプレゼント」
「リップスティック?」
「昨日買った新作。今日はうんと可愛いメイクにして行ってねって」
「ソフィアはいつでも可愛いよ」
「ミニョンったら」
さらりと言ってのけるミニョンに、ジュリアは呆(あき)れた顔をした。
「私も、彼に可愛いって言ってもらおうかな」
「へえ~ジュリアの彼氏ってどんな男の子?」
「教えない」
「僕の知ってる人?」
「さあね。でもミニョンよりカッコイイ」
「ふうん」
それでもミニョンは満面の笑みを浮かべた。
「私もう行くわ」
2階の窓でソフィアが小さく手を振っている。行きかけたジュリアは足を止めた。
「ミニョン、そのリップスティックの色、とても可愛いピンクだからキスしない方がいいわよ!」
「僕は別に構わないよ」
「何よぅ~」
平然と言ってのけるミニョンに、ジュリアは可愛らしく舌を出した。
「お姉ちゃん、ミニョン、結婚おめでとう!!」
大声で叫ぶジュリアに、驚いたソフィアのブランケットがスルリと床に滑り落ちた。

ジュリアは足早に歩いて行く。風を切り髪をなびかせ、左手で小さくガッツポーズをする。お姉ちゃん、よかったね。私、知っていたよ。ミニョンがお姉ちゃんを見る時、どんなに愛しい瞳をしていたか。どんなにお姉ちゃんを大切に思っていたか。お姉ちゃんだってそうでしょう。ミニョンの事を話す時、とてもとても大切に話していた。そして自分がミニョンに、どんなに大切に思われていたか…お姉ちゃんは分かっていたんでしょう。

あの二人は長い年月、お互いを愛し慈しみ、とても大切にしてきたんだ。遠く離れていても、長い時間会えなくても、きっと一緒だったんだわ。お姉ちゃんはそれだけで嬉しかったんだ。二人は結婚する前も、そして結婚してからも、愛しく慈しみ大切に思うんだ。 愛してるって、そういう事なのかな。

ジュリアは思う。ミニョンが初恋の人じゃなかったら、きっと今の彼を恋人に選んでいない。ミニョンの愛し方を見ながら、私は愛してるって事がどういう事なのか学んだ気がする。

あの人を大切にしよう。彼を愛しているから。彼を愛しいと思うから。

ジュリアは時計に目をやった。
「きっともう出掛けてる」
夕方、電話してみようかな。今日もまた、少し待ちぼうけかな。でもその後、二人で美味しい食事をしよう。笑って今日、幸せだった事を話そう。それまでの時間、私はちゃんと勉強して、あの人に負けない笑顔でいよう。小さなジュリアが歩幅を広げた。

ソフィアとジュリアの姉妹は気づいていない。その優しい笑顔とクルクル変わる可愛い表情が、ミニョンと彼の心を射抜いたという事を。

近日公開:【ロマンティック☆ミニョン~ローマ編『贈り物』】

第1話.あの娘の恋人

まずは、もう一つ番外編から

(雪音)