改:第6話.女神サンドラ【ロマンティック☆ミニョン『それから』】 | 風月庵~着物でランチとワインと物語

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毎日着物で、ランチと色々なワインを楽しんでいます。イタリアワイン、サッカー、時代劇、武侠アクションが大好きです。佐藤健さんのファンで、恋はつづくよどこまでもの二次創作小説制作中。ペ・ヨンジュンさんの韓国ドラマ二次創作小説多々有り。お気軽にどうぞ。

第6話.女神サンドラ

【ロマンティック☆ミニョン『それから』】

「マダム、すみません。席を外します!」
「あら、ミニョン。何処へ行くの」
マダムたちの声を置き去りにして、ミニョンは二人を追って走り出した。彼らの乗ったエレベーターのランプが1階で止まる。
「連れ出す気か」
ミニョンはやっと来たエレベーターに飛び乗った。

扉が開くのさえもどかしく、ミニョンはロビーに降り立った。ソフィアのドレス、ダークレッドの姿が見当たらない。エントランスでベルボーイを捕まえる。
「イ・ミニョン様」
「ダークレッドのドレスを着た小柄な女性を見なかった?酔って金髪の男に抱えられていたはずだ」
「その方でしたら、先程、外へ」
「ありがとう」

ミニョンはフロントへ飛び込んだ。
「車を回して下さい。今すぐにです。急いで下さい!」
ミニョンはそのまま外へ飛び出した。1台前の車に乗り込むピエールの姿が見える。助手席にはオーガンジーのショール…ソフィアだ。
「あいつ!」
ミニョンは口唇をかみしめた。目の前の車では、恰幅(かっぷく)のよい男性をスレンダーな女性が助手席に押し込んでいる。どうやら飲みすぎて酔っ払った夫を妻が連れ帰るらしい。
「あなた、ほら早く中へ入って」
「う~ん、もう飲めないよ」
「いったいどれだけ飲んだのよ。全くもう…可愛いんだから」
「あぁ、サンドラ。愛しているよ」
ミニョンは助手席に走り寄った。
「サンドラ!」
「あら、ミニョン。どうしたの?主人が飲み過ぎちゃって、ごめんなさいね。お先に失礼するわ。あとからまた飲み直す機会を…」
「サンドラ、車を貸して下さい。急いでいるんです。あなたとご主人は僕の車で」
ミニョンは懇願するような目でサンドラを見つめると、両手に力を込めて包み込んだ。
「幸せ~ずっとこうしていて」
「サンドラ、それより…」
「分かっているわ。ミニョン、また彼女を助けに行くのね」
ワクワクした瞳が輝いている。
「貸しは先にお支払いします」
ミニョンは華奢(きゃしゃ)なサンドラを引き寄せるとギュッと抱きしめた。
「まぁ、ミニョンったら大胆。夫が傍(そば)にいるのに」
「失礼なら今すぐやめます」
「平気よ。酔っ払いは何も覚えちゃいないから」
「う~ん、サンドラ。愛しているよ」
「ダーリン、目を開けちゃダメよ」
「おぉ~ハニー」
「感謝します、サンドラ」
「いいのよ、気にしないで。存分に暴れていらっしゃい」
クスリと笑ったミニョンはサンドラへウィンクを返すと運転席に飛び乗った。

「あなた、降りて!」
スレンダーなサンドラは大きな身体を思いっきり外へ引きずり出した。大きな身体がゴロゴロと地面に転がった。
「痛た~何事だ」
「何でもない」
「すみません」
「気にしないで、頑丈だから。OK、ミニョン。さぁ、行きなさい!」
ドアを閉めるサンドラの声と共に、ミニョンは急発進していた。

ミニョンの目はピエールの車だけを追っていく。
「ソフィア、あれほど近づくなと言ったのに」
ミニョンは1つため息をついた。
「どうして君は危ない事ばかりするんだ。発信機でも着けときゃよかった」
ミニョンはもう1つ、ため息をつくと口唇をかんだ。
「よりによって今日だなんて。特別な誕生日なのに台無しになんかさせるか」

車はマンハッタンを抜けブルックリン橋を渡って行く。こんな夜、サンドラの車でソフィアとここへ来た。ミニョンは13年前の夜を思い出す。泣いていた彼女…僕はまだソフィアに恋していなかった。

車はブルックリンの街並みを抜け南下して行く。あの日…夜明け前、二人でコニーアイランドへ行った。ソフィアが海を見たいと言ったから。この道はコニーアイランドへ行く道だ。
「ソフィア」
ハンドルを強く握ったミニョンは表情を引き締めるとアクセルを踏み込んだ。
「待っていろ、直ぐに行くから」

次回:第7話.『騎士のお出まし』再び

(雪音)