改:第5話.マルガリータの誘惑【ロマンティック☆ミニョン『それから』】 | 風月庵~着物でランチとワインと物語

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毎日着物で、ランチと色々なワインを楽しんでいます。イタリアワイン、サッカー、時代劇、武侠アクションが大好きです。佐藤健さんのファンで、恋はつづくよどこまでもの二次創作小説制作中。ペ・ヨンジュンさんの韓国ドラマ二次創作小説多々有り。お気軽にどうぞ。

第5話.マルガリータの誘惑

【ロマンティック☆ミニョン『それから』】

パーティーは佳境をむかえていた。
「ソフィア、申し訳ありませんでした。ミニョンと何かお話があったのでしょう」
ピエールは物腰柔らかくそう言うと、ソフィアにカクテルを差し出した。

グラスの回りは白く縁取られたソルト・スノースタイル。
「いいのよ、今日の受賞の事をもう少し詳しく書きたかったから。帰りに送って貰うから、その時聞くわ」
ソフィアは手にしたカクテルを口に含んだ。
「これ何?美味しい」
ピエールは意外な顔をした。
「ソフィアはNY育ちでしょう。今までカクテルはお飲みにならなかったのですか」
「私、NYUを出てからローマ支局やロンドン支局に行ってたの。だからカクテルの事は知らないわ。それにいつ呼び出されるか分からないから、普段からあまりアルコールは飲まないのよ」
そう言いながらもソフィアはカクテルを飲み干した。
「そうでしたか。それより、このカクテルは随分とお気に召された様ですね」
ピエールは空のグラスを取り替えた。

ソフィアは2杯目のカクテルを口した。
「そのカクテルはマルガリータといいます。カクテルの代表選手です」
「カクテルの代表選手か。学生時代、ニューヨークの代表選手はシークレットファイルだったわ。ピエール、知ってる?」
「噂には聞きましたが、シークレットファイルはそれほどに有名でしたか」
「ニューヨークのイメージアップや観光客の勧誘に大きな貢献をしたわ。それまでのありきたりなニューヨークのPRとは全く異なっていた。個性的なのに、皆一目で彼らの姿に釘付けになったのよ。女の子はシークレットファイルに夢中だったわ」
「ソフィア、あなたもですか」
「私?…私は冷静な目で彼らを見ていたから。簡単に心を奪われたりしないわ」
「さすがNYタイムズの記者だけある。その頃から冷静な目を持って対処していたとは」
「まあね」
得意気なソフィアは2杯目のカクテルをクィと飲み干した。
「これ、とっても美味しい。ライムの味がして、私、好きだわ」

ピエールはソフィアに3杯目を手渡した。
「マルガリータをライムから感じ取るなど、素晴らしい。あなたならカクテルを極められますよ」
「そんなぁ~それほどでも。アハハ~」
いつもより笑い声が大きくなるのは何故だろう。

「マドモアゼル、大丈夫ですか」
「大丈夫、大丈夫」
「マルガリータ、このカクテルは恋人を想い作られたとも言われています」
「そうなの。遠くにいたのかなぁ、それとも長い年月?」
ソフィアの足がおぼつかなくなってきた。

「恋人、恋人ね。ふうん。私…気持ちいい。家に帰るわ…ミニョン、私…家に帰りたい」
「僕が送りましょうか」
ピエールはふらつくソフィアを支えた。
「ピエールだってお酒飲んだでしょう」
「いいえ、僕のワインはあなたのドレスに吸い込まれました」
ソフィアはもう立っていられない。
「ミニョン…ミニョン、何処?」

彼女の声にミニョンは振り向いた。
「ソフィア」
マダムの輪の中にいたミニョンは彼女の姿を捉(とら)えた。ダークレッドのドレス、見た事もないドレス。ピエールはミニョンの視線を捉(とら)えると、これ見よがしにソフィアを抱きかかえた。
「マドモアゼル」
「う~ん」
「これはこれは、少しばかり酔われたようですね。僕がお送りしましょう」
「ピエール!」
歯がみしたミニョンを見ると、ピエールはニヤリと口元を上げた。
「NY中の女性を虜(とりこ)にしたシークレットファイルだと?笑わせるな」

次回:第6話.女神サンドラ

(雪音)