『 【懐古録】エロビデオ 』 の続きです
レンタルビデオ店
書店で売っている、普通の映画のビデオテープも、種類がかなり増えてきた。
しかし、価格は5000円程度と高止まりだったから、爆発的に売れるわけじゃない。
そうすると、町のあちこちに、「レンタルビデオ店」ができてきた。
いまは、GeoやTSUTAYAなら、1枚100円程度でDVDやCDを借りられるが、当時はビデオテープのレンタルが、200~250円だった。
でも、1本5000円もするビデオが廉価で見られる。
ということで。ヒットした。
町なかのレンタルビデオ店の大きさは、小さな書店程度の規模。
そして、店内の一角に、「成人用ビデオ」という、コーナーがあった。
そのコーナーの前に立って、まず、ビデオの背ラベルに書かれた映画のタイトルを読む。
「アッハン・ウッフン、色気づいた人妻」
だめだ、だめだ、そんなふざけたタイトルじゃ、いいわけない。
「夏の夜、襲われた人妻」
おっ、いいね。
と、テープを取り出して、パッケージの写真を見る。
うっ ・・・ ・・・ だめだ、だめだ、こんな女優じゃ、大きくならない。
と、テープを棚に戻す。
「夏の夜、襲われた人妻。パート2」
なんだ、続編があるのか。どれどれ、と、テープのパッケージを観る。
おっ、これこれ。
おっ、大きくなる! この女優ならいいな。
と、左の脇に抱えてテープをキープする。
そして、次のテープを探す。
この、テープを探しているときが、一番ワクワクするなぁ。
レンタルビデオは、借りたら、返さなくちゃいけない。
だから、自宅の近くの、レンタルビデオ店を利用する。
すると、顔くらいは見たことがある近所の子供が、テレビアニメのビデオを借りに入ってくる。
また、道で会うと「おはようございます」とか「こんにちは」くらいの挨拶を交わしたことがある、近所の人妻(「人妻」というと何だか淫らな感じだな)、もとえ、近所の奥さんも入ってくる。
子供に見せるアニメや日本昔話を借りにきたのか、もしかすると自分で観るエロドラマ、じゃなかった、メロドラマのビデオを借りに来たのかも・・
そんな奥さんが、成人用ビデオコーナーの前に立っている俺を観ると ・・
「あっ、あのお兄さん、○○アパートの▲▲▲さんだわ。ちょっと格好いいから気にしていたけど、やっぱりあのお兄さん、変態だったんだ・・」
注:こういう場所では、「あのお兄さん助平だったんだ」ではなく、「あのお兄さん変態だったんだ」となってしまうのが辛い。
「今度、道で会って、声かけられて、お茶に誘われて、家に連れ込まれて、襲いかかってきたらどうしよう ・・ まぁ、一回だけならいいかな。ちょっと好みだし・・」
・・ となればいいが、
「ねぇねぇ、奥さん。○○アパートの▲▲▲さんって、知ってる?」
「ちょっとイケメンの人でしょ。知ってるわよ。どうしたの?」
「あの人ねぇ、格好いいくせに、すっごい変態なの」
「ええっ!」
「この前、レンタルビデオ店にいったら、あのお兄さん、変態ビデオの前でパッケージをジロジロ観ながら、よだれ垂らしていたわよ。目は血走っていたし」
「そうなの・・じゃ、こんど道で会っても、挨拶しないで目をそらせなくっちゃ・・。」
・・ という噂が広がると困る。
だから、町なかのレンタルビデオ店は、深夜の遅い時間に数回利用しただけだった。
月日が経って、しばらくすると・・
世間に「裏ビデオ」が出回っていることが分かってきた。
普通に売っている「表ビデオ」と、普通には売っていない「裏ビデオ」の違いは分かるかな?
「・・・・ モ・ザ・イ・ク ・・・・ ?」
よくできました。
日本は、エロの法律の解釈がおかしいから、
ここはどうなっているんだろう? もっとはっきり見たいな。とか
二人で、どうやって、やりまくっているんだろう? はっきり見たいな。
という「はっきり見たい」部分が、白黒ギザギザのモザイク模様となったり、ボカシといって白いお盆のような丸で覆われていたり、アイドルやAV女優のヌード写真では、肝心な部分が太い黒いマジックでググリリ塗りつぶされている。
「そこがどうなっているか、知りたいでしょう。でも、見せられないんです。どうなっているかは自分で想像して、一人で興奮してください」というわけだ。
これが、普通に売られている、表のビデオや表の写真集。
外国のビデオには、モザイクなんかない。
外国を様子を、少し説明すると、
「エロ本? エロビデオ? そんな不埒なものは、我が国では許しません。そういうものを持っていたり売っていたら、すぐに捕まえて、磔、獄門、死刑です。」
実際に死刑かどうかは知らないが、そういう戒律が厳しい国は、チラホラある。
その他の、戒律が厳しくない多くの国は、
「エロ? 人間、男と女しかいないから、興味を持つのは当然です。勉強のためにも、また、刺激を得るためにも、エロビデオやエロ本はいいものですよ。」
「モザイクやボカシ? 何でそうする必要があるんですか? 勉強にならないし、そんなモノじゃ刺激もこないでしょ。」
「でも、そういう刺激の強いものは、子供に悪い影響与えるから、子供が来ない専門店でしか売ってはいけません。」
となっている。
「海外旅行に行って、向こうでエロビデオ買ってきました。スーツケースの一番下に隠して、税関を無事に通ってきました」と国内に持ち込んだり、
暴力団が、漁船で海外のエロビデオを大量に密輸して高値で売ったり、コピーしたテープを少し安く売ったりする。
そういう、裏ビデオが出回っているらしい。
清く正しい日本の青年は、エロといったらモザイクがあるのが当然、だと思っている。
でも、モザイクがないビデオテープがあるなら、「それを見たい」と思うのも、清く正しい日本の青年だ。
そして、俺も、清く正しい日本の青年だった。
【通販で騙された】
だから、エロ本の宣伝にあった「裏ビデオ売ります」という広告を見て、すぐに電話で注文した。
早かったよ。注文した2日後には、
「郵便局です。代引き小包です。」
と、持ってきた。
凄く早いな、と、代金を渡そうとすると、局の兄さんが俺の顔をじっと見て、何か言いたそうな雰囲気だった。
・・きっと、この局員も差出人に気が付いたな。そして、同じところから買ったんだな。
それで、「スケベなやつがここにもいるな」と、俺の顔を見ているんだな。と考えた。
局員が帰ると、すぐにテープをデッキに入れた。
再生 ・・ 早送りして ・・ 再生
2本目に変えて 再生 ・・ 早送りして ・・ 再生
そうやって、購入したテープを全部見た。
しかし、テレビの画面は、全部、一面の砂嵐ばかり。
何も映っていなかった。
だまされた!!!
そのとき、気がついたのは、
さっきの局員も、やっぱり同じところから買ったんだな。それで、
「お客さん。裏ビデオを注文したと思うけれど、この中のテープは、なんにも映っていませんよ。だまされていますよ。いまなら『受け取り拒否』と言ってもらえば、この荷物を突っ返しますから。騙されちゃダメですよ。」
と、言いたかったんだろうな。でも、職業がら言えないから、きっともどかしかったんだろうな。
とにもかくにも、騙された。
やっぱり、こういう世界にはこういうことがあるんだなぁ。といい勉強になった。
「あのね、裏ビデオを注文したんだけど、何も映っていないテープが送られてきました。これって詐欺ですよねぇ。」
と、警察に訴えようとしたけれど、物がモノだから、まともに取り合ってくれないだろうな。