ついさっき みた夢     | “Mind Resolve” ~ この国の人間の心が どこまでも晴れわたる空のように澄みきる日は もう訪れないのだろうか‥
    
    
誰の所有かは不明の幾つかの新築の家や何年も前の実家や、ビルの中。
一戸建ての借家や街の路地。
住宅街の通りにあって敷地が一段高い場所の
花屋のような硝子のドアの酒屋。
バスに乗った山道や、トンネルを抜けた開発中の山みち。
雪の北国と都会を結ぶ沿線とか 
電車で見知らぬ土地への行き返り。
空港と一体化した国際的な駅。
何かの施設か工場が見える車窓の風景。
中仙道の脇の駅を降りて、
建物の外側に建設関係の職人用トイレがあった母親の実家。
いつか見たいくつかの夢の一連の流れのつづきで
俺の生きてきた記憶と
これまでに観たあらゆる夢の断片と
切りもないほど至る所でつなぎあわされている夢だった。
    
夜の国道を銀色のクルマで走り、家族で都内へ向かう。
行き先はひとつかふたつ。
途中、運転する者以外が酒を買って飲むという旅の楽しみのために
オールナイトの酒屋がコンビニのようになった店で
普段は買うことのないツマミ…イカやタコの燻製のほか 
笹カマボコの真空パックが、ひとつ¥550のモノと\256のモノがあった。
店内には女性従業員が二人。そのほかにも客の気配。
「誰が食べるの?」
「あの人妻の知人は、こういうのが好きなんだよ。たぶん。」
ほかに買い揃える中で、仮面ライダーのレンタルビデオを2巻ダビング複製物
レジのカウンターでカゴから出すときに

「ああ、これはいいや。
…こんなの、こんな遠くまで返しにこれないだろ。」
妻なのか彼女なのか、子供と一緒に観る目的だったのか、
「いいんですよ。お客さん。あとで郵送で送り返してもらえれば」
その言葉を背に、暗い駐車場まで行って車内にいるはずの者に訊ねる。
「あれは買ってこなかったよ。どうすんだよ。何処で観るんだ?」
    
とりとめもなく、別のシーン。
建物の中。奥の部屋。黒いソファー椅子のある一室。壁は茶色い。
あの事務所の中。
「世の中では今、何冊かの『本』を出して客を寄せるような手段は旧くなって 
宗教の教祖にしてもセミナーの講師にしても、何かを売るにしても
本の出版から編集から、講演会の会場手配も講師もサクラも、
すべてを引き受ける企業が存在していて、ネタがあるならそれを題材に
なんでも一通りやってくれるというのが在るんですよ。
ぜんぶの企業がそれを利用してるわけじゃないけど、
そういう会社がいくつかある…」

例の社長に話している俺。
「あなたの話は一応、伝えてはみるけど、
先生は『あと2年は待って』ということなので、
それまでは今はまだ…」
どーのこーのと云っている横で、その娘が
具合わるいのか横になってて、こっちを見て笑ってるので
「とにかく、カネモウケできりゃぁいいんだろ。なんとかしてやるよ。」
俺は何処から何の旅から帰ってきたのか? 
独り意気込んでは、街を歩きながらも 
「俺がやるわけじゃねぇけど、そういう企業の講師は雇われのプロで、
衣装もぜんぶ自前。宗教なら宗教の宣教や布教。
企業なら企業の講師を演じても
それだけ高額なギャラを貰えるので、道具はすべて自分で用意する。」

交差点の信号待ちでも誰かと話している。
そこで別れて見送られ、右へ曲がったのか、同じ街の横丁なのか、
来た道とは別な道を歩いていて、ふと左側の空き地を見ると
商店街の奥に民家が覗けるような古いブロック塀に囲まれた宅地に
先生が一人、背丈ほどの植え込みの前にいた。
既に夕暮れどきだった。
何かの作業を終えて一段落していたのか
普段着のジャンバー姿で
頭に手拭いか何かを被っていた風貌でも、顔を見ると、
「やっぱり生きていたんだな」という気分は当然のおもむきで 
その姿を観てスグに先生であることが判断ついた。
近くへ寄って、さっきの話を直接 伝えようと塀の入口を回ると 
そこには、やや土を盛った場所に穴があって 
それはちょうど炭をつくるカマドのように
入口が、ヒトが屈んで入れるような筒になっていて
油紙のような色をしたもので内側から泥を押さえるため状態が
出入り口が潰れないように施されていた。
「…カマクラのような…これはなんですか? シェルター?」
質問の応えはなかったけど、先生が立っていた場所から見ても、
壕のようなもので地下は拡くなっていたのか、
デキタテらしい。
奥の方に誰か二人以上はいて、聞き覚えある女性の声がする。
「…あのねぇ。あと2年ね。」
「はい。」即答で応える俺
「ああそうだ、グリンピース買ってきてくれるかなぁ。」
「あ、はい。 …ええっと、先生、」
「うん?」
「それは冷凍食品の袋のやつじゃなくて缶に入ってるやつ?」

いつものように必ず代金を手渡すことはなかったが、
縦に首を振っていたので、おそらく、
一緒に暮らしてるはずの娘さんに買ってくるように頼まれたものだと覚った俺は
そのまま通りを真っ直ぐに抜けると、近くにあるはずのスーパーを目指す。
「どこで買え」という大事な部分。その指定はなかったので、
「こっちの方が近いんじゃないか?」ということで
素直に右の道は選ばずに左へ曲がって
ダイエーの食品売り場を目指す。
この手の夢では、出てくる店はいつも、なぜか弊店間際で
店をあとにする客や店内を片づける従業員がいて、
既に食品売り場もシャッターが閉まっていたのか、
そのまま白いエスカレーターを昇ろうとした俺は、
そこでは買えないことを覚って、店を出て、やはり別のスーパーへ向かおうとする。
出た場所が、よく知っているはずの通りで
「200数十メーターある」という飲み屋街。
どの店も、ネオン看板にはすべて白地に紺で「真野鶴」の3文字が飾られていた。
蔵元の社長も自慢の界隈として、繁華街から外れた場所でも、そこには
数々のスナックや小料理屋のほかに、街の電気屋だとかいろいろと店もあって
時間帯としては早いものの、すべての店が立派に現役として営業中の趣だった。
「今なら社長に先生を逢わせれば お互いに喜ぶかもな…」
そんなアホなことを考えながらも通りを逆方向へ進んでいた馬鹿な俺は
そのまま引き返して、右へ反れると近道になるはずの路地を曲がった。
「おかしいな。マツヤだったかマツセーだったか、名前はどうでも
たしかこの道を抜けたところにあるはずなんだけどなぁ。」

ところが、夜だったはずの辺りは、日中の誰もいないような田舎道になり 
いくつかの民家を横切ると、なぜか大きな寺が見えたりする山林や 
その道の向こうは農道になっていた。
「道まちがえたか?」
すべて徒歩だったので、買い物を頼まれた時間を気にして少し慌てたが
そこで目が醒めてしまった。
   
夢の中ではいつも、確かに生きていた。
言葉は少ないものの声もホンモノだった。
でも目が醒めてみると、数年前に「死んだ」と訊かされた記憶しかない。
それにしても、どうして、グリーンピースの缶詰だったのか? 
あと2年という明確な期日の設定はなんだったのか? 
    
眠っているときに観た夢は夢でしかないにしても 
あまりにも具体的に鮮明な内容で 
目が醒めてもこれだけスッキリとした頭で覚えているので 
ほかの予告編とは ぜんぜんちがう
。 

    
俺はもう呼び戻されはしないし、呼び戻される場所もない。
自分から身を引いた以上、あの事業とは係わり合いはないし、
既にそんなことはもう、今の時代の人間の生活に必要とされない。
これからの時代、あらゆる健康産業も、自然保護事業も環境保全も、
「40過ぎると福祉年金を支払う義務がある」という世の中に噛みあわなくなってくる。
現代医学や世間常識も、教育やメディアも、
人々のあらゆる生活面が自然界の道理から外れた代償の支払い。
これまでの科学や思想、宗教の教えの誤算や打算も 
今のままの状態で肉体が変形し精神が奇形化した者が自ら全員、
それをキッチリと清算しなければならない時代になる。
その中で俺は誰かの何かを“治す係り”でもないし、選ばれた人間でもなんでもない。
ただ唯一、自分の肉体が苦しいために
「わらをもつかむ思いで先生を訪ねた」という、そういう類いではない。俺だけは。
それでも、昭和58年の2月11日に始めた本人がいなくなった今、
それから2年後の1985年で、人類の選択余地は制限されちまった。
それは判っていても、未だに、こんな夢も観る。
何かが止まって、何かが突き進んでいる。
俺だけは疲れることもない。人並みに老けることもない。
今のところはな。
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
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