黄昏の芸能ブローカー / action 012  | “Mind Resolve” ~ この国の人間の心が どこまでも晴れわたる空のように澄みきる日は もう訪れないのだろうか‥

 
 
 
        action 012 
 
 

世の中には色々な職業があって、
日本の映像業界のスタッフ側(?)の一人、
自分の好きなことを堂々とやって
とても楽しく仕事をしている人もいた! 
・・・・・ということを発見した瞬間がある。
俺も初めて逢った時はちょっとビックリした。
「世の中にはこんな人もいるんだ」
視野が拡がった。
ここではその人のことを仮に
“芸能ブローカー”
と呼ぶことにしよう。
本人も、
「オレは芸能ブローカーだ」
と云っている。
云っているだけでなく、
やっていることも芸能ブローカーそのものだ。
 
 

劇用のパトカーや救急車、消防車など、
あらゆる撮影現場に引っ張りだこの会社も世の中にはあって、
いわゆる“劇用車”のドライバーも、芸能ブローカーに並んで、
“映像の陰”で活躍する重要なスタッフ。
そういったロケ車両のスタッフ(ドライバー)とも仲良しの芸能ブローカー。
彼は、“シロパト”のボンネットにもたれかかり、こんな話をしていた。
    
「…あの野郎、今は助監督やってるけど、
まだ制作の使いっパシリだった時に、
ロケで廻った時の弁当代から宅送から何から、
3ヶ月分の領収書を自分の財布ごとぜんぶ失くしちまいやがって、
『どぉうしよう、どうしよぉ…』とか ベソかいてやがった。
それをオレが『そんなの何とかしてやる』って云ってんのに、あの野郎、
『いいです、いいです、自分で何とかします』とかコキやがって。
『オメェ、そんな50万も60万も
自腹切って制作費の肩代わりするバカが何処にいるよ!?
オレに任せろ!』って云ってんのに、云うこと聞かねぇで。
結局ヤツは、どうにもならなくなって、終いにオレんとこ来て、
『やっぱダメだぁ…』って、また半ベソかいてやがった。
最初っから素直にオレに任せときゃいいもんを…。」
「それで、どうした?」(ドライバー) 
「オレが全部、別の領収書 用意してやった。あんときは。
だからヤツは過去にそういうことあっから、
オレに頭あがらねぇんだ、ヤツは…。
んで、あの野郎、昨日の夕方になってから
『あした、人が足んねぇから どうにかしてくれぇ~』って、
オレんとこに電話かけてきやがった。
『何人?』て訊くと、
『30人』とかヌカシやがる。
『バカ云ってんじゃねぇよ、遅いんだよ。
夕方6時過ぎになってから、そんな人数。
その時間になって摑まる奴なんているわけねぇだろっ!』つって、
それでもヤツは、オレに頼めば
『何とかしてくれると思って…』とか調子いいこと言いやがって。
仕方ねぇ、オレもその時間なってから 
あっちこっち電話かけまくって、南んちから何から、
もうアッタフッタして、たまったもんじゃねぇ。
…まぁ、こうして何とか頭数だけは揃えられたけどな。
なのにあの野郎、さっき(朝)来た時に人数かぞえて、
『あれ? 一人 足らない』とかヌカシやがる。
『オレも人数のうちに入ってるんだよ! 当りめぇだろーが』
って云ってやってら、そしたらあの野郎、
『ああそうか。』だと。
何が『ああそうか』だよ。涼しい顔 しやがって、まったく…」
    
そんな会話(というより仕事の苦労話)を聞いていた中で、
どこをどう集めると、そんな何十万もするような
日付と内容が照らし合う領収書を用意(偽造)できるのか?
横にいた俺は“疑問があった”というより、
芸能ブローカーの”キメ台詞”を聞きたくて質問した。
「そんなの朝飯前よ!
おんなじ時期に別のロケで違うとこ廻ってたスタッフの連中から
似たような領収書をブン獲ってくりゃいいんだ。
簡単なこった、そんなのは…」
と、その当時(80年代)、“領収書”という物は、日付と金額の合計が、
その時のスケジュールと製作予備費に合っていれば問題なかったらしい。
それはテレビや映画関係の仕事に限らず、
どこの大手企業の中でも行われているようなことで珍しいことではない。
ただ芸能ブローカーの場合は、あくまで”人助け”であって、
嘘の領収書を集めてカネを騙し盗るような公務員や
世の中の特殊法人のやってる罪に比べれば、
木陰の下に生えた雑草や枯葉の裏で
せっせと自分の家を拵える真面目なミノムシのようなものだ。
政治家連中の一連の汚職や疑惑が絶えない世の中では、
もっと大掛かりな闇取引が堂々とまかり通っている。
まず、そういう者に票を投じる国民の意識に問題がある。
…と、これは、芸能ブローカーも右に同じ意見の、
東京多摩地区の選挙民だ。
   
そんなことよりも問題は、その日の俺の、救急隊員。
ストレッチャーの操作は何回か経験あるので問題なかったが、
そこへ乗せる女優さんが…誰か?
ということに、その後の仕事が面白くなるか・どうかが左右される。
無論、自分の好みではない役者に対して
   
俺が何もしないわけがない。
   
   
       つづく。   http://ameblo.jp/badlife/entry-10003536589.html