その一杯の珈琲が俺には納得いかない | “Mind Resolve” ~ この国の人間の心が どこまでも晴れわたる空のように澄みきる日は もう訪れないのだろうか‥
  

                             

     仮題: その一杯の珈琲が俺には納得いかない
                               
99'NOV29th am5 fromSIX

                  
11月下旬の早朝
映画の仕事で久々に朝の汚い街へ来た(…言葉にして文字にすると聞えはいいが)
寒かったのでジャンクフードの店に入った(速く来すぎて)
一杯の珈琲が226円という嘘のシステム
     眠らなくても腐った街の掃溜に金を払って
     その一杯の珈琲の値段が俺には納得いかない
     未だに ----------------
店に流れる曲もどうでもいい曲だ
同じ店でも夕方の虎ノ門とはエラく異う……いや、どちらも変わりない
“世界を変えたいのなら自分自身を革えるしかない”
という言葉が かつてよりも更に ほど遠い処へ行ってしまったのか ----------------
俺の生活は もう俺だけのものじゃないのに……… 
人が恋をすることが どれほど美しいことか
人が家族を愛することが どれほど尊いことなのか
それも決して誰かが誰かに教わることでもない
常に自分の側にいて
いつも自分の近くにある何かを失ってしまうことの恐怖を感じることがある
それを絶対に何事かの予感とせず、決してそれに慄かず、怯えることもなく、
その恐怖の念を打ち消すには今よりも更に美しく
この存在が存在していなかった過去の存在の時よりも美しく
掛け替えなきもので在り続けようとしながら ----------------
常に自分の側にいて
いつも自分の近くにある何かを失ってしまうことの恐怖を感じることがある
何の保証もなく誰の保護も受けず その不安を掻き消すためにこの街にいるのか…
かつて この身と心を生かす神の存在について
自分なりの考えを巡らせてみたことさえ もうどうでもいいくらい
素直な人間であることから遠ざかってしまったように………
群を外れた年老いたライオンが腹を空かせた虎に喰われる瞬間を観たこともないのに
既に神から遠ざかってしまったのか ----------------
その疑問が、
その疑問が募って行く毎日
何で生きているのか?
もう尋ねられたくもないし
自分に尋ねたくもない
もし誰かが尋ねてきたとき
俺はまた嘘をつき続けるのか
何かを見破られる前に
俺は………
     眠らなくても腐った街の掃溜に金を払って
     その一杯の珈琲の値段も味も装丁も俺には納得いかない
     未だに ----------------