4月13日


アビスパ福岡2-5Vファーレン長崎



9分奥埜、10分山口、12分東、

37分佐藤、47分佐藤、

51分坂田、61分城後、







ホームでの長崎戦は2-5と
大差がつきましたが
チームとして大差があったと言うより
開幕戦の熊本と同じく
アビスパのスタイル上の弱点を
長崎が上手く突いてきたと言えるでしょう。



長崎が突いてきたアビスパのスタイルの弱点は

攻守において前掛かりなために
後ろの人数が少なくスペースがあること

守備において高い位置で奪いたいので
効率性を考えてあまり人をマークするのを
重視していない事です。




アビスパは攻撃に人数を掛けたいので
守備は高い位置からのプレスを
採用しています。

これなら攻撃に掛けた人数を
そのまま守備で使えるからです。

逆に自陣にブロックを作りに行くと
効率的ではありません。

高い位置に人数を掛けて
攻撃と守備をするために
アビスパのシステムや約束事は存在します。




この試合のシステムもそうで
4-1-3-2と重心が高いシステムです。


長崎のロングボールで裏やサイドを
狙ってくる攻撃に対して
ボールの出所である
3バックと2ボランチにプレスを掛けるために
前に5人置いています。


4-1-3-2と言うより
ポジショニングを見ると
3があまり中盤に帰って来ないので
4-1-5でした。


普段の4-1-2-3では
中盤の真ん中に3人いるのですが
この試合の4-1-3-2では
3の両サイドの石津と城後が
長崎のWBのケアのためか
サイドにいるので
実質的に中原と坂田の1-1の2人だけに
なっていました。




1分30秒のアビスパの左スローインの場面は
アビスパのシステムがよく分かります。


長崎の陣内深くに
平井、プノセバッチ、石津、城後、坂田の
5人が上がっていて
さらにスローインで左SB阿部も前にいるので
後ろが中原とDF3人の4人しかいません。

中盤は中原1人で左サイドに寄せていて
堤とグァンソンも前に出ていないので
相当スペースがあります。

さらにこの場面では
阿部がスローインを中原に預けます。

もしここでミスがあって中原が奪われると
堤、グァンソン、チャンヒョンの
3人だけで広いスペースを守ることになり
簡単に決定機になるので
普通は中原を選択しませんが
アビスパではこういう事はよくあります。

実際この場面ではすぐにボールを失い
オ・チャンヒョンが中に絞って
高い位置に上がり
広いスペースをCB2人だけで守る形に
なりますが、
オ・チャンヒョンが少し遅らせたお陰で
坂田、城後が帰って来て
長崎の攻撃を止める事が出来ました。

しかし、逆サイドで2対1を作られ
中央も中原がCBのカバーに入った事で
三原がフリーで上がっています。

この近くの三原にパスが出ていたら
完全に裏を取られて決定機になっていました。


坂田や城後が毎回このように戻ってくれば
なんとか失点は防げるかもしれませんが
体力的にかなり厳しいでしょう。



アビスパではリスク管理より
失点してもいいから得点の確率を上げる方を
プレーでも戦術的にも選択をする事が
スタイルの根幹となっているのです。




この試合では前に人数を掛けて
高い位置からプレスにいきますが
プレスの連動性が悪く
長崎がパスをつなかずに
DFラインやボランチから
ロングボールで裏ばかり狙って来たので
アビスパの弱点のみが目立ってしまいました。


プレスの連動性が低かったのは
平井やプノセバッチがあまり守備で
走ってくれる選手ではない事もあります。


長崎の守から攻への切り替えの早さもあり
カウンターでチャンスを作られた原因です。

長崎のWBは
システム的に石津と城後が帰って来ないと
フリーになってしまいます。


長崎はボランチ2人が上がらない代わりに
両WBが積極的に攻撃参加しますが
佐藤、東、奥埜の1トップ2シャドーと
両WBを合わせると5人、
アビスパはアンカー中原と4バックで
5人の数点同数になり

アビスパのSBは中央に絞るので
逆サイドのWBはフリーになるのです。

流動的に攻撃している事もあって
石津や城後がサイドにいない場合も多く
そもそもアビスパの攻撃陣は
攻撃的なチームのスタイルもあり
あまり守備の時に帰って来ないので
長崎の逆サイドのスペースを使った攻撃を
止められない状態になります。

高い位置に人数を掛けて攻撃やプレスを
掛けたい攻撃の5人と
長崎の逆サイドを使った攻撃の対応で
下がらざるを得ない守備の5人との間に
スペースが出来て
それにより選手間の距離が開いてしまい
パスがつながらない
プレスが掛からない
こぼれ球を長崎に拾われると言う
さらに悪い状態に陥りました。


カウンターを数多く受けていた要因として
ボールの失い方が悪かった事があります。

悪い失い方をした原因は
長崎が3バック2ボランチで
中央を5人で固めているのに
サイドを使わず
次々と中央に足下のパスを送ったこと

アビスパの中盤が間延びして
選手間の距離が開いてしまい
後ろの選手のパスの選択肢が減って
長崎の前からのプレスをかわせなくなった
ことです。

長崎が4~5人で
前からプレスを掛けているのに
アビスパは4バックと中原の5人で
足下でパスを回しているので
かわすには工夫が必要でした。

ボールの回し方としては
4バックで回して中原にフリーで
持たせようとしていましたが
その中原がマークされていたので
厳しかったと言えます。


もう少しサイドを使ったり
ロングボールを使いながら
長崎の陣形にスペースを作ってから
タテパスを入れるべきでした。

例えば1分20秒の場面は
神山のゴールキックから
左SB阿部に当てて
堤が前線にロングボールを送り
プノセバッチがCB山口に
ヘディングで競り勝って
後ろにそらした所に平井が走り込みます。

左CB古部がカバーしますが
長崎の弱点である高さを使って
チャンスになりかけた場面です。


2分00秒は
右サイドでボールを失い長崎のカウンター、
アビスパの切り替えの悪さと
プレスの連動性、球際の弱さなどがあり
中原が釣り出されたスペースを
奥埜にドリブルで使われた場面です。

中原が空けたスペースは基本的に
グァンソンが前に出てカバーします。

監督からかなり厳しく言われているのか
飛び込んでしまう事が多く
この場面でも奥埜に対して厳しくタックルに
行っていますが
審判によってはファウルになる可能性もある
プレーです。


2分30秒は
右から坂田のワンタッチを挟んで
中原がサイドチェンジして
左SB阿部から平井にタテパスが走り
平井の落としを阿部がクロスを送る場面です。

前からプレスを掛けるために
ボールサイドに集まる長崎の陣形に出来た
スペースをサイドチェンジで使いました。

長崎の陣形のスライドが間に合わず
阿部が余裕を持ってプレー出来て
平井が走り込むスペースもあります。

ゴール前にも坂田、石津、城後の3人が
入っていますし
あとはクロスの精度だけと言う場面です。



こうしたロングボールやサイドを使った攻撃は
すぐに無くなってしまい
後ろでボールを回したり
強引にタテパスを足下に入れるばかりになり
中央を固めて前からプレスを掛ける
長崎がむしろ望んでいる攻撃と言えます。


アビスパの守備には
スペースがたくさんある
カウンターに弱い
すぐ裏を取られる
フリーの相手がたくさんいる
など相当問題がありますが
それは全て攻撃にパワーを与えるために
自ら負っているものです。


アビスパは守備のリスクを
攻撃で解決しようとしているので
その攻撃が上手くいかないと
守備のリスクばかりが目立ってしまい
長崎戦のような内容と結果になります。



この守備の問題を修正すると
アビスパの攻撃的な部分も
修正することになるのです。