前半はハイプレッシャーの潰し合いに
なりましたが、
後半も基本的には変わりませんが山形の
攻撃に少し変化がありそれが試合を決定付けます。

山形は前半は細かくパスをつないでサイド
から攻撃していました。

フリーランニングで目まぐるしく動いて
パスコースをどんどん新しく作って
アビスパが走ってコースやスペースを
カバーするスピードを上回って積極的に
仕掛けて来ました。

7分の先制点の場面はアビスパが山形の
パスワークに戸惑っている間にアビスパの
右サイド城後とミーモのサイドを使われて
決められてしまったものです。

前半はボランチ秋葉を経由しながら
左SH伊東と左SB中村を使って
アビスパの右SH石津と右SBミーモの
サイドを突いてきます。

13分くらいから石津が城後とポジション
チェンジして右SHに回ってかえって
山形の左SB中村のマークがルーズになってしまい
ミーモ、中原がサイドの高い位置に釣り出されてしまい空いたスペースを使われて
しまいました。

伊東、中村、ロメロ・フランク、中島を
中心とした流動性の高いパスワークは見事
だったと言えるでしょう。


山形はなかなか2点目を奪えない事と
追いつかれた焦りから
後半は右SHを廣瀬から比嘉に変えて
比嘉にボールを集めて今度はアビスパの
左サイド尾亦のところを突いて来て、
全体的な攻撃もパスワークで崩すよりも
サイドチェンジなどの大きな展開から
シンプルにアビスパの高いDFラインの裏
を狙った攻撃に変わります。

比嘉のドリブルは尾亦の守備力を考えると
1対1で十分突破出来るので
中原がサイドに引っ張られる事も増えて
岡田と船山、交代で入った金久保も
中原が空けたバイタルのスペースのカバー
のために高いポジションが取れないので
前の選手が孤立してボールをキープする
事も出来ず一方的に押し込まれる展開も
出てきました。

しかし、ここでも山形は得点にはつなげられません。

サイドは崩しても中の選手と合いませんし
シュートに行こうとするとエリアの外から
のミドルになって
押し込んでいる割には決定機も少なかった
と言えるでしょう。

ハーフタイムコメントで奥野監督はサイド
チェンジと、裏を使う事を指示します。

これはアビスパがボールに激しいプレスを
掛けるために陣形ごとボールサイドに固まって守備をするので
逆サイドにはスペースがあるからそれを
使おうと言うものですが、
パスワークが減って裏へのボールは増えますがサイドチェンジは上手くいきませんでした。

指示通り出来ていたらアビスパはプレスを
かわされて左右に振られて体力を消耗して
失点していたでしょうし
決勝点を取る力も無かったはずです。

山形はこの試合でボランチに水戸から加入したロメロ・フランクを起用していましたが
ロメロ・フランクは細かなパスワークや
前線への飛び出しなど攻撃への厚みや
ハードワークは得意ですが展開力はあまり
期待出来ないので
もしベンチに入っていた昨年アンカーの
位置で活躍した宮坂を投入していたら全く
違った展開になっていたはずですが
奥野監督はロメロ・フランクにかなり期待していて育てよう、
チームにフィットさせようと言う事もあり
我慢して宮坂を使わずにロメロ・フランク
を選択します。


後半が進むにつれて前半流動性のあるパスワークのためにフリーランニングで動き回った事と
シンプルに長いボールを使った攻撃にしたために山形のパスワークを支えていた
フリーランニングが後半途中から消えて
さらに長いボールで前の選手が行って
戻ってを繰り返す事になり疲労が来てしまい、
山形のスタイルを支えている運動量が一気に落ちます。

金久保の決勝点の場面でも長い距離を走って戻って来た山形の選手たちの動きが悪く
サイドでの囲みとボールへのアプローチが
弱くなったところを
中原と金久保のワンツーで突破されて
バイタルで金久保への寄せが甘くシュートを許してしまいます。

前半であればシュートまで持ち込ませなかった場面ですが、途中出場でフレッシュ
な金久保は色々なアイデアを出せるだけの
余裕があったので
あのテクニカルな素晴らしいゴールに
つながったと言えるでしょう。


決勝点が入ってからは山形がリスクを
負って攻撃して来ましたが、
むしろアビスパとの運動量の差がさらに
鮮明になり流れの中でチャンスはありませんでした。

アビスパの選手も落ち着いて対応していましたし、慌てるほどのピンチも無く無難に
試合を終わらせましたが、
1つ気になるのは終盤で1点リードの場面
で殆どボールキープを行わずに普通に攻撃していた事です。

プシュニク監督や今年のアビスパの
カラーのようなものが表れていたような
気がします。

山形は後半、アビスパの弱点を突いて
効果的に戦おうとしてスタイルを少し
変えたために山形を支えているコンパクトさや連動性が消えてしまいました。

この試合アビスパは走り勝ったと言えますが、この2試合のアビスパの運動量は
素晴らしいもので、スタイルの完成度や
チームとしての力の差を見事に埋めていた
と言えます。